小田急NSE車3100系動力交換工事前編

 小田急ロマンスカーで、初めて展望室を持ったNSE車3100系。中村精密という会社から製品化されていましたが、最近プレミアが付いて高騰気味。しかしまあ、なんとか入手できました。
 子どもの頃からの慣れ親しんだ電車ですので、運転の花にしたいところです。ところが入手したこの編成は、6輌編成で、近年の姿になっているものの、動力装置が、オリジナルの「縦型モーター+インサイドギア」から、「カツミ・ユニバーサルトラクション」という、パワートラックのようなものに交換されていました。前所有者の方は、トラクションを編成に3個搭載して走らせていたようですが、この種の台車内にモーターを入れる系統の動力装置は、よく手入れをしてやらないと、ギアの摩耗などで、調子が悪くなりがちのようです。また取付に際して、けっこう苦労している様子。3台のトラクションのうち、2つが動かなくなり、したがって編成ごと走らなくなっていました。これを何とか修理して、走るようにしようと思います。
 ここからが長い長い工事の始まりでした…。


 まずは工事方針を立てます。このNSE車の台車は、軸間距離が27.5ミリという、比較的特殊なものになっています。現在入手しやすいインサイドギアは、圧倒的に26ミリと、31ミリなので、インサイドギアに復元というのは、あまり現実的ではありません。それに今や、主流の動力でもないですね。そこで流行りの「MPギアシステム」にしてみることにします。ちょうど、「東急8000系等用」として、軸間距離27.5ミリのものがあります。

 さて動力機構そのものは、MPギアでいいとして、モーターとその取付を考えると、床板を新製しなければなりません。このNSE車は、床板が床下機器の付いた短い板になっており、前の台車のところには床板がかかっていませんでした。また床が低いので、あまりかさ高なモーターは入りません。連接車なので、後ろの台車も同時駆動には、しにくい(出来ますが、床面高さが上がってしまいます)という問題もありました。
 以上の諸点を解決するため、床板は加工のしやすいアクリル板から、長めに切り出してみることにします。これはのちに別の問題から、変更を余儀なくされるのですが、透明なので、作業がしやすいという利点もあります。
 
1.まずは、1ミリ厚のアクリル板から、床板の寸法にあわせて、板を切り出します。

床板をアクリル板から切りだしている画像

 ごく普通に、ステンレス定規でケガキします。


床板をアクリル板から切りだしている画像

2.アクリルカッターで切断します。


切り出したアクリル板の画像です

3.アクリル製の床板が切り出せました。寸法は現物合わせですが、前の台車のさらに前方までカバーする寸法としています。また両側の先頭車を動力化する可能性を考えて、2枚切り出しておきました。


ユニバーサルトラクションを取り外している画像

4.カツミのユニバーサルトラクション(左の台車に付いている)を取り外します。これは優れた台車モーターで、軸間距離を25〜32ミリ程度に変更できるのがミソでした。今は絶版になっているのが残念です。手軽に客車をユーレイ化出来たりしたのですが…。白い線が引いてあるのは、車体に対して、片側レールの電気が流れる構造のため、向きを間違えるとショートが起こるためのようです。


MPギアを台車に組み込んだところの画像です

5.台車にMPギアを組み込みます。普通にMPボルスターを使いますが、台車の軸穴が浅すぎ、そのままでははまりませんので、台車の軸穴を1ミリのドリルで深くします。あまり深くしすぎると、表に貫通してしまいますので、注意が必要かもしれません。


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