子猫のために食事をするメト。キャットフード缶はありましたが、巨大で今一つ得体の知れない98円のもの…。研究室の事務パートの女性が、カリカリのキャットフードを持ってきてくれていました。
メト(右)とその子の「サビ」(左)です。当時は知識も無かったので、猫缶詰もあげっぱなし。掃除を軽くする程度。私の研究室の教授には、大変嫌われましたが、農業経済の研究室が協力的で、メトはそこで子猫を産みました。
くつろぐメト。赤茶色が混じったキジ模様で、なかなかきれいな猫さんです。「ニエ、ニエ」と平たい声で鳴いておりました。そのため校舎内でも、おおよそどこにいるかがわかるので、食事をあげるときなどは便利。
夜になって子どもを抱いているメト。まだ子猫は普通の食事はしませんでした。もっとも子猫用のフードなど「あったのかなぁ」という時代でしたが。
メトは、自分が臭くなっても、子猫の排泄物をちゃんと処理して、子猫はきれいに保つというまことに見事なお母さんぶりでした。子猫がもらわれて行ってしまうと、必死に探し回るさまはとても不憫でしたが、それもまた母猫の愛とはどういうことかを、私たちに勉強させてくれたと思います。作物の観察も大事かと思いますし、当時それで論文を提出したのですから、自分の能力を試すためにも重要な時間だったと思いますが、「生き物を観る」ことの基本の基本を教えてくれたのは、たくさん読んだ論文や教科書よりは、メトだったのではないか。そのようにも感じます。
教授がいないときには、こっそり実験機材室に入れていたこともありました。上はそんなカットです。教授に知れたら、激怒だったでしょうね。どういうわけか、教授は猫嫌いで、メトとその子どもたちを「保健所に連れていく」と息巻いておりました(実際にはそうならずにすみましたが…)。まあ、教授の当時の立場もわかりますが、ここは「生物を扱い、そのある種の法則性を見い出すことで成立する学問を修める」研究室。生き物を愛でるまなざしを持たずして、生物を観察する学問を志し、修めることなど、出来はしないと、今も私は思います。
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