2003年9月5日号

片づかない部屋

 
  片づかない部屋
 

 どうも最近、自分の部屋が散らかっていて、片づかない。いや、片づいてないでがちゃくちゃに散らかっているのは、まあ、いつものことなのだが、荷物がいろいろ増えた気がする。
 そもそも私は、趣味の多い、またそれでいて、それぞれの趣味が、場所をとる性質の人間なので、広い空きスペースというものは、もともと望むべくもないという、困った性癖の持ち主である。
 趣味が多いということは、それだけ恵まれているのであろうと思う。しかし、アニメグッズ、鉄道模型の部品、実物電車の部品類、古コンピュータの部品に至るまで、そこらへんに転がっている有様ときては、もういい歳のおっさんなのだから、何とか片づけないといけないという気になる。
 片づけの基本は、「いかに捨てるか」に尽きると、やはり思うのだが、きっかけがないと、なかなか踏ん切りが着かなかったり、うっかり捨ててしまって、後で困ったりということもある。
 特に前は大事だと思っていたものが、だんだん価値観が変わってきて、「これは処分しようか」という気になることがある。そうなるとその時が「捨て時」だと思うが、最近はゴミとして捨てる以外に、オークションに出品してみるなどという処分法もあるものだから、これまた楽しめると言えば言える。
 そういった時間経過と共に、「処分したくなるもの」の最たるものは、今のところ、やはりアニメグッズである。
 アニメというものは、技術的に長い間、大きな進歩はなかった割に、多数の作品が作られ、本編のストーリーがあって、関連キャラクター商品があるのか、キャラクター商品を売るために本編があるのかわからないほどである。それも手伝ってか、自分の中での「流行り廃り」は、他のものに比べると大きい。
 それでいて「廃り」の境地に達するまでには、セル画と呼ばれる撮影のもとになる絵とか、それを作るための業務用の原画など、他人が持っていない、あるいは持っている人が少なそうなものを中心に、どうしても各種の雑貨等にまで食指が動いていた。
 そうしたものは、当然にして手に入れるのに金がかかるもので、高校の頃、手塚アニメに凝っていた友人から、「セル画だけは買ってはダメ」と言われていたのに、ついついそれにも手を染めてしまった。いくつか気に入った作品のセル画を集めまくり、時々クリアーファイルに納めたそれを、一人悦に入って眺めていたりしたものだが、セル画のような“マニアもの”を巡る「ウラの世界」も、少々かいま見てしまったような気もする。
 だが、そのようなセル画は、もう今後作られなくなりそうだ。それはコンピュータ技術の進歩で、ほとんどのアニメがCG処理となり、昔のように1枚1枚透明シートに、絵の具を塗ってセル画に仕上げる、という作業は、過去のものになりつつあるからだ。するとセル画集めという“趣味”も、必然的に過去帳入りするということになる。
 だが自分の部屋の片づけに話を戻すと、今既にあるアニメグッズについては、取っておくのか、それとも処分してしまうのか決めなければならない。これは全てのものを処分してしまうには、ちょっとまだ踏ん切りが着かないから、作品を絞って処分することにした。もともとある程度作品は絞っていたのだが、それをさらに絞るということである。
 さてアニメグッズやアニメセル画のように、ある程度消長のあるものはまだしもだが、鉄道関係グッズ、例えば電車の部品などというものは、多少資料的な意味合いも無くはない。これは今のところ、私が勝手に思っているだけであるが、ライフワークの古レール調査などでは、実物の資料がある程度は必要な時がある。するとレールの切れ端などというものも、比較資料としては、とっておかなくてはならない。
 鉄道模型にしても、自分で苦労して組み立てた車輌や、かなり手を入れた中古車輌、あるいは死んだ父に買ってもらった車輌など、思い入れのあるものは多い。するとこういったものについては、処分していくということが、当面難しいと考える。しかし墓場にもっていけるものでもないから、いつかはなんとかしなければならないだろうが…。
 結局部屋のキャパシティが決まっている以上、そこに入るものには限りがあるので、何かを増やすなら、他の何かは減らさないと、永遠にその部屋は片づかないばかりか、自分が入ることも出来なくなってしまう。

 私は子どもの時から、いろいろ集める趣味が、どうもあったようだ。遠い昔は、「雨どい」を集めていた。あの屋根に降る雨を地中に流すアレである。どうしてそんなものを集めていたのか、今となってはさっぱりわからないが、あの幾何学的なパイプの取り回しが、面白かった覚えがある。それで自分でもいろいろつないで、水を流してみたかったのかもしれない。
 子どもの頃からそういう具合だから、大人になって、小遣いがいくらか増えると、よけいに「収集癖」が高じてしまう。困ったものである。
 かくして今夜も私の部屋は、片づかない。少しずつ書類の整理あたりから、手をつけ始めてはいるのだが。
 キャパシティを広げるために、いっそ地方へ引っ越したらどうかとも考えたこともある。だが旅行するならともかく、そこに住むとなると、いろいろな要因が絡むわけで、あまり地方だと、ちょっと肌に合わないような気もするし、今の街から離れたことがないだけに、全く知らない土地に引っ越せるほどの、積極性はもうない。
 やっぱりこの部屋のもろもろを片づけながら、やっていくしかなさそうである。今日もちまちまと片づけをしながら、キーボードのまわり以外、まだまだ雑物があふれている部屋で、この作品を書いている。

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