第30話の東勝寺橋・大御堂橋周辺

 第30話は、あまりファンの人々から、高い評価を得ていないストーリーだと思いますが、実際には非常に重大な示唆を含み、かつコメットさん☆の「奥手な少女としての知識レベル」などがかいま見られる、言ってみれば微笑ましく、生命の誕生に関する自然な教唆を含むストーリーです。この話を名作と言わずして、何を言うのでしょうか!(力説)。

 もっとも前半は、保育園内の話が続き、日常的な描写な反面、ストーリー進行上の大きな盛り上がりがあるわけではありません。しかし既に、OPの前にすら、最後に続く伏線となる、ラバボーとコメットさん☆の会話があります。

 さて、後半のストーリーは、鎌倉駅の東側を流れる滑川(なめりがわ)にかかる、東勝寺橋(とうしょうじばし)と、大御堂橋(おおみどうばし)と考えられる橋周辺が登場しています。ここの実際の風景を、ストーリーの進行とともに、見ていきたいと思います。



カット番号130(この番号は仮に付けたもので、実際の絵コンテなどとは異なります。以下同じ。ちなみにOP前1〜5、7〜12は洋上のケースケ、6と13〜17までは七里ヶ浜→「七里ヶ浜周辺」のところでご紹介します。OP後は1〜70までが保育園、71から星力補給〜保育園、121からは段葛→別ページでご紹介します。129で前半終了です):ここから後半Bパートです。コメットさん☆は、昼間源ちゃんが作った粘土怪獣に「命」を、星力で吹き込んでしまい、それが逃走したのを追いかけます。まず東勝寺橋と思われる橋が、下からパンアップで映り、橋の上をコメットさん☆とツヨシくん、ネネちゃんが駆けていきます。

東勝寺橋下の画像です

 このカットは、下からずっと上に向かってパンアップするので、2枚に分けて撮影してみました。これが実際の東勝寺橋です。このようにアーチ橋なのが特徴的で、このアーチ部分は、作品に描かれるのとは異なります。これは川面からの撮影ですが、比較的安全に、川面に降りられます。アーチ部分以外、作品は、非常に忠実な描写です。向こうの石積みの上に見える塀は、もっと長く描かれます。特記なき撮影は、2006年4月17日、撮影協力:Naka氏。

東勝寺橋上方の画像です

 作品のカメラは、パンアップしているように描かれますので、やや縦長に画像を切り出してみました。東勝寺橋の欄干部分は、意匠からして第30話と一致しています。この上をコメットさん☆とツヨシくん、ネネちゃんが左から右へと走っていく、ということになります。作品では、全体に橋はやや長めに描かれ、橋の欄干の鉄帯板を曲げて作られた意匠が、丸みを帯びて描かれるほか、見上げるような角度なのに、欄干が水平に描かれるという特徴がありますが、ほぼ全く実物に忠実です。ちなみにこの橋は、大正13年=1922年竣工の銘板がありました。79歳の老橋の上を走る、12歳のコメットさん☆。そのこともなかなか風情がある…のかもしれません。



131:次いでコメットさん☆とラバボー、ツヨシくん、ネネちゃんが走ってくるシーンになります。

東勝寺橋上の画像です

 向こうの方から東勝寺橋の上に走ってきたコメットさん☆とラバボー、ツヨシくん、ネネちゃん。コメットさん☆は橋の上で立ち止まり、「どこへ行ったのかな?」と。画像の左手前にコメットさん☆、中央部付近にネネちゃん、やや右寄りにツヨシくんが描かれます。橋の欄干形状はおおむね忠実ですが、背景の家並みなどは全く異なる上、道の付き方も向こうに向かって、右カーブに描かれるなど、そうした部分は忠実ではありません。また橋の始点(右側の電柱が立っているあたり)から、左右方向に川に沿って道があるように描かれますが、実際にはそのような道はありません。
 その後の補充調査で、このコメットさん☆たちが駆けてくる道は、東勝寺橋より下流側にある「琴弾橋」の向こうの道であることが確認されました。

琴弾橋の画像です

 これが琴弾橋。この向こう側に見える道路の角度、および塀の立てられ方などは、作品での描写に酷似しています。そのためこのカットは、東勝寺橋と琴弾橋の両方をミックスした形で描かれていると考えられ、カットごとに忠実な描写が多いこの作品としては、やや珍しいケースかとは思います。作品に描かれる、川に沿っている側道も、この橋の右手前側には存在します。2011年12月29日撮影。



132:コメットさん☆は振り返りますが、ツヨシくんとネネちゃんはもうおねむです。

東勝寺橋上から下手を見た画像です

 作品中のカメラアングルは、コメットさん☆の後側にまわり、さらにツヨシくん、ネネちゃんの後から、眠くなってあくびをする二人を映しますので、橋の西詰側から東側・下手を見た形となり、場所としてはこの場所となります。しかし、コメットさん☆の背後は、空抜き背景で、実際の状況とは全く異なります。



133:コメットさん☆は、ツヨシくんとネネちゃんを「ママが心配するから」と言って、ラバボーにのせ、帰らせることにします。コメットさん☆、ママはあなたも心配すると思いますよ…。

東勝寺橋の画像です

 画像で言えば、左側ヤブツバキらしい木がかぶさっているところの向こうあたりにコメットさん☆、その左にツヨシくんとネネちゃん、向こう側の欄干よりにラバボーという配置のカットです。下手(しもて)から上手(かみて)を映す形になっています。向こう側よりでラバボーは膨らんで、二人をのせる準備をします。実際の場所としては、高さが足りず、作品と同じように撮影するのは不可能でした。もう少し高さの稼げるカメラを支える支柱などが必要です。そのためこの画像は暫定的なものとならざるを得ませんが、実際の橋よりも、作品では橋が長く描かれ、幅もあるように描かれます。実際の橋は、車がすれ違えないくらいの狭く、小さな橋です。


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