冬のアサガオ
今年の太平洋の海水温は、よほど高いらしい。12月だというのに、また台風が発生して、台湾のあたりを直撃していたりする。まったく現地の人々には、同情する次第だが、日本国内はどうもやっぱり、暖冬気味である。まだ冬は始まったばかりだから、今からそう言っていいものか、わからないが…。
うちのベランダ植物たちも、もう冬支度と思いきや、なんだか今年は様相が違うものがある。
今年の夏は、何年かぶりかでアサガオを育てたのだが、それは毎週のようにやってくる台風にやられそうになりながらも、なんとか花をつけ、タネができたりしていた。タネは、違う色や性質の花に、なってしまうかもしれなかったが、あまり株の負担にならない程度に、実らせてみた。そしてそれは「収穫」して、冷蔵庫に全て回収したはずだった。
しかし、どんなことにも、取りこぼしはあるものらしく、何と11月頃になって、そのアサガオのタネからと思われる、次の世代のアサガオの苗ができてしまったのだ。
秋にアサガオのタネを播いたことはないから、本来的に秋でも発芽するのかどうかは、わからないが、比較的高温なせいだろうか。
そのまま放っておくこともできない、うちの人々は、そのアサガオの新しい苗を、別の鉢に掘りあげて、1本立ちにし、とりあえず朝夕の冷え込みから守ろうと、部屋の中に入れた。小さな、申し訳のようにある出窓のところに、鉄線の支柱を立てて、それにつるを巻き付かせるようにして、置いてみている。
まるで、小学生だったら、「アサガオの観察日記」が、つけられそうな感じである。
東京は12月に入っても、特に厳しい冷え込みもなく、日中は25度近くになった日すらあって、低めの温度の日でも、13度くらいはあるようである。この25度近くの気温は、12月の気温としては、観測史上初めてだそうである。まったく、どこまで史上初めてが続く年だろうか…。
そんな様子だから、出窓のところに深夜から早朝の、寒い時間帯に置いておいても、特に問題なく、アサガオはするすると伸びている。その伸長速度は、存外に速い。やがて芯を止めて、脇芽を伸ばしてやらないと、出窓の上につっかえてしまいそうである。
さて、しかし、このアサガオはどうなるだろうか?。アサガオは、短日植物のような気がする。つまり、日が短くなり始めると開花するというものである。もっとも最近の品種改良で、その辺どのくらい厳密かは、ちょっとわからないけれど。
この先の日長の変化は、冬至が近いので、それから先は日が長くなっていく。もしアサガオが、日が短くなると開花する性質の強い植物だとすれば、花は咲かないかもしれない。
ところが、うちの人々は、遅くまで起きているので、出窓のあるリビングには、夜の長い時間、蛍光灯の光が灯っており、真っ暗になるということは、深夜までない。
蛍光灯の光と、日光では、まったく明るさが違うと言えるのだが、植物がその開花・結実などに影響する光の量というのは、ほんのわずかであると言われている。例えば、田んぼの近くに、街灯があると、その近所の苗は実りが悪くなることがある。それほど、わずかな光でも、植物は感知することができるわけである。
とすれば、夜ずっと蛍光灯の光が灯っていれば、短日も長日も無いのかもしれない。
他に目を転じれば、秋の植物であるアザミが、やたら元気である。一度は地上部が枯れそうになったりもしたのだが、単にそれは、花屋の流通過程で、冷気に当たって傷んだせいらしく、うちに来てからは盛り返し、どんどん伸びて、つぼみを3つほど出している。これまた、このところの高めの温度も手伝って、咲かなくはなさそうだ。しかも、アザミは宿根草だから、来年はどうなるのだろうか。このままひたすら次々と、花を咲かせそうな気すらする。
それと小田原の地下街で買ってきた、花タバコも元気だ。これもやたら花がたくさん咲いて、風の強い日だけ、ちょっと部屋の中に取り込んでやれば、元気にタネをつけたりしている。タバコのタネというのは、初めて見たが、非常に小さいものだった。直径が0.5ミリあるかどうか程度の。
喫煙用のタバコとは、かなり違うとは言え、こんな小さなタネが、一抱えもありそうな花タバコになるかと思うと、ちょっと信じられないほどである。
どうも今年は、花々もどう咲いて、どう枯れていいものか、わかりかねているようである。6階のベランダという、やや特殊な環境のせいもあるだろうが、それにしても冬のアサガオは、いったいどうなるのか?。果たして花は咲くのか?。非常に興味深いところである。 |