2005年10月28日号

アサガオはいつまで?

 
  アサガオはいつまで?
 

 10月も終わりに近づいているこの頃だが、うちのベランダには、いまだアサガオが2株元気だ。
 1つは普通の西洋アサガオ。これは花の色が、極めて濃い紫である。未明の4時くらいから咲き始めて、天気がいいと、9時か10時頃までにはしぼんでしまう。そのため、夜更かしな私などは、なかなかきれいに咲いているのを目にすることはできない。
 しかしこの株は、花が小さくて、当初は500円玉を一回り大きくした程度だった。それに葉っぱをハダニにやられて、ちぢくれてしまい、一時はもうだめか?とすら思わせた。ところがハダニを市販の薬でやっつけたら、とたんに元気が良くなり、どんどんつるを伸ばして、毎日いくつもの花を咲かせ、夏からずっと、うちの人々の目を楽しませてくれた。花の数は多くて8個くらい、少なくとも2個程度は毎日のように咲いていた。
 そしてもう1株は、伊豆や鎌倉で見て、なんとか欲しいと思い続け、たまたま駅のバス停の前にあった花屋で見つけた「リュウキュウアサガオ」。これは宿根のアサガオという、珍しいものであって、うちに来て、大きな植木鉢に定植したとたん、驚くほど速くつるを伸ばし、ベランダの三分の一を日陰にするほどに成長して、毎日十数個から多いときには40個ほども花をつけていた。
 リュウキュウアサガオは大変な「水飲み」で、秋口に少し長めの旅行に行ったときには、その水やりを自動で行うために、大変苦労したが、何事もなく切り抜け、いくつか通過した台風すらものともせずに、今日まで順調に生育している。
 だが、私が不思議に思うのは、明らかに地上部より地下部のほうが小さすぎること、また、植木鉢の中をのぞいても、とっくの昔に土など見えなくなってしまっていることである。
 植木鉢に土が見えない…。それはつまり、植木鉢の中に無数の根がひっからまっているのが見えるということであり、いったい最初に定植するときに入れた土は、どこに行ってしまったのか?ということは、今や謎ですらある。
 まさかリュウキュウアサガオが「食って」しまったわけもないはずだが、そうでも表現したほうがふさわしいほど、土は見えないのだ。
 理屈の上では、植物全て、水耕栽培が出来るはずだから、肥料をやり続けている限り、土はいらないのかもしれないし、つるによって全体は支えられているから、これでいいのかもしれないが、どう見ても土は「消滅」したかのようである。
 それに西洋アサガオも、リュウキュウアサガオも、気温が10数度まで下がる夜もあるというのに、いっこうに弱る気配がないことも、不思議なことの一つである。
 街で、夏の間見かけたアサガオたちは、もう今残っている家など、まずありはしない。
 隣の駅の近所に、うちと同じようにリュウキュウアサガオを、門と塀にからませているうちがあったが、そこのが今も元気であるのを、確認した程度である。
 子どもがいると思われる家の軒先に、その子どもが夏休みに観察したような、アサガオ栽培セットの残骸が、転がっていたりする。もう秋は深まりつつあるのだ。
 ところが、リュウキュウアサガオにしても、西洋アサガオにしても、下の方の、弱って少しずつ黄色くなってきた古い葉っぱを取ってやると、今だに次々とつるを伸ばし、新しい花芽をつけ、毎日咲いている。リュウキュウアサガオで平均15輪くらいはコンスタントに咲くし、西洋アサガオでも数輪程度の花は、平気でついている。
 このマンション形建物6階の環境では、冬の間霜が降りたり、氷が張ったりということはほとんどない。稀にあっても、せいぜい一冬に1〜2回程度である。それほど都市は気温が下がらないわけである。
 とすると、「越冬」してしまう可能性も、ないとも言えない。西洋アサガオのほうは、なぜか11月に発芽して、冬を越えて咲き続けた話を、「冬のアサガオ」として書いたが、今ある株はその時の株ではなく、新しい株である。すると外での「越冬」は無理でも、部屋に入れてやれれば、軽々と冬は越えてしまいそうである。これはちょっと、アサガオという植物のイメージを、覆すものと言えるだろう。
 リュウキュウアサガオに至っては、もともと宿根草なのだそうだから、冬は根だけになって、翌春そこから新芽が芽吹くはずだが、今の様子だと、このまま地上部分が枯れてしまうのは、にわかに予想しがたい。するとどうなるのだろうか。
 そもそも土がなくなってしまったような植木鉢では、水が通ってしまうとか、肥料の効きが悪いとか、いろいろ不都合もあろうから、植え替えをしてやりたいが、地上部が枯れないで残った状態だとすると、どうやって植え替えたらいいのだろうか。太いつるで、ほとんどベランダと一体化してしまっているようなリュウキュウアサガオの、植わっている植木鉢のところだけすげ替えるなど、可能かどうか…。
 もちろん、今の状態が全く変わらず、何もなかったように「越冬」するとは思えないけれど、この先どうなっていくのか、予想もつかないだけに、逆に興味深くもある。
 これから11月、12月と寒くなっていったとき、アサガオたちはどんな振る舞いを見せるのか。うちの人々は、じっと見守っているつもりである。

※この作品が面白いと思った方は、恐れ入りますが下の「投票する」をクリックして、アンケートに投票して下さい。今後の創作の参考にさせていただきます。アンケートを正しく集計するため、接続時のIPアドレスを記録しますが、その他の情報は収集されません。

投票する