演出などには、特に違いはなかったと記憶しているが、セーラームーンのミュージカルを、このころ同時にやっており(今も演目を変えてやっているが…)、その会場で、何を思ったか刃物を持った男が、舞台上に駆け上がり、スタッフと最前列に陣取っていたファンの一部に取り押さえられるという事件があったと聞く。そのせいかどうか知らないが、相模大野の時に比べて、千葉の時は、「大きいお友達」に対するガードがきつくなったようにも思えた。
劇中、桜井智さん(もちろんセイントテールの格好をしているが)が、客席に降りてくるシーンがある。このとき運が良ければ、間近に桜井さんの「コスプレ」(違うか)姿を見ることができるが、子どもたちと交歓しながら、舞台に向かって左側のソデから帰ってゆく。ここに相模大野の時にはいなかったはずの警備員が、千葉の時にはついていた。それを見て、「ああ、セーラームーンのミュージカルの影響かなぁ」と思ったものである。いずれにせよ、いやな世の中になったものだ。
ところで、普段は絶対やらないが、関東地区最終公演に際して、友達とともに「差し入れ」なるものをした。出演者のみなさんと、セガの売店の、もう顔見知りになってしまった人たち、それからプラムブロッサムプロモーションの入り口にいる人たちにである。
何にしようかと、あれこれ悩んだあげく、うちの家族の仕事関係で、ミュージカルの演出などをしている人がいた。その人の話などから、やはり食べ物がいいだろうということになり、かといって「幕の内弁当」というわけにもいかないから、お菓子にしようということになった。時節柄O−157などがはやっていたから、お菓子でも日持ちがして、ちょっとのお茶菓子程度になるものなどいろいろ考えた。
さて千葉の公演も終わり、スタッフの人をさがして、「これみんなで食べてください」といって渡そうとすると、「誰にですか?」と聞かれてしまった。さあ困った。これは想定していない。漠然と「出演者のみなさんに」なんて考えていたのだが、こういうことをする人は、どうやら「だれそれにあげてください」と言って渡すらしいのだ。一瞬考えたが、やはり「出演者のみなさんに」と答えた。するとそのスタッフの人は「わかりました」といって、さっと楽屋のほうへ消えた。
セガの売店の人は、まあ喜んでくれたが、片づけでそれどころではない様子であった。さらにはプラムブロッサムの人とおぼしき人など、気が付いたら誰もいないのであった。しまった、と思ったがもう遅い。
というわけでプラムブロッサムの人には、渡せずじまいであったが、これらのお菓子がどうなったか。それはある意味ではどうでもいい。あの力強く、そして遙か昔の自分を投影させるかのような、主人公たち。それを見て、私たちの心の中にわいた、しみじみとした感情。そのことに接しただけで、心は満たされた気もする。今から考えると、案外あのミュージカルは「いやし系」だったのかもしれない。
何とか、またもう一度見てみたいと、しみじみ思う。