江ノ電旧500形

 1956年と1957年に1編成ずつ登場した、新造車体の電車。台車は路面電車形のものを流用し、モーターも旧品の流用である。しかし、車体のデザインは、当時として斬新なもので、初採用の両開きドアや、流線形の正面など、当時の江ノ電のイメージを一新するものであった。しかし、運転上の必要性などから、後年さまざまな部分が改造されていた。

江ノ電旧500形の画像です

 適当な画像がなく、最近入手した古い鉄道写真集「Fコレクション」から、それなりな画像を掲載してみる。
 運転室部分から、窓2枚、ドア、ドア間窓4枚、ドア、連結面に窓2枚という窓配置の車輌は、江ノ電ではこの系列のみ。特徴的なスタイルを誇ったが、台車位置が他の車輌より前後に離れており、特に本車同士を連結して4輌編成とした場合で、連結部分の2つの台車にかかる荷重が、強度の低い側溝を跨ぐ線路部分などに、過大な負担をかけるという理由で、冷房化が出来ず、車体も老朽化したことから、2003年まで引退した。この写真は藤沢駅にて。502−552+1000系2輌。

江ノ電旧500形の画像です

 旧500形は2編成在籍していたが、501−551の編成は、全面広告車となっており、廃車時までこの姿であった。七里ヶ浜−稲村ヶ崎間にて。塗装は変わっているが、側面の窓配置などは、この画像がわかりやすいかと思う。側窓がやや高い位置にあるのが特徴的。

江ノ電旧500形の画像です

 峰ヶ原信号所に進入しようとする501−551編成。不思議なデザインの正面だが、冷房が無いため、夏は暑く、運転士両側の窓を開けられるようにするために、このようなデザインに改造したとのこと。

江ノ電旧500形の画像です

 502−552の編成は、一応原色を保ち続けた。七里ヶ浜−稲村ヶ崎間にて。



 参考までに、登場当時の画像もお目にかける。

旧500形の昔の画像です

 七里ヶ浜−稲村ヶ崎間を行く、502+502。登場からしばらくの間、2つの車体とも同じ番号を付けていたが、当時の運輸省の通達後、鎌倉方の車体を+50する改番が行われ、画像手前の車体は552に改番された。
 この時代は、集電装置がパンタグラフやZパンタではなく、トロリーポール(路面電車なみ)だったので、その操作のため前面中央の窓が開けられるようになっており、その左右の窓は固定されている。また側面の保護棒(窓から手などを出しにくくするための安全棒)が低い位置にあり、窓そのものは下降式に開く。両開きドアであるのがわかるが、これは後年片開きに改造されているのは、上の写真でわかるかと思われる。室内には簡易で小さなクロスシートが設けられていた。

旧500形の昔の画像です

 そのまま振り返って後ろを撮影したと思われる画像。場所も同じである。上から2番目の501号とほぼ同じ場所からの撮影と思われるが、背景や右側に見える国道の様子などは、まるで様変わりしている。
 こちらの車体も502という番号になっているのがわかる。正面の中央窓は、下向きに開けられるようになっており、その上に水切りがついている。おそらく藤沢での折り返しで、窓を開けてポールを操作(前側を下ろし、後ろ側を上げる)し、そのまま走ってきたものと思われる。
 運転室窓下には、ひらがなで「かまくら」と書かれた行先板がはまっている。その左に見える円盤は、当時行われていた「続行運転」(単線で同じ向きに列車を続けて運転すること)の標識。追突の危険があるため、現在では行われていない運転方法である。以上2枚も「Fコレクション」より。1960年ごろ?。

江ノ電旧500形ヘッドライト1灯時代の画像

 500形は、その後もいろいろな変遷を遂げることになる。この画像は1970年代末頃と思われる時代の551号。すでにパンタグラフ化され、連結器も大形の通常サイズのものに変わっている。中央窓上の水切りは無くなり、したがって窓は開かない構造になっていると思われるが、パンタグラフから上げるときの「引きひも」が、正面向かって右側に下ろしてあり、これを操作するときは開けられたのだろうか?。そのあたりはわからない。鎌倉駅にて。画像提供:潮史晶氏。現在の鎌倉駅とは、乗降ホームが逆であり、降車ホームが左側3番ホーム、乗車ホームが右側4・5番ホームとなっている。降車ホームに屋根が無いのも、今の常識からしたら驚き。現在は降車ホームが4番ホーム、乗車ホームは3番ホームで、極めて混雑する時と、早朝・深夜帯の一部のみ、5番ホームを乗降に使用する。もちろん屋根も端まで付いている。

江ノ電旧500形ヘッドライト3灯時代の画像

 上の潮氏撮影の画像から、数年程度が経過した旧500形。ヘッドライトが3つに「増殖」している。もっとも上部の1灯は未撤去なだけで、点灯しないようになっていたらしい。そのほかにはさしたる変化は無い。相変わらず、両開きドアであることが、なんとか側面からわかるかと思われる。1979年12月3日、稲村ヶ崎−極楽寺間にて。501−551号。Fコレクションより。

江ノ電502編成の画像です

 ヘッドライトが角形で、大形のケーシングに納められていた502−552の編成は、ヘッドライトを下部に移設・増設するにあたり、上部の元のライト部分全体が埋められ、そのまま走行していた時期がある。上の画像はそんな一時期の502編成。急場しのぎの感じで、どうも格好があまりよろしくないが、よく見るとこの編成には、正面中央窓上の水切りが残存している。この時代の車番は、ペンキ書きのようである。細かい違いがあるものだ。七里ヶ浜−稲村ヶ崎間にて。1983年4月14日。Fコレクションより。


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