簡単にまず結論を言ってしまいますと、現状(2013年4月)の時点で、鳩やスズメから、鳥インフルエンザ(特にH7N9形やH5N1形)に、すぐ人が感染するおそれは、研究者の報告を見る限り、日本国内において今のところ「無い」と言えます。ただし、H7N9形については、情勢が刻々と変化しつつあり、直近の情報に当たる必要がありそうです(あわてないで下さい)。
これらはあくまで「現状(2013年の4月)時点で」、という但し書きが付くことになり、未来のことまではわかりません。この辺が市井の人々の不安のもとであり、研究者や政府機関、および国連などの懸念でもありましょう。
また、どこぞの国の日本人会や、鳩駆除業者の流す情報は、あらかた根拠の無いものになっており、今にも鳥インフルエンザが鳩からうつるかのように不安感を煽っていますが、それは正しいとは言えません。
ただ、このページもネット上の情報ですから、「すぐに信ずることは出来ない」と、お考えの方もいらっしゃるでしょう。そこで、資料にもあたりながら、もう少し正確な検討を試みます。
まず、これまでの経緯など、理解しておきたいことがあります。それらをおさらいしてみましょう。
現状の把握
2009年の半ば頃から、日本国内で「豚由来の新形インフルエンザ(H1N1形)」が大流行し、死者が出たり、マスクが売り切れて大騒ぎになったり、イベントが自粛されたりという事態が起こりました。しかし、その流行は一応収束に向かい(WHOも2010年8月10日に、「豚由来の新形インフルエンザ(H1N1形)」のパンデミック終息を宣言)、2010年秋以降では、普通のインフルエンザ予防注射(「インフルエンザワクチン」と言う)に、この「新形」も入れられるようになり、今後季節性インフルエンザと同様な経過をたどっています。この「豚由来の新形インフルエンザ(H1N1形)」は、幸い「弱毒性」という、感染力は強いものの、早めに手当てをすれば、重症化することが比較的少ないタイプのインフルエンザでした。
さて、一部繰り返しになりますが、今後懸念される問題は、一般にインフルエンザウイルスというものが、その構造上変異を起こしやすいことから(遺伝子の形が変わってしまう)、「強毒性」のタイプ(例えばH5N1形)や、「弱毒性」でも、それまで問題化していなかったタイプ(例えばH7N9形)のインフルエンザウイルスが、鳥からヒトへの散発的な感染を繰り返しているうちに、まず鳥からヒトに容易にうつるようになり(病原性・感染性が上昇)、さらにはヒトからヒトへ感染する能力を獲得(変異)して、結果的に全世界に広がってしまう「感染爆発」(パンデミック)が起こることです。
現在流行しているA形、B形の季節性インフルエンザと、「豚由来の新形インフルエンザ(H1N1形)」は、ヒトからヒトへ感染しますが、「弱毒性」と言って、手当てを誤ると重篤な症状を起こすことがあるものの、一般的体力の成人であれば、栄養と水分を摂って安静にしていれば回復します。
なお、このところ、中国でヒトへの感染が起こり、問題になっているH7N9形について、今のところ、ヒトからヒトへの感染は限定的であるとされ(朝日新聞2013年4月20日朝刊37面、東京新聞同日朝刊3面など)、将来的にパンデミックを起こす「可能性」はあるものの、まだヒトからヒトへの感染が拡大している状況ではありません。
一方、現在鳥からヒトへの、散発的感染が報告されているH5N1形は、「強毒性」と言って、致死率の高い危険な感染症であり、事実、鳥からヒトへ感染した人の、約60パーセントもの人が亡くなっています(http://idsc.nih.go.jp/disease/avian_influenza/case201000/case101119.html)。もしこれがヒトからヒトへ感染するように変異し、大流行となると、全世界で未曾有の災害となるかもしれません。
2008年までの時点で、アメリカCDC(疾病管理予防センター)が警告していた、感染爆発を起こす危険性が高いとするインフルエンザには、以下のようなものがありました。
1.H5N1形
2.H9N2形
3.豚インフルエンザのA形インフルエンザとの混合変異新形→これが2009年に日本でも大流行した「豚由来の新形インフルエンザH1N1形」でした。
(HやNというのは、ウイルスに含まれるタンパク質の型を示す記号です)
鳥インフルエンザウイルスが、ヒトへの病原性を獲得する(平たく言うと、鳥同士にしかうつらないウイルスが、ヒト同士も感染するようになる)までの過程は、おおよそ以下の通りです。
1.水鳥同士、鳥同士、水鳥から野鳥への感染はするが、症状が出ないか、または鳥だけに症状がとどまっていて、ヒトにはうつらない段階。
↓
2.ウイルスを大量に取り込むなどした場合、ごく稀に鳥からヒトにうつることがある段階。
↓
3.鳥からヒトへの散発的な感染を繰り返している段階。
↓
4.鳥からヒトに容易に感染するようになった段階。
↓
5.ヒトからヒトに感染するようにウイルスが変異した段階。
↓
6.全世界にウイルスが広がってヒトの感染者が続出する段階(パンデミック=感染爆発)。
2013年4月現在、H5N1形は2の段階、H7N9形は4くらいの段階と思われます(前者は今のところある程度固定的ですが、後者は流動的なので、「思われます」という表現にしておきます)。
鳥とヒトのインフルエンザに、豚が関係してくるのは不思議に思われるかもしれませんが、これは豚が鳥とヒトのインフルエンザ両方に感受性があるためです(例えばhttp://www.city.saitama.jp/www/contents/1241932691527/files/leaflet_090701.pdf など)。その点では、鳥からヒトに感染したウイルスが、ヒトからヒトへ移るように変異する危険とともに、豚が関与する可能性にも留意する必要があると言えます。現在懸念されているH7N9形についても、半数以上の患者は、鳥などとの接触が確認されておらず、感染経路が不明とされています(朝日新聞2013年4月20日朝刊37面)。もしかすると、豚などの家畜の関与も考えられるわけです。
特に東南アジア諸国や中国の一部地域では、豚小屋とニワトリ小屋が近接して設けられていたりしますし、これは日本でもそのような例が少数ながら見られるようです。
野鳥の問題
数年前、日本国内の養鶏場で、ニワトリが大量死し、よく調査したところ、H5N1形の鳥インフルエンザに罹患していたことがわかり、近隣の養鶏場のニワトリを大量に殺処分することになった事件がありました。その後の調査で、これらの鳥インフルエンザウイルスは、おそらく野鳥から持ち込まれたものであろうとされています。また十和田湖畔で、死んだ白鳥からH5N1形鳥インフルエンザウイルスが発見された例も報告されています。
そして2010年秋から冬にかけて、北海道稚内市の野生のカモのフンから、H5N1形鳥インフルエンザウイルスが検出され、その後2010年11月30日に島根県安来市の養鶏場の、死亡したニワトリから検出されたH5N1形鳥インフルエンザウイルスが、極めて遺伝子的に類似していたと発表されています(東京新聞2010年12月3日朝刊社会面による)。
鳥インフルエンザウイルスは、上にも書いたように、水鳥が普通に持っているウイルスで、水鳥自身は発症しないとも言われています。しかし問題なのは、「渡り」をする野鳥が、ウイルスを保持した状態で、日本国内に飛来し、そしてウイルスを拡げてしまうのではないか、という点でしょう。
事実、2010年春にチベット付近で発生した鳥インフルエンザ(H5N1形)が、渡り鳥によってシベリアへ運ばれ、2010年冬になって感染した渡り鳥が南下、日本国内でのウイルス検出につながった、との見方が報道されています(http://www.asahi.com/national/update/1203/OSK201012030077.html および http://nxc.jp/tarunai/index.php?action=pages_view_main&active_action=multidatabase_view_main_detail&content_id=3693&multidatabase_id=60&block_id=628#_628など)。
ですが、今のところ(2013年4月時点)で、野鳥が鳥インフルエンザを発症して「大量死した」という事例は、発生していません。
ただ、このところのH7N9形の流行に関する報道では、ウイルスは思いのほか広範囲に広がっている可能性も、否定できないとしています(H5N1形については、そのような報告はありません)。それでも、現状では少なくとも散発的な発生・ウイルス検出にとどまっており、ウイルスを保持した野鳥が、「大量に」飛来している証拠はありません。そのため、少なくともこの日本で、今過剰に心配する必要はありません。
ヒトへの感染
●H5N1形
2010年の12月時点で、鳥インフルエンザのH5N1形が、鳥からヒトにうつったという例は、東南アジア・ベトナムから中国などで確認されています。また、抗体が出来ていた(感染しても発症しなかった)例も含めると、H7系や、H9系、H5N2形の報告もあります(http://idsc.nih.go.jp/disease/avian_influenza/map-ai2010/tori101124.gif など)。現状での鳥からヒトへの感染は、ヒトと鳥(ニワトリなど)が非常に濃密に接するような環境があり、フンなどに含まれるウイルスを、多量に体内に取り込んだ結果、ヒトに感染したと考えられています。ヒトからヒトに感染した事例は、同居家族で看病していて、ウイルスが多量に排出される環境下にあった例のみにとどまっています。また肉や卵を食べて、感染した例はありません(東京新聞2010年12月3日朝刊社会面による)。
●H7N9形
既に報道されている通り、中国国内で鳥からヒトへの感染例が相次いでおり、その患者の半数程度は、鳥との接点の無い人であると報じられています。そうすると、このH7N9形ウイルスは、中国で既にそれなりに広がっており、さらに限定的ではあるものの、ヒトからヒトへの感染が起こっている状態と考えられます(2013年4月19日までのWHO発表、2013年4月5日付農林水産省消費・安全局長名文書「中国における鳥インフルエンザ(H7N9亜型)の発生に係る防疫対策の強化について」、など)。
これらから考えられることは以下のようなことと思われます。
水鳥は、自身が発症しないとしても、ウイルスを持っています。これは他の野鳥に感染する場合があるようです。どこまでが「野鳥」か、という定義の問題もありますが、今のところどの程度かははっきりしないものの、水鳥←→野鳥の感染は、既に起こっていると考えられます。
ではその感染野鳥と接触した場合、人にウイルスが感染するかどうか。これが一番問題になります。
そもそも野鳥なるものが、感染またはウイルスを保持している個体ではない場合、何も心配する必要はありません。ウイルスは「無いところから、自然に発生するものではない」からです。問題になるのは、鳥インフルエンザウイルスに感染したか、またはウイルスを保持した鳥と、人が濃密に接触することになる場合、ということです。
鳥と濃密に接触するという状態は、対象が野鳥の場合、大量に野鳥を捕まえて飼っているとか、不正に輸入するとかの、論外な例を除くとして、普通にはフンや死体が多量に発生し、それに接近する状況というのが想定し得ますが、そういう状況は、現状で「可能性としてはゼロとは言えないが、普通の生活ではまず無い」と考えていいのではないでしょうか。
ただ、なんらかの鳥を飼うなどしていて、その個体が野鳥と接する可能性があり、さらに野鳥に広くウイルスが広がっていることが確定的になった場合には、ヒトも注意する必要が出てくるかもしれません。
鳥インフルエンザウイルスが、鳥と人との間で、比較的簡単に感染するように変異していない場合は、危険性はここでかなり低くなる(普通の生活ではまずあり得ない)のですが、比較的簡単に感染するように変異した場合は、当然危険度が増し、H7N9形がその状態にあると言えます。一方、H5N1形については、実状を見る限り、今の段階(2013年の4月)では、ウイルスを大量に浴びない限り感染するおそれは無く、これは、ウイルスが鳥と人との間で、比較的簡単に感染するようにまだ変異していないためと言えます。
鳩は危険か?
鳩は留鳥(渡りをしない鳥)であり、野生の鳩は遠距離を飛ぶことはないので、鳩からヒトに、鳥インフルエンザが感染した例は、確定例としては報告されていません。一方、中国でこのところ流行の兆しを見せているH7N9形のウイルスが、市場で販売されていた食用の鳩から確認されたのと、中国国内の野生の鳩(中国は鳩を食用とする場合があるため、「野良鳩」と「食用鳩」を分ける必要があります)から、ウイルスが検出された例があります。そのため、中国国内で、野鳥の一種としての鳩に、どのくらいH7N9形ウイルスが広がっているか、厳密に検証する必要がありますが、しかし、日本国内にウイルスが侵入した証拠はありませんから、現時点でそこらにうろうろしている鳩から、例えばH5N1形やH7N9形のインフルエンザに人が感染することは、まずあり得ません。鳩のフンが飛んできたり、羽毛が舞ったりしても、バードテーブル等に餌をあげても、鳥インフルエンザに関しては、現状全く問題はないと言えます。
ただ、H7N9形をはじめとする鳥インフルエンザが、将来野鳥の間に広く流行し、鳩を始めとする身近な鳥たちも、それに感染したことが信頼できる情報として確定的になった場合には、その時に発表されるであろう対策にしたがい、冷静に対処する必要があるでしょう。これは、当然ですが鳩だけではなく、全ての野鳥について同じ条件だということは忘れてはなりません。特に鳩だけに留意すればよいということではありません。
ですから、飼っている鳥や保護している鳥、レース鳩、インコ、文鳥などがいる場合、それらをあわてて捨てたり、殺処分したりしないで下さい。今の段階(2013年4月)で、それらの鳥類から、インフルエンザに感染する可能性は、少なくとも日本国内では全くありません。
鳩と細菌類
ところで、そもそもどんな生物のフンにも、細菌や虫などがわきます。それは人や犬猫でも同じですね。鳩のフンには、クリプトコッカス菌が繁殖しやすいとか、サルモネラ菌がいるとか言われています。前者は泥にいる常在細菌、後者も鶏卵や鶏肉にまれにいたりする菌です。したがって、他の菌と同じく、抵抗力が弱っている人・状態では、危険が無いわけではありません。
ただ実例として、例えば多数の鳩がいる、神奈川県鎌倉市の鶴岡八幡宮の宮司さん・職員さんや、愛知県名古屋市大須の大須観音の関係者さんが、次々に謎の病気で倒れたりしていないところからしても、過剰に心配する必要はありません。
一方鳩は、野生のものですので、ペットの犬猫とは異なると考えられますから、何を食べているかわかりませんし、酸性雨にもあたっていれば、羽根にほこりが付いていたりもします。そのため、極力フンには触れないようにする、鳩と遊んだり、体にさわったら、手洗いとうがいをするなどのごく一般的な注意は必要かと思われます。またフンの片づけをする場合や、知らない間に巣が出来ていて、ヒナが巣立った後にそこを片づける時(ヒナや卵がある状態で、巣を破壊したり卵を捨てたりすることは、鳥獣保護法違反になりますので、決してなさらないで下さい)などは、マスクをし、手袋などの着用、次亜塩素酸ナトリウムによる消毒(「キッチンハイター」などで十分)を、一応おすすめします(ダニが巣材にいたりもします)。
いずれにしても、過剰に反応することは、正しい情報がわからなくなりがちなので、よくよく情報の内容は吟味するようにしたいものです(http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/bird_flu/manual/20101204.pdf など)。
2009年に、「豚由来の新形インフルエンザH1N1形」が流行したとき、「知のワクチン」という言葉がよく語られました。正しい知識を持って、冷静に対処することは、注射や薬に匹敵する「ワクチン」になりうる、という意味です。
根拠無く危険だ、と言ってみたり、逆に根拠無く安全だ、と言ってみたりするのは、それこそが危険なことだということになりますね。
鳩を含めた野鳥特有の問題
一言で言えば、「鳥なので、どこへでも自由に飛んでいってしまう」ということです。そのため、ウイルスを持っているかどうかの検査が難しく、事実上、対策がほとんどとれないというのが実際のところでしょう。
農林水産省・消費・安全局は、局長名文書で、2013年4月5日都道府県知事あてとして、「中国における鳥インフルエンザ(H7N9亜型)の発生に係る防疫対策の強化について」とした文書を出し、それには、「これまで検査の対象とされていなかったレース鳩及び伝書鳩に鳥インフルエンザの検査を行い、高病原性鳥インフルエンザ及び低病原性鳥インフルエンザの万が一の侵入時の早期摘発に万全を期する。」ため、「レース鳩及び伝書鳩」を対象に、糞便検査をする旨通達されており、もし見つかったら、その鳩舎の鳩を殺処分という意味のことが書かれています。これに呼応する形で、社団法人 日本鳩レース協会も、2013年4月8日の地区競翔連盟にあてた文書にて、「都道府県よりインフルエンザウイルス遺伝子検査への検体採取、提出の協力依頼があった場合には、これに協力頂くよう…」と、通達を出しています(http://www.jrpa.or.jp/info/tori-influ130408.pdf)。
ただ、私たちレース鳩に関係していない市井の人間としては、「果たしてレース鳩や伝書鳩に対してのみ、遺伝子検査をすればそれで良いのだろうか?」という疑問も残ります。
上に書いたように、鳥はどこへでも飛んでいってしまうので、むしろ野鳥全般がウイルスを持っているのかいないのか、持っているならどの程度か、ということのほうが重要なのではないでしょうか。管理された環境で「飼われている」レース鳩や伝書鳩を検査したところで、野鳥という母集団の正確な罹患率・ウイルス保有率の推定は困難ではないか、と考えられます。
一方、この動きについては、別の見方も出来得ます。つまり、中国の鳩からウイルスが検出されたので、中国のように食肉市場に鳩が出回ることがない日本では、ウイルス検査は、鳩が管理された環境で飼われているレース鳩や伝書鳩のほうが検査が容易で、ある程度の野鳥への感染率推定に役立つ、と考えた可能性です。
ただ、これとて、動物園の鳥と同じと言えば同じですし、連日監視をしているトキなども同じようなものではないかとも思えます。「鳩つながり」で、単純に「管理された鳩」を検査するという、「一つの流れ」ではないかという印象も受けるわけです。
とにかく、鳥の類はつばさがあるため、どこへでも飛んでいくことが出来、よって検査や正確なデータの取得が極めて困難で、ウイルスが検出されたところで、全ての鳥を殺処分するわけにも行かず、有効な対策が取れるのか未知数、ということが一番の問題でしょう。
残る疑問点
2008年冬から2009年初頭にかけて、抗インフルエンザウイルス薬「タミフル」が効かない、「耐性ウイルス」が日本で散発的ながら流行した、と報じられました。タミフルが、実用に供されたのは、日本では2001年からです。わずか8年ほどで耐性ウイルスが出現し、ある程度の広がりを見せるほど、インフルエンザウイルスの変異は速いと言えますが、だとすれば、例えばヒトの在来形インフルエンザウイルスが、ヒトの中で変異し、鳥に感染し、鳥の中で再変異して、ヒトに戻ってきて、亜形(基本的なタイプは同じでも、一部が異なるタイプの遺伝子を持つウイルス)が出来てしまわないか、なども、ウイルスの専門家ではない私たちには、残る疑問と言えます。
豚は、鳥インフルエンザ、ヒトインフルエンザの双方に感受性があるとされていますから、ヒト←→豚←→鳥の間で、遺伝子が混ざり合い、異なったタイプのインフルエンザウイルスが発生する危険も考えられます。事実2004年などには、北米・欧州で、それまでと異なるA香港形のウイルスが大流行したと報告されているようです。
上でも引用した東京新聞の記事(2010年12月3日朝刊社会面による)によると、2010年の11月から12月にかけて報告された、島根県安来市の、H5N1形鳥インフルエンザウイルスによるニワトリの死亡例は、「国や県は野鳥などの侵入の可能性を検討」している旨報じていますが、一方で、鳥取大学の伊藤寿啓氏の談話として、「(鶏舎の侵入防止ネットに)穴があったからといって早急に原因を結論付けられない」とも報じており、そもそも野鳥が鳥インフルエンザの運搬役に、どの程度なってしまっているのかどうかも含めて、現在報告されている知見では、まだいくつかの解明されていない謎が残っていることも事実です。それだけに、常に新しく正しい情報を入手し、予断無く吟味する必要があると言えるでしょう。
※2009.1.28.すぎたま記。2010.12.11.大幅改訂。2011.3.1.部分訂補。2013.4.24.大幅改訂。