工事の進め方

103系電車工事要項

1.工事の基本方針

 この工事は、素材のディテール度を考慮して、あまり微に入り細にうがったものとはせず、見合った内容とする。しかし具体的にはそのまま塗り替える程度ではなく、見合ったディテール追加を行うものとする。

 種車の103系電車模型は、ヤフーオークションで落札したものを基本とするが、改造の手数を低減する目的もあり、すぎたま手持ちの在来車と差し替え(既に塗装を落としたもの)を行う。いずれにせよ、特に先頭車については、初期のブリキ車体のものが混じることが避けられないため、腐食対策については、万全を期することとする。

 プロトタイプが冷房改造車であるので、模型でも同様に冷房改造車仕様に改造する。

 なお工事に伴い、新たに取り付けが必要な部品代、及び塗料などの代金は、なるべく低廉なものとする。

 種車はカツミ模型店の103系旧製品であるので、妻窓がない、前面が試作車タイプ、屋根上を中心にディテール表現にやや乏しい…などの特徴がある。

2.工事の具体的内容

 編成はクモハ103+モハ102+クハ103の3輌編成とする。当初クモハ103に縦型モーター2個を装備すること(本来はこの形態が製品のままなのであるが)としたが、現車の検討をしたところ、モハ102に縦型モーターが2個搭載されていたので、これを利用することとした。このためクモハ103はモーターなしとした。

 工事の詳細について、各形式ごとに述べる。

 クモハ103の工事内容は、ヘッドライトのシールドビーム2灯化、冷房装置取り付けとそれに付帯するランボードの取り付け、信号炎管の取り付け、屋根上ベンチレータの全数交換、ホロ枠を撤去してホロを取り付け、パンタグラフの交換と高圧引き込み線の追加、床板の交換と前面ジャンパ連結器の取り付けまたは交換、行先表示器窓を側面に追加、主電動機冷却風道ギャラリ取り付け、運転室下ジャンパ栓受けの取り替え、通風ギャラリ閉鎖、が主なものである。

 モハ102の工事内容は、屋根上ベンチレータ全数交換、ホロ枠を撤去してホロを取り付け、冷房装置取り付けとそれに付帯するランボードの取り付け、行先表示器を側面に追加、が主なものである。また種車のモーターは整備流用する。

 クハ103の工事内容は、500番台化のため前面ジャンパ栓受けを撤去、同様に床下のジャンパ栓を一部交換、その他はクモハ103と同じである。

 床下機器がまったくプロトタイプの実状に合わないが、費用抑制のため当面そのままとする(別途検討)。

 各車輌とも、車内灯をモハ102以外ユニットライトに交換、前尾灯の整備を行い、セレンにより前尾灯の切り替えをしている車輌は、セレンをシリコンダイオードに交換した。

3.プロトタイプの選定について

 プロトタイプは南武線103系の1984年頃、と設定している。この時期は南武線に103系が配置され始めた時期であり、基本的に全て冷房車であったが、一部に101系からの改造サハ103−750番台や、非冷房車も混じり、さらに色が統一されていなかった時期である。

 今回のプロトタイプに選定した編成は、サハ103−750番台を含み、将来クモハ+モハを入手すればフル編成とできるよう、クモハ+モハ+サハ+クモハ+モハ+クハの変則6輌編成を選定した。また依頼者の要請により、両端ともシールドビーム改造車を選んである。冷房改造車特有の車体の造作についても、可能な限り再現することとした(冷房装置の形態の違い、MG通風ギャラリ位置、前面ジャンパー栓受けの数と位置など)。

4.古い製品の加工特有の問題について

 古い製品は運転優先に作られていて、細かいディテールが省略されている。この点どの程度追加工事をするかであるが、労働対価的な限界があることもまた事実である。つまりお金でディテールを「買う」ということは、今回の場合あまり考慮しようがない。よってある程度のレベルを勘案しなければならないが、もともとの製品と、最近の細密なパーツとの整合性からしても、あまり緻密な工事が好ましいとも思われない。当初妻窓を実物通り設置することを検討したものの、ドリル穴開け→電動工具での穴広げ→ヤスリ仕上げという作業が8カ所必要となることから、側面の行先表示窓新設までで断念せざるを得なかった。しかし、比較的容易に改造できる範囲では、可能な限り実物の感じが表現できるよう考慮して工事を進めることとした。

5.塗色

 もとの塗色は青22号である(京浜東北色)。一部種車の差し替えにより、朱色1号のものも混じるが、いずれにせよリムーバではがして新たに塗り直し、黄色5号に統一する。さらに発色をよくするため(黄色は隠蔽力の弱い色であるので)、下地に白を塗装して、その上に黄色5号を塗り重ねることとした。

6.時代考証

 103系は全車が国鉄時代に作られたもので、その後大部分がJRに引き継がれたが、どの時代を表現するかということも問題となる。

 現在の南武線を表現しようとすると、両端が必ずクハ103となる(高運転台)ほか、JRマークの貼付などの必要も生じる。また更新車が数多く、その加工も必要となる(妻窓埋め、窓ガラス支持部の変更など)。また現在オークションに流れている適当な車輌がなく(これぞ決定的)、そのへんの事情から国鉄時代の103系をプロトタイプに選んである。

7.流用部品

 基本的に使える部品は使うという方針であるが、形態が異なるもの、実態に合わないもの、細密化に反するものなどは使用しないこととする。具体的には種車のクーラー、台車(クハのみ)、パンタグラフなどは流用しないで交換とする。そのために多少経費が増加してもやむを得ないものと考えるが、あまり多額の費額とならないよう、バランスを考慮する。

8.工事期間

 おおよそ3ヶ月程度を予定。

9.新規に購入する予定の部品について

 新規購入とする予定の部品は、現状で次のようなものである。

●台車(TR62)日光モデル製品(クハのみ)=形態が異なるため

●クーラー(AU75)エンドウ製品=もとのものの形状が今一つ実感に欠けるため

●車内灯(ユニットライト)エンドウ製品=車内の明度アップのため

●パンタグラフ(PS16形)エンドウ製品=もとの品は実感にはあまりにもほど遠いため

●ヘッドライトケース(シールドビーム2灯)エンドウ製品=プロトタイプに合わせるため

●ジャンパ連結器(2連閉)エンドウ製品=プロトタイプに合わせるため

●連結器胴受け(一般用)エンドウ製品=種車にない部品の追加

●窓ガラス(塩ビ板)各社=汚れたものの取り替え

●塗料(黄色5号)GMカラー=車体の塗装用

●真鍮線少々=パンタグラフの引き込み線用

●避雷器(LA15A)エンドウ製品=パンタグラフ脇に取り付け

●車輌用信号炎管(201系用)エンドウ製品=運転台上に新設

●塗料(プライマー)グンゼ産業=車体の下地塗装用

 この他にも必要となるものがあるかもしれないが、最終的にリストと明細表を作成する。