雑誌掲載セル画と原画・タイムシート

 雑誌などやポスターなどに使われたセル画が入手できたので、それらを参考に、どういう流れでセル画が出来上がるかを見てみよう。
雑誌掲載セル画の画像です

 まずは最初に出来上がったセル画を見よう。そうしないとどこのカットだか、わからないので…。
 これは第9話の始まって1分50秒ほどのあたり、カット番号では「C2」(2カット目)に当たるところである。セル画の番号は左上からA1、右上に続いてA2、下へ続いてA3ENDである。このカットはこの3枚のセル画によって構成されている。1枚あたり画面に映っているのは、わずか3秒ほどである。


 セル画の出来るまでの流れを最初に戻って見てみよう。

原画の画像です

 まず既に切られた絵コンテ(時間や場面を設定したラフ画の集まり)から、場面ごとに原画担当者が原画を描く。原画担当者の個性が出るところである。


修正原画の画像です

 原画担当者の個性がそのまま出ていては、作品やキャラクターおよびカット同士の統一性がなくなってしまうので、原画に黄色い薄紙を重ねて、下から光を当て、修正原画を描く。通常「作画監督」が修正をする。上の原画を作画監督が修正したものを示す。A2にあたる原画(右上)の構図が全く変わっているのがわかる。


動画の画像です

 原画と修正原画から動画が起こされる。セルに直接転写する絵である。この動画とカーボン紙を重ねて、「トレスマシン」という機械に通すと、鉛筆で描かれた輪郭の描線だけがセルに転写される。色鉛筆のところは、影やハイライトを示すが、トレスマシンは色鉛筆の線を無視するので、色トレス(影やハイライト、目の輪郭などのための絵の具を使った手作業のトレス)の目標は色鉛筆で入れることになる。
 この3枚は動画担当者が描いた「動画」となるが、修正原画をそのまま写し描きしているので、その動画は「原画ナンバー」と呼ばれ、セル番号に○印をつけて区別する。このカットは珍しく全てのセルが原画ナンバーとなっているが、通常は原画ナンバーの間に2〜3枚の「中割り」という、動きの間の絵を入れ、なめらかに動いているようにする。


再びセル画の画像です

 再度出来上がったセルを見てほしい。セルに転写された動画は、「仕上げ」と呼ばれる絵の具塗りが行われ、一方美術担当者によって背景が描かれて出来上がる。この後撮影に回される。


タイムシートの画像です

 撮影はこうしたタイムシートに沿って行われる。絵コンテを元に、タイミングを計り、セルの撮影順序、セルの交換の手順、撮影時のコマ数、セリフの入り方、背景の指示などを記した専用の指示書がタイムシートである。
 このタイムシートでは、1枚目の左上に作品名、その下に話数、カメラのパンニングの仕方や時間の取り方(横方向の太線1本で1秒)などの指示に続いて、1枚目左半分の途中(2.5秒目)までA@セルと背景の@番(上の完成したセルの画像では、左上の1枚の状態)を撮影し、続いて左側の残りから右側の中央下(ここで5秒目)までAAセルと背景のA番(上のセル画像右上の1枚)を撮影、次いで1枚目右半分の残りから1枚目の鉛筆で波線が引いてあるところ(ここで8秒目)までABセルと背景のB番(セル画像下の1枚)を撮影するように指示されている。


いろいろなところに使用されたバンクセル画の画像です

 なおこの1枚のセルは、雑誌や公式ファンブックなどに掲載されたものである(背景とセルの位置関係は多少ずれがあるが、それはこのセルを撮影するときにずれが生じたため)。ミュージカルのポスターや韓国版のパズルなどにもいろいろ使用されたので、目に触れる機会は多かったのではないだろうか。芽美ちゃんの快活さを象徴するような1枚ではある。