小田急特急ロマンスカー

 小田急電鉄の特急電車は、戦後デビューした1910系から、いつのまにか「ロマンスカー」と呼ばれ、今日に至っています。元々「ロマンスカー」の呼称は、戦前に京阪電鉄が使いはじめたというのが定説ですが、戦争で特急列車の運転が途絶えたりした影響か、その後小田急の特急電車が、そう呼ばれるようになっています。
 現在の小田急ロマンスカーは、おおよそ30分に1回程度運転され、観光地箱根に、一部は江ノ島に、平日の夕方からは、通勤ライナー的列車として、多くの人に利用されています。
 特に、前面展望が楽しめる車輌があり(70000系、イベント用として50000系)、それらは普段見られない視点から、景色を眺められるとあって、観光客や子どもに高い人気を誇ります。また特急料金が安いのも魅力の一つでしょう。スピードよりも、どちらかといえば、ゆったりした空間を提供するためにある…、という性格の列車と言えます。

小田急ロマンスカー10000系の画像

 新宿のビル街をバックに、一路箱根に向かう10000系ロマンスカー。前面の展望席が人気でしたが、バリアフリーに対応できないハイデッキの客席が災いして、2005年から廃車されました。しかし2編成の一部車輌が、長野電鉄に譲渡され、同社で特急「ゆけむり」として使用されています。代々木八幡駅、2004年10月1日撮影。

小田急ロマンスカー20000系の画像

 JR御殿場線への乗り入れ特急「あさぎり」用として造られたロマンスカー20000系。中間に入っている二階建て車と、二階部分に設定された「スーパーシート」(JRのグリーン車に相当)が特徴でしたが、やはりハイデッキ構造で造られたため、バリアフリーに対応しにくいとされ、抵抗制御方式を採用していた下回りの前時代性もあり、既に引退し、一部の車輌は富士急行に譲渡され、同社8000系として活躍しています。経堂駅にて。2008年10月25日撮影。

小田急ロマンスカー30000系の画像です

 どちらかといえば、通勤ライナー的役割に主眼を置いた形式30000系。箱根方面と江ノ島方面に分割する特急に活躍しましたが、最近は主に「さがみ」号や「ホームウェイ」を主体に運用されています。7編成ありますが、うち5編成はリニューアルされ外観も変化しています。
 なお第134話で、コメットさん☆と沙也加ママさんが乗車するのは、この車(サポート/えのしま号)です。向ヶ丘遊園−生田間にて、2004年12月10日撮影。
 えのしま号は、2004年12月11日のダイヤ改正で、多数が廃止されたので、第134話に出てくる「えのしま37号」も、今はなくなっています。

小田急ロマンスカー50000系の画像です

 小田急に2005年3月から投入された、新形ロマンスカー50000系。上の30000系で、やや通勤に主眼を置いた方針から転換し、観光に特化したロマンスカーとして、多くのファンの期待を担って登場しました。当面箱根方面の特急に使用されましたが、のちに通勤ライナー的な運用である「ホームウェイ」にも使われました。しかし2編成しかなく、車体傾斜装置などの特殊機器を持つ割に、あまり調子が良くない様子もあり、2022年に定期運用から外れ、2023年に全廃の予定という、驚きの結果となっています。経堂駅にて、2004年12月24日初の全線試運転時撮影。経堂駅。

小田急ロマンスカー50000系の画像

 営業に入り、「ブルーリボン賞」を受賞。その装飾をして走行する50000系ロマンスカー(正面窓下にステッカー)。和泉多摩川駅。2007年5月26日撮影。

小田急ロマンスカー60000系の画像

 地下鉄乗り入れをしている小田急電鉄では、地下鉄千代田線発着のロマンスカーを走らせることとなり、地下鉄対応のロマンスカーとして造られたのがこの60000系です。登場時から御殿場線への乗り入れも考慮されており、20000系の「あさぎり」を置き換え、御殿場線へも乗り入れ、マルチに活躍することになっています。しかし、昔からのファンとしては、どうも最近のロマンスカーは観光色が薄くなり、単なる通勤特急に成り下がった感があり、そこはもう少し設計に意を払って欲しいところ。
 この列車は地下鉄から小田急線に帰ってきた「メトロはこね」号。経堂駅。2008年4月5日撮影。

小田急ロマンスカー60000系の画像

 60000系ロマンスカーは、地下鉄に入らない時、本線の特急にも活躍します。これは「はこね」号。左に待機しているのは、夕方から出庫し、通勤客を運ぶ通勤形3000系(左)と8000系。経堂駅。2008年頃。

小田急ロマンスカー60000系の画像

 60000系は、10輌編成で走行出来ますが、4輌と6輌に分割できる編成で造られています。実際にこのような分割運用につくこともあります。連結する時には、通路を構成する必要があるので、6輌編成の上り方と4輌編成の下り方は、流線型にすることが出来ず、苦心の設計になっていて、割と平らな正面デザインになっています。経堂駅。2010年1月26日。


第134話に戻る