VVVF制御試作車

 小田急の2600系には、サハ2650という形式がありました。元々は新宿方から2輌目に組み込む予定で作られたものでしたが、途中で計画が変更され、実際には小田原方から2輌目に組み込まれ、クハ2650+デハ2600+デハ2700+デハ2800+サハ2750+クハ2850と番号を付番し、サハではあるものの、将来は電動車(デハ2900)に改造できるよう考慮された設計になっていました。そのため台車も電動車用に少し手を加えたFS−360Aとし、車輪の直径も910ミリと電動車なみとなっていました。
 1985年から、2600系の車体修理(更新)が始まり、腐食した鋼板の張り替えなどが行われましたが、その工事順序は2669編成→2662編成→2661編成…でした。しかし、2662編成は、工事が終了してもすぐには営業に復帰せず、どうしたのかと思われていましたが、なんとサハ2762号(形式はサハ2650形。しかし番号は2750番台)に、インバータ制御装置一式と、175KWの主電動機が搭載され、まずは定置試験、その後試運転を繰り返し、さらに無動力での営業運転、最終的に「サハ」の形式のまま、電動車としての営業運転を、1年半ほどにわたって行いました。小田急電鉄で、営業しながらの試験は大変珍しく、またVVVF制御そのものが、まだそれほど一般的ではなかった時代の登場でしたので、大変ファンの目を引きました。一般の人々の中にも、その独特な走行音に気付いた方もいたのではないでしょうか。


 妻面に記載された重量などのデータが、メモとして残されていましたのでご紹介します。
 
形式・番号 サハ2650形一般車 サハ2762号インバータ制御改造車
形式 サハ2650 サハ2650(電動車であるにもかかわらず)
自重 28.30t 36.70t
定員 162人 162人
全検 −− 58.9
重検 −− 61.1(車体修理+VVVF化)

 当然ではありますが、自重が増大しているのがわかります。しかし、形式は電動車に改造されたにも関わらず「サハ」のままで、「デハ」にはなっていませんでした。かなり例外的かと思われます。



<画像>

2600系VVVF試作車サハ2762号の画像

 残念ながら、撮影機会に恵まれず、あまりたいした写真は残せなかったのですが、出場直後のサハ2762号。サハを名乗っているのに、床下がいっぱいで、断流器やインバータ制御装置が取り付けられているのが、かろうじてわかるかと思います。経堂駅西方にて。現在この場所は、高架化により景色が一変しており、背後の小田急経堂アパートも取り壊されました。1986年春。

2600系VVVF試作車サハ2762号の画像

 海側しか写真がない…。山側写真をお持ちの方、掲載させていただけませんか。経堂駅を発車して、新宿へ向かう各停に組み込まれたサハ2762号。この踏切も右端に写っている踏切警視小屋がまず8輌編成対応ホーム化で無くなり、さらに高架化で踏切ごと廃止されました。検車区も喜多見に移転しています。改造の銘板などは追加されておりませんでした。

<走行音>
 貴重な走行音を、たまたま録音していましたので、聞いていただけるようにいたしました。成城学園前−喜多見間(もちろん地上線時代)。データは.mp3形式、約2分弱です。1986年5月録音。ここをクリックして下さい。
 なお、この時の録音は、千歳船橋−向ヶ丘遊園間録音してあります。サークル「鉄音屋」さんに委託して、販売してもらっていますので、ご購入希望の方は、当方トップページの問い合わせフォームか、「鉄音屋」さんのHPからご連絡下さい。


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