クハ103−500番台の更新工事

 クハ103−500番台は、運転室付きなのと、前面のジャンパ栓受けのあとの埋め込み、ヘッドライト交換などがポイントとなる工事である。

 塗装をはがした状態。この段階では前面のジャンパ栓受けの撤去と、その穴埋めまで行っている。この車はブリキ車体なので、念入りにさびおとしをしておく。


 前面床下に取り付けるジャンパ栓(左)、連結器胴受け(右)。いずれもロストワックス(精密鋳造)製の、高級なものを使用したが、床板に半田付けするには、半田付けする面をよく磨いて酸化被膜を取り除いておかなくてはならない(この写真ではすでに磨いてある)。


 床板の方も磨いておいてから、胴受けとジャンパ栓2個を半田付けする。100Wのハンダゴテと、ヤニ入り半田を使用する。ヤニ入り半田は、配線以外に使われないことが多いが、このような小さい部分の半田付けには使いやすい。


 台車の組立に入る。クハ103−500番台は616番まではTR201台車を装着しているので、種車に付いていたものとは形態が少し異なる。日光モデルの「TR62」台車はブレーキシューが着いているので、TR201とよく似ており、これを利用した。枕バネ(中央下のポリ袋の中)は、別パーツになっていて、かなり細密な出来である。


 枕バネパーツをエポキシ樹脂系接着剤で貼り付ける。これで台車の形態は所定通り。


 これから組み立てる床下のパーツ類。床板はセミグロスブラック(半つやの黒)に塗装した。上の2つは台車。中央に床板。下左はボルスタパーツ(台車を床板に付けるもの)。下右は連結器とその復元バネである。


 床下機器パーツも付けて、車体を仮載せしてみたところ。クーラーも載せてあるだけである。前面の下の方が白っぽいのは、ルーバーやジャンパ栓穴を埋めたパテのあとである。


 前面の運転士窓の下に、ワイパーを取り付ける穴をあける。0.6ミリのドリル刃を使い、慎重に手回しであける。


 車体の天井に、ユニットライトのホルダーを半田付けする。ここでも100Wのハンダゴテは大活躍である。


 運転台上に非常用信号炎管を半田で付け、行先表示窓の下穴をあける(左端の窓の上)。


 ヘッドライトをシールドビーム2灯のものとするため、エンドウ製のロストワックスパーツを付ける。おでこのところだ。


 行先表示窓も出来上がり、クーラー脇ランボードも取り付け、車体の基本工作が終わったところ。ヘッドライトと信号炎管は真鍮パーツなので、金色であるのがわかる。


 車体をクレンザーと中性洗剤で洗って、油分を抜き、乾かしてからメタルプライマーを塗る。これを塗っておかないと、塗料の食い付きがきわめて悪くなる。


 下塗りのピュアホワイトを塗る。これは他車の工事と同じ。


 黄色5号により塗装を始めたところ。


 前面は凹凸が結構あるので、いろいろな方向から塗料を吹き付ける。時にはこのように手に持って。


 車体内部も一応塗装しておく。真鍮ならばあまり問題ないが、ブリキでは呼び錆が心配だ。


 屋根以外の塗装が完了した状態。下回りとクーラーを仮載せして撮影。


 屋根のグレーを塗る。このようにマスキングをしてから、片側ずつ塗っていく。一度に厚く塗らないのがコツだ。


 ドキドキのマスキングテープはがし。グレーが大きく黄色部分にはみ出していたり、黄色が剥げたりしないか結構気を使う。


 屋根上の塗装は無事終了。ベンチレーターとクーラーを取り付ける。クーラーは例によって別に塗装しておいたものを貼り付ける。


 モハ102のところに書いたように、烏口を使ってHゴムと窓サッシに色入れを済ませたところ。この時点では窓ガラスが入っていない。


 前もってあけてあった穴にワイパーを取り付ける。ここではすでに窓ガラスは入れてある。ちゃんと窓が拭けるような角度に付けるのが難しい。


 車内灯のユニットライトの組立。まずは買ってきた状態。


 袋から出したパーツ類。上が反射板(アクリル製)。左は電球、中央は反射用のアルミテープだ。


 電球のリード線を反射板にあいた細い穴に通す。


 電球をアルミテープで包みながら、中央部に取り付ければ出来上がり。


 あらかじめ車体内側に付けておいた、ユニットライトホルダーにパチンとはめる。この車は先頭車なので、ヘッドライトに干渉しないよう、やや後ろよりに付ける必要がある。


 この状態で点灯テスト。電球1個でかなり明るい。


 テールライトのレンズを取り付ける。少量の接着剤+ピンセットでの細かい作業。


 今度はヘッドライトのレンズを付ける。これは表側から押し込むように付けるので、レンズの足に少量の接着剤をつける。


 シリコンダイオードを付けて、進行方向によってヘッドライトとテールライトが切り替わるようにし、向きがあっているか確認の点灯テスト。


 いよいよ最終段階。インスタントレタリングシートを使って、車輌番号の転写。この車は資料により、クハ103−576となる。


 完成したクハ103−576号。ヘッドライトと車内灯をつけて撮影しているが、フラッシュのせいで目立たない。


 テールライトの点灯状況。
 クハ103−576号、2001年9月15日昼完成。正味の製作時間おおよそ30時間程度。