2004年3月26日号

厳しい春

 
  厳しい春
 

 このところ、彼岸の前だというのにケヤキは芽吹くわ、桜は咲くわで、おかしな陽気である。2月にして「夏日」を記録した地方もあり、早春と呼ぶには、この都内もかなり抵抗があるほどだ。
 強い風が吹くかと思えば、突然また真冬の寒さにもどったりもする。なんだか天気の気まぐれが荒っぽい。
 私は冷え性っぽいから、暖かいのは助かるが、雪の多い地方では、雪崩の危険が大きくなったり、農作物にもいろいろ影響するから、喜んでばかりもいられない。
 このところの気候をみていると、もう少し「中庸」という線で行かれないのかと、天に問いたくもなる。本来東京のあたりでは、冬は晴天が多く、乾燥していて、早春は天気がやや不安定になる。強い南風が入ると、それが「春一番」になり、以後雨・曇り・晴れを周期的に繰り返すような天気になることが多かったはずである。
 今年はもう春何番だかわからないほど、大風が吹いている。まあしかし、電車に乗っていたりすると、咳をしている人は、目立って減った気がするから、その意味ではいいことなのだろう。インフルエンザやSARSなど、悪質な病気の気配におびえる現代人としては。
 これら天気が、年々「記録的」に激しいものになってゆく…つまりは妙に寒暖の差が大きかったり、暖冬傾向が強くなったり、大雨や大雪、大風といったことがひんぱんに起こるのは、おそらく地球規模での環境変化に起因するだろうと思われるが、何の影響がどこに出ているのかの詳細は、はっきりわかってない。
 ある海域の海水温が上がると、東アジアでは冷夏になるというような、断片的な傾向はつかめているけれども、なぜ海水温が急に上がるのかといったことは、あまりわかってないらしい。
 生態系のバランスは、実は相当微妙なのではないかと思える。例えばそれは、どこかの大きな森林を伐採すると、地球の裏側で異常気象になるとかというように。根拠は無いけれども。そうでもなければ、気象学者が日々研究しているのに、わからないことが多すぎる気がするし、そもそも天気予報があんなに当たらないはずもないのではないか?。
 私がかつて学んだ作物学では、おおむね一枚の畑や田んぼのことを考えていれば、ことは足りたと、極言してしまうこともできるけれど、気象が地球の諸環境と大きく関係があると考えれば、気象学は、今の研究レベルよりも、もっと「環境変化の連鎖」を考慮した、高いレベルが要求されているのでは、と思う。無論、その高次のレベルとは、具体的に何か?ということまでは、よくわからないとしか答えられない、無力な私だが…。
 今週に入って、いきなり天気は低温、雨と雪というような按配である。桜はの開花は遅めに移行して、ゆっくりつぼみを開かせているが、その上に雪が積もるのかとすら、思わせるものがある。ちょっと花見というには、空模様・気温ともに、苦しい感じがするほどだ。ここに来て体調を崩す人もいるのではないだろうか。
 今週の天気予報では、ずっと天気は良くなく、曇りもしくは雨のマークが並んでいる。傘をさしては、花見はできないようなものだから、今年の桜見物には難儀しそうだ。
 うちには、「ウォークインクロゼット」などというしゃれたものはないので、外出の時に普段よく着るコートなどは、壁に掛けっぱなしである。見た目はあまり良くないが、誰に見せるわけでもなし、面倒が無くていい。ところがここにかけている厚手のコート、それに皮のジャケット、そして春用のウールジャケット、いずれも1日ごとにめまぐるしく変わる天気と気温のために、どれもしまえないでいる。本来もう、厚手のコートは、洗濯に出したいのだが、春先の「厳しい」気候は、当分それを許してくれそうにない。

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