路線の一般的な見所

 江ノ電の走る沿線は、名所・旧跡がたくさんあり、それらについては、ガイドブックなどがたくさん出ていますから、あまりそれらの引き写しになっても仕方がないような気がします。そこで電車に実際に乗車しての、車窓風景を中心に、筆者が知っていることについて触れることにします。表題では「一般的」としていますが、逆に極端に一般的なことには触れていないかもしれません。
 藤沢から電車に乗って、いくつかの見所をたどってみましょう。

江ノ電藤沢駅

 江ノ電の藤沢駅は、デパートの2階です。乗車ホームと、降車ホームが一つずつあるのみの、こぢんまりとした駅ですが、運が良ければ前面展望が楽しめる電車(2000形、10形、20形、新500形)に当たるかもしれませんから、出来るだけ先頭に並んでみましょう。2輌編成と4輌編成で、停車位置が違うので、よく確かめて(ホームに表示あり)、間違えて並ばないように。ただ、すでに行列が出来てしまっているときには、中間よりに乗車すると、途中駅で座れる可能性があります。

江ノ電藤沢駅ホームの画像です

 画像は1982年頃の藤沢駅。現在も駅自体は変わりありません。車輌は305−355の編成ですが、このころは非冷房で、正面の窓もアルミサッシになっていないのがわかります。なお奥側が鎌倉方面になります。


鵠沼の急カーブ

 藤沢を発車して、最初に上り下りの電車が交換するのは(江ノ電は単線です)、鵠沼(くげぬま)という駅です。この駅を出るとすぐ、大きな鉄橋を渡りますが、この前後はものすごいカーブ。普通の電車ではとうてい曲がれないような急カーブを、江ノ電はやすやすとクリアします。スピードはゆっくりなので、窓から見ていると、ちょっと面白いかもしれません。

鵠沼駅を出て急カーブにさしかかる江ノ電の電車の画像

 写真は鵠沼駅を出て、すぐに急カーブを越えて、鉄橋にさしかかる2000形電車(車内より。後ろ向き)。2004年7月4日撮影。


江ノ島

 江ノ島は景勝地なので、いろいろなガイドブックに紹介されていますから、簡単に触れるだけにします。江ノ電の他に、小田急江ノ島線「片瀬江ノ島」駅、湘南モノレール「湘南江の島」駅が近所です。そのため単独でここを目指すこともできます。

 江ノ島は島ですが、2つの橋で地続きになっています。自動車道の「江ノ島大橋」と、人道橋の「江の島弁天橋」です。橋から入ると、向かって左側には江の島ヨットハーバーがあります。右やや奥には植物園と展望台がありますので、これらを見て回るのがおすすめかもしれません。

 また猫が好きな方は、島内のおみやげやさんや、駐車場付近には、地域猫がたくさんいるようなので、なでなでしてくるのもおすすめです(いじめてはいけません)。

 展望台からさらに奥に進むと、江の島岩屋という自然洞窟があります。悪天候の時には閉鎖されるので、一応注意して下さい(9−17時。冬は16時まで)

 江の島水族館は、島の中ではなくて、片瀬海岸側にあります。比較的有名な水族館で、2004年リニューアルオープンしました。ここは小田急線片瀬江ノ島駅のほうが近いです。

 小田急線の片瀬江ノ島駅舎も、1929年(昭和4年)の建設以来、竜宮城的イメージの変わった駅として、その姿をとどめています。これも見られたら見ておくと面白いかもしれません。

江ノ電の車窓から見た江ノ島の画像です

 写真は、江ノ電の車窓から見た江ノ島です。左側に伸びる堤防状のところがヨットハーバー、右側は江ノ島大橋です。展望台は、すでに新しいものになっています(2004年4月撮影)。


路面区間

 江ノ電では現在唯一の、道路上を走行する区間が、江ノ島−腰越間にあります。

江ノ電の運転室越しに見た路面区間の画像

 写真は下り電車(鎌倉方面行き)の運転室越しに撮影したものです(2003年4月撮影)。電車専用の矢印形信号機が珍しいです。黄色いベルト内は、電車接近時自動車進入禁止ですが、道幅が狭いこともあり、中には写真に写っている車のように、待避しきれない場合もあります。その時には、電車は減速し、場合によっては停車することもあります。
 両側は普通の商店街で、店先を車と電車が平行的に走るのは、ちょっと不思議な光景です。

 腰越→江ノ島間動画はこちら(Motion Jpeg形式、約17.5MB)。腰越駅から、江ノ島駅に向かう風景です。
 江ノ島→腰越間スリルある動画はこちら(Motion Jpeg形式、約21MB・音声あり)。江ノ島駅を出て、車がじゃまになって急停車し、再発進して腰越駅に至るまでです(2006年8月21日撮影)。


腰越駅

 腰越駅は、上の路面区間が終わってすぐにある駅です。4輌編成の電車では、一番前の車輌のドアが開きません。踏切にはみ出して止まります。この腰越駅あたりから、本格的に線路に向かって門がある家など、線路が道路の代わりになっているような場所が目につくようになります。時々近所の人が、電車が通ったあとに線路を横断したり、歩いたりするので、普通の鉄道のイメージからすると、ちょっとギョッとするかもしれません。

鎌倉高校前駅〜峰ヶ原信号所

 電車は腰越駅を出ると、急カーブを曲がって、いよいよ海辺に出ます。国道134号線と併走しながら、天気がいいときには、後側に富士山も見えるときがあります。筆者も一度だけ、2000形の前向き座席から見たことがあります。

 鎌倉高校前駅は、直線に片側ホームの駅ですが、東京近郊では数少ない、ホームから海が眺められる駅の一つです。関東の駅100選にも選ばれています。ただし後側は墓地です。

 鎌倉高校前を出てしばらく行くと、やや海からそれた場所で電車は止まります。ここが峰ヶ原信号所です。信号所なので駅ではなく、藤沢行きの電車が鎌倉行き電車を待ちます。単線による行き違いです。

 信号所を出ると、再び電車は海辺に戻ります。写真は304号車内から見た、鎌倉高校前付近の七里ヶ浜。撮影は2004年5月21日ですが、この日は季節はずれの台風が通ったあとで、海は大荒れ。波の高さが5メートル位ありました。サーファーもさすがに一人もいません。

鎌倉高校前付近の車窓から見る七里ヶ浜の画像


七里ヶ浜駅〜稲村ヶ崎駅

 峰ヶ原信号所を出た電車は、江ノ電では珍しい直線区間を走ります。ここは俗称「ホテル下の直線」と呼ばれているところです。アニメ「コメットさん☆」にも関係の深いところです。ここの名前の由来は、この直線区間の山側に、かつて「七里ヶ浜ホテル」というホテルがあったからだそうですが、現在は七里ヶ浜ホテルはありません。しかし現在「鎌倉プリンスホテル」がありますので、文字通り「ホテル下の直線」であることには変わりありません。

俗称ホテル下の直線の画像

 一方七里ヶ浜の由来は、江ノ島に近い小動(こゆるぎ)岬から、稲村ヶ崎までがおおよそ七里あったとされる(実際には一里を約4qとすれば、そんなにありませんが)ことによります。
 電車はやがて海から離れ、山よりを走るようになります。稲村ヶ崎駅手前は、かつて路面区間であったようですが、現在は柵や縁石が設けられ、車道とは分離されています。

七里ヶ浜−稲村ヶ崎間の展望画像

 画像は、七里ヶ浜−稲村ヶ崎駅間を走行中の、上り電車からの前面展望風景です。


極楽寺トンネル

 稲村ヶ崎を発車した電車は、いっそう山に入っていきます。江ノ電の車庫極楽寺工場脇を抜けると、極楽寺駅です。この駅も「関東の駅100選」に選ばれています。そして極楽寺駅の先には、江ノ電唯一のトンネル「極楽寺トンネル」があります。閘門(こうもん=トンネルの入り口の壁)の上には、「極楽洞」の扁額(へんがく=文字を彫り込んだ板)があります。中は全てレンガ造りの古いトンネルで、1907年(明治40年)竣工です。
 なおトンネルの手前に、江ノ電をまたぐ橋がありますので、そこから電車を見ることが出来ます。

極楽寺トンネルの画像です

 なかなか風情のある極楽寺トンネル入り口(藤沢方)。写真を撮るには、若干手前の架線ビームがじゃまになります。反対側は落石はね?のようなものが付けられており、このような写真は撮れません。2004年7月4日撮影。


長谷駅

 長谷駅は、鎌倉大仏の最寄り駅です。大仏までは、駅から徒歩10分。大仏の高さは13メートル超だそうです。大仏の詳細については、市販のガイドなどをご覧下さい。
 なおこの駅で電車は最後の交換をします。

鎌倉駅に到着

 和田塚駅を過ぎると、しばらく真っ直ぐ目に走っていた江ノ電電車が、左に急カーブを切って、鎌倉駅に到着します。この急カーブの場所から、かつては真っ直ぐに電車はすすみ、横須賀線の下をくぐって、若宮大路の段葛手前まで伸びていました。

 さて鎌倉駅は、4番ホームに着きます。4番ホームが降車ホーム、3番ホームが乗車ホームになっています。5番ホームもありますが、早朝・深夜・年末年始などの多客期にしか使われません。ちなみに1・2番ホームは、JR横須賀線のホームです。

 電車を降りて、そのまま前に進めば、JR線との連絡改札があり、直接鶴岡八幡宮や、小町通り、段葛などのある東口へ出られます。しかしせっかくですから、左手の改札を抜けて、西口駅前に出てみましょう。

 駅前は右手に時計台とベンチのある小公園、左手は商店街、向こう側は鎌倉山や、深沢へ向かう道です。時計台の時計は、かつて国鉄鎌倉駅東口駅舎の、正面に掲げられていたものを移設したものです。

 西口から東口へは、時計台裏に連絡地下道がありますので、それを利用して下さい。



※この項の参考文献は以下の通りです。
1.実業之日本社編、1998、鎌倉四季の景、実業之日本社、東京。
2.湘南倶楽部編、2002、江ノ電百年物語、JTB、東京。