ということは逆に、キットや完成品を原型をとどめないほどには、改造できない(と言うか、改造する意味がない)ことになる。なぜなら原型をとどめないほどに改造するよりは、一から作ったほうが簡単になってしまうからである。
そのようなことから、自ずと改造点の限界、想定の範囲、などという部分が決まってくる。これは自由な発想を妨げられる要因とも言えるが、あまりに現実的でないデザインや、構造にはならないという点では、「実在しそうな」感じが出せる利点もある。
そこで、最近は高価で困るのではあるが、HOゲージ(1/80縮尺、線路幅16.5ミリ)とすることにした。
今回の種車として使うJR373系は、HOゲージでも、それより縮尺の小さいNゲージでも製品化されている。したがってどちらでも製作可能だが、上に挙げた内装の問題と、製作者が手慣れている点を考慮して、HOゲージとした。
この写真は、窓ガラス全てを取り去った車体(手前)と、後ろ側は車輌の下回りである。いすや仕切が付いているのが見える。
例えば、この模型は床面が配線を中に納めてしまうため、通常の模型よりも高くなっている。そして二重床になっていて、内装を構築するのは、この上床板のさらに上でなければならない。
それからこの車輌は、もともと窓柱が均等な間隔では立っていない。するとあまりいい加減な間隔で座席を並べると、眺望の非常に悪い席ができかねない。
こういった問題を解決するため、簡単な見取り図程度の図面を作成して、あれこれ検討した。
その結果、外から見えないところは内装を省略する、点灯式のヘッドライトや、車内灯の取り付け部分をいじらない、といった基本方針を立てた。
したがって、上の写真に写っている、デッキ部分の壁と丸い煙突のような車内灯支えは加工せず、そこから車体の前後方向には、なにも工作物を作らないこととなった。
銀色のところと、前頭部の白、屋根上などは元のままである。当初は窓の上にもピンクを塗装することにしていたが、銀色には他の色が塗りにくい(塗料の性質上)ためと、窓下部分の赤紫がけっこう強烈なので、やめにした。当初の塗装案を下に示す。
窓の上にもピンクの帯を入れ、前側(図の左側)のドアには、赤紫の帯を通さない(通常使うはずのドアには帯を入れないという方針)予定であった。また運転室のドア(左端の縦長窓)のところの黒の処理も、当初の予定では斜めに落とすデザインだった。
座席として取り付ける、市販の「リクライニングシート」のパーツは、床が高いので、そのまま付けると非常に高い位置に付いてしまうため、足を切断して接着剤で張り付けてある。床には止めねじを避ける穴をあけた焦げ茶色のエンボス紙を貼って、絨毯に見せているが、この上にリクライニングシートを16.25ミリピッチで取り付けた。このピッチとしたのは、窓の柱をよけつつ、かつもっとも効率的に並べる寸法を検討した結果である。
そのため座席は7列で、21人分(片側2人、反対側1人)である。
左側には喫茶コーナーを設けた(画像の白いところ)。この部分は外からカウンターの中が丸見えなので、シンクなどを作らなくてはならないが、窓ガラスに半透明のテープを貼り付けて、曇りガラスの設定とし、シンクの製作を省略してある。
前後のデッキの仕切りは、本来元のものを切断して、プラ板で新しく作るのであるが、この部分は室内灯の支えを兼ねているため、うかつに撤去できないことがわかった。そのため簡易構造として、仕切りに見立てた厚手の紙を貼って、これにドアなどを書き込み、表現するにとどめた。
画像は、上が車体、下側が車内工作が終了し、あとは組立てを待つだけの下回り。
左は一応の完成状態となったクロ3751号。右側は未改造のクモロ3701号になる予定の車輌。この時点では、屋根上の換気扇カバーも付いていないし、車体の塗装も元の窓回りブラウン、オレンジの帯のままで、車内も赤い普通車用の座席がそのままである。
試運転の結果は特に問題なく、仕上がりも特に支障となることはなかった。
トランサー(左側に見える透明プラスチックの棒。こすると転写するインスタントレタリングを転写するための棒)を使って、所属マークの「KRS」を表記しているところ。このあと番号の3751も表記する。
これだけ見ると、なにをしているのかわからない。セミグロスブラックを塗っているところ。この作業自体は、クロ3751も同じ。
この車は車端部(向かって右側)にも窓があるので、この部分は工作を行った。手前側は乗務員・添乗員室なので、種車のクロスシートをそのままとして、テーブルを白く塗装した。向こう側は洗面所の設定なので、仕切りのみを設け、窓ガラスにテープを貼って半透明化した。それぞれ仕切りを取り付けた以外、特に大がかりな工作はしていない。
また運転室よりも、例のヘッドライトパーツの問題から、追加工作は見送ってある(左下側)。
完成したクモロ3701号。シングルアーム形パンタグラフが目立つ。黒と赤紫で締まった印象だが、見方によってはちょっと黒い部分が広すぎた感も。
なおクロ3751の窓のない部分には、マークを貼り付けたが、これは透明デカールシートをいったん白く塗装し、それにアルプス電機の「マイクロドライプロセスプリンタ」で印刷し、切り抜いて貼り付けたもの。断面に白い色が出るので、切り出しにこつが必要だった。
またこのマークは、今から思えばもう少し文字が太くてもよかったかも。車体に貼った段階では、文字がほとんど読めないのが難点。
連結部分の拡大。所属マーク、シンボルマーク、車輌番号の様子がわかる。またシンボルマーク下には、増設した汚物タンクが。これは元のパーツをコピーしたもの。トイレが2カ所になったための処置。赤紫の帯が少し連結面の中まで回り込んでいるのがわかる。
特急「東海」に使用される、373系特急形電車。2006年5月撮影。小田原駅にて。このあと特急「東海」は廃止され、「ムーンライトながら」も季節列車に格下げされたため、東日本エリアでは、あまり見かけない電車となってしまった。