まずは台車の加工。DT33に換装するのが本来だが、コストがかかる上、直径10.5ミリの車輪が使えないため、DT21の外側のブレーキシューを撤去して似せる。電動工具でブレーキシューと、そのロッドを削り取る。
加工した台車は、このように手塗りで塗装する。プライマーを塗ってから、セミグロスブラック(半つやの黒)を筆で塗る。
完成して車輪をはめたDT21改造台車。本当はこれでもブレーキシリンダー(軸箱の上)の向きが逆なのだが、それらしくは見える。
車体はクハ103のものを使用することとした。これは既に塗装をはがしてある車体があったため、それを有効利用することとしたため。クハ103を利用するとなると、パンタ台が必要となるので、市販の「ガイシ台」(電気機関車の屋根上を通る高圧ケーブルを支持するガイシを載せるための台)を利用して、いったん同じ取り付け寸法の安いパンタを取り付け、屋根上にパンタを取り付けるための寸法取りに使う。
塗装をはがした車体にパンタを仮載せして、寸法を採る。車体は既に前面のルーバーと、ジャンパ線受け穴のいらない方は埋めてある(黄色いパテにて)。
信号炎管の位置をケガく。このようにノギスの先端を刃として使い、弱くキズをつけて印とする。
信号炎管の穴あけ。タンガロイドリル0.6ミリをピンバイスにつけて、慎重に手回しであける。
前面のパテで埋めた部分を平らに仕上げる。まず彫刻刀の平刀で盛り上がったパテをそいでから、耐水ペーパーで仕上げる。なんとなく前面が光っているのは、錆につながりそうなところを磨き上げたから。
屋根内のハンダ付けする予定部分、また接着剤が残っている部分などを電動工具で研ぐ。これをちゃんとしておかないと、あとで部品が真っ直ぐつかなかったり、ハンダののりが悪くてぽろりととれてしまったりすることもある。
一方床板の工事も進める。クハ103と同じように、連結器胴受けとジャンパ連結栓をハンダ付けするが、ジャンパ連結栓はクハと全く位置が逆なことに注意。これは向かい合って連結する場合(今回の編成ではないのだが…)、ちょうどその位置に対面するようにジャンパ連結栓がないと、ケーブルが結べない。この位置で見た場合、胴受けの左が制御用ジャンパ栓、右に離れてあるのが三相交流給電用ジャンパ栓である。
塗装が仕上がった床板に台車を取り付けているところ。センターピンという段付きねじを使い、バネや台車の枠、絶縁ブッシュなどを組み合わせて、ナットで締め付ける。
出来上がった下回り。先頭側は右側である。床下機器もユニット式のものをねじ止めしてある(中央の艶消しの部分)。
パンタの位置を正確にするには、ガイシ台を14ミリ×16ミリの間隔でつける必要がある。いろいろ考えたあげく、ガイシ台そのものをはんこのようにして、屋根上に押しつけ、位置を採ることにした。スタンプ台を使って印を付けるところ。
パンタ台の位置あわせとともに、クーラーの位置を決めて、穴をあけ仮置きしてみる。冷房車のシンボルであるだけに、平行には気を使うが…。
パンタ台になるガイシ台を差し込む穴をあけ、パンタを仮置きしてみたところ。これさえ終われば、山は越えたも同然。
パンタガイシ台をハンダ付けする。これらの作業は全て安いパンタをつけたまま行う。そのため万一壊してもいいパンタ、ということで、ほんちゃんのパンタは使わない。微妙にメーカーによる寸法ずれなどあるが、ある程度はやむを得ないと考える。
パンタとクーラーがついた場合のバランスなどを検討するため、下回りをはめて見る。信号炎管と車内灯支えも、既にハンダ付けされている。
表側からもハンダを流したパンタ台のアップ。もちろんこれから整形する。
パンタ台の外側にはみ出したハンダを電動工具で削る。細かい仕上げが続くが、電動工具でずいぶん楽だ。
例によって行先表示窓をあける。これまた電動工具大活躍。最後の仕上げだけは棒ヤスリを使う。
下地が出来上がった車体後部。
車体側面の主電動機冷却風取り入れ口パーツを磨いているところ。今回はモハ102に比較して、接着剤を少なくしてギャラリが埋まらないよう注意する。
実物の写真資料を見ながら、アレスタ(避雷器)や配管の通り具合を検討。また各配管の太さなども決めていく。なおパンタ台脇にはランボード(歩み板)を取り付けておく(クーラー脇も同様)。
アレスタを取り付けたあと、仮パンタを取り外し、本パンタをパンタ台の上にのせて、位置が本当にあっているか念のため見る。まあまあおおよそは合っていた。左上に見えるのは、パンタを取り付ける1.2ミリビス。
若干心配なため、本パンタをねじ止めしてみた。パンタの向き(実は前後があるのだ)なども検討。
パンタ台部分を前からすかしてみる。ちゃんと真っ直ぐについているようだ。一安心。
パンタからの高圧母線をつけるため、所定の形態に曲げているところ。0.8ミリの真鍮線を使用した。
同じように空気作用管(下)と、アレスタからパンタにのびる線(上)も、それぞれ0.5ミリ、0.3ミリの真鍮線を使って作る。
引き込み線類を取り付けているところ。エポキシ樹脂系接着剤を使用する。向かって左は高圧母線、右がパンタを下げるときに、下げシリンダーへ空気を送る「空気作用管」。本来は空気作用管は2本平行しているのだが、線の太さから考えてオーバースケールになってしまうことから、1本で表現した。
車体は磨きだし+洗浄後、塗装に入る。例によってプライマーを吹き付けてから、ピュアホワイトで下塗りをする。
屋根上はこんな感じ。今回は塗装をした日がピーカン照り+乾燥していたため、つやが必要以上に出てしまうという一幕もあった。
黄色5号を塗装。つやを適正化するためこの車輌だけはトップコートを最後に吹いてある。
マスキングをして、屋根色を塗装したところ。別に塗装したクーラーを仮載せしてみる。
クーラーにメッシュパーツをつける。このカワイモデル製のクーラーは、送風機のメッシュが別パーツになっている。接着剤を目立たないようにつけるのが難しく、事実上強度を考えると、外観はやや犠牲になってしまう。
またこのクーラーは手前に見える4カ所の四角い出っ張りが左右対称でないことに注意。これで正しい。AU75はなぜかこの4つの出っ張りが片側に寄っている(103系では、奇数向きに寄せて付けられている)。この偏りが表現されているのは、このカワイモデルの製品だけ。
屋根上にクーラーとベンチレーターを取り付ける。だんだん車輌らしくなってきた。
空気作用管は途中からゴムホースなので、その部分をフェルトペンで黒く塗る。曲線を描いている部分だ。
烏口を使って、サッシに銀色を差す。同時にホロを灰色に塗装する。
銀色を差し終わった車体。塗料の表面張力の関係で、なかなか真っ直ぐに差すのは難しい。
Hゴムのグレーも差して、ホロのグレー塗装も終わったところ。最終段階にさしかかる。
前面傾斜窓のサンだけは、ペイントマーカーを使う。銀色の色映えがいいからだが、はみ出したら終わりなので、気を使うところだ。
車内灯を取り付け、ヘッドライトとテールライトにレンズを入れる。まだ窓ガラスははまっていない。
窓ガラス(塩ビシート)の切り出しと接着。接着は透明のゴム系接着剤を使う。
側面の窓ガラスの寸法は、このようにして出来上がった車体に重ねて採る。運転室から、最後部1枚の窓までは一体である。
ガラスの取り付けが終わったので、車内灯とヘッドライト、テールライト用電球を、ダイオードを介して取り付ける。多少ごちゃごちゃになってしまうのが悩みのタネ。
配線のハンダ付け後、方向が正しいかのチェック。
本パンタPS16を正式に取り付ける。1.2ミリのマイナスビスなので、ドライバーの先端が滑らないよう、細心の注意を払う。またパンタの向きにも注意する。
床板をねじ止めして最終チェック。ライトの点灯状態など。
パンタグラフのホーンの先に赤色を差す。これは実物の電車区などで、感電防止のため色差しをしているので、それを再現したもの。
完成したクモハ103−56号。南武線の大先輩クハ79427号(左)と並ぶ。実物ではこの組み合わせは実現しなかった(左の72系電車は1980年頃101系電車に置き換えられて廃車)。
完成したクモハ103−56号の後より。パンタグラフからの引き込み線の通り具合に注目してほしい。
クモハ103−56+モハ102−156+クハ103−576の3輌編成。2001年10月16日夕方のクモハの完成をもって、更新工事終了。走行テストもおおむね良好。
クハ103−576側から見た編成。