さて、アニメには設定書というものが作られますが、これには保育園バスの設定もなされていて、イラストが載っています。リアルさに、かなり重きを置いていると思われる「コメットさん☆」のこと。きっとモデルがあるに違いないと思っていたら、アニメ制作現場で使われた設定書には、「モデル車 いすゞジャーニーロングボディ」との記述を見出すことが出来ます(この文字列は、残念ながら「メモワール・ド・エトワール」では削除されています)。
まずはその車が、実際に街を走っていないか?と、探しますと、見つけました!。
これが「いすヾ ジャーニー」です。近所の保育園が使っているもので、やや年式は古いですが、この種の車は「幼児車」と呼ばれ、需要の高い車種です。
さて、設定書や実際に作品に登場する「雪ノ下保育園」の車と比べますと、塗装は別として、確かにそれなりには似ていることがわかります。しかし一方、違うところを厳密に探すと、乗務員ドアの上部デザイン(設定は窓が2段)、ナンバープレート下にフロントグリルの穴があるかないか(設定ではなし)、ナンバープレート下の通気口?の高さが左右と中央で異なるかどうか(設定は左右がやや高い)、ウインカーランプ部のデザイン(設定では少し切れ上がった感じ)です。また乗務員ドアが、画像の車ではありますが、設定ではないことになっています。このあたりこのいすゞジャーニーを、本当にモデルとしているかどうか、あやしい部分と言えます。画像は2006年12月7日撮影。
これは同じ車の後部です。設定書とはかなりデザインが異なります。窓の形態(設定書の車は、窓が左右均等な大きさで、連窓風になっている。また両側に細い窓が存在する)、テールランプが2段(設定書は4段)、ナンバープレートが右より(設定書は左より)、といったところが目につきます。すると、実際のモデルは、「いすゞジャーニー」ではないのではないか?。そんな疑問がわきますね(これについては、下の方に種明かしがあります)。2006年11月24日撮影。
「コメットさん☆」に登場する、「雪ノ下保育園送迎バス」は、当初「いすヾジャーニー」で間違いないと思いこんでいましたが、その後決定的な写真が撮れましたので、ご紹介します。
どうでしょうね?。ヘッドライト、ナンバープレートの上下にある通風口、ヘッドライト下のルーバー形状、窓の形態を考えると、実際のモデルはこの車ではないでしょうか?。これは「日産シビリアン」です。2007年2月13日撮影。
後ろはどうでしょうか?。すぎたまの住んでいる近くでは、駅向こうの幼稚園から、送迎バスがやって来ます。これも日産シビリアン。
この車の後部の形態は、まったく設定書のイラストと一致します。後退灯を組み込んだテールライト部分の形態、観音開きの後部非常口の形態、窓の形など、全てが一致すると言ってもいいのではないかと思います(厳密にはバンパーの高さが段違いになっているかいないかの違いあり)。2007年10月30日撮影。ただし、上の画像の車は、ロングボディーではないので、側面窓の数が半枚分少ないです(2枚上の画像の車、または下の車がロングボディー。他の部分のデザインは同じ)。
また参考までに、右側面を含む画像を見てみましょう。
このように、ロングボディーの車は、一番後ろよりに、半分位の大きさの固定窓があります。2007年10月12日撮影。
以上の結果から、「雪ノ下保育園」送迎バスのモデルは、当初考えられた「いすゞジャーニー」ではなく、「日産シビリアン」であることがわかりました。
ところが!…。
なんとですね、「いすゞジャーニー」は、1993年頃までは、独自の車体で生産されていたのですが、その後の調査で、「日産シビリアン」のOEM供給で、同じ車体の車の、エンブレムと表記のみ変えて生産・納入されていることがわかりました。
決定的な写真も撮れています。
これは、用途は異なりますが、まさに「日産シビリアン」車体の、「いすゞジャーニー」。正面窓ガラス右下に、小さく「ISUZU…」という文字が見えると思います。ドア部や、前面のスタイルは、上に掲げた「日産シビリアン」と全く同じであるのがわかると思います。2009年4月4日撮影。
同じ車の後部を撮影したものです。この車は「移動図書館」車で、幼児車とは用途が異なることもあり、構造的にかなり異なりますが、後ろのドアは同じのようです(左端の窓が黒いドア)。東京都三鷹市の移動図書館車。2009年4月4日、京王線井の頭公園駅前で撮影。
以前は、設定書も案外信用できない、と結論づけていましたが、2001年当時には、既に「いすゞジャーニー」は、「日産シビリアン」と同じ車体になっていたのでした。この点、設定書に間違いは無く、私の記述が間違っておりました。混乱を招いたかもしれないこと、お詫び申し上げます。
それにしても、自動車の世界でOEM供給が、このように大規模にあるとは思いませんでした。正直「それは考えなかったなぁ」というのが、今の心境です。自動車に詳しい方なら、当たり前なのかもしれませんが、見落としておりました。