キキョウはなぜ伸びないか

　このところ、キキョウの花鉢を、毎年買っている。キキョウの紫色の花が、うちの人のお気に入りだからだが、本来キキョウは宿根草なので、うまく育てれば２年目も３年目も、花が咲くはずなのである。
　しかし、毎年買っているということは、あまりうまく育っていないということ。どうも、水やりが不適正なのか、肥料のやり方がうまくないのか、順調に生育する株と、そうでないのとがある。同じ日に複数買った株でも、そのような現象が見られる。
　最近のキキョウを見ていて、不思議なのは、どれもやたら背が低いことである。
　キキョウ本来の姿からすれば、草丈は４０〜５０センチ位になるはずで、昔はそんなものばかりだったような気がするのだが。
　最近のキキョウが、背が低いというのは、品種的にそうなのか、それとも矮化剤をかけるなどして、小さく作っているのか、どうもわからない。市場のニーズがそういうものなのだろうか？。
　通常、矮化剤などで処理したものは、もともと大きく育つものを、薬で低くしているのだから、植えて２年目になれば、その薬の効果は切れ、もとの大きさになるはずである。ところが、ここ数年売っているものは、そういう様子はなく、２年目になっても、草丈が低いままというものが多い。
　うちには現在、何株ものキキョウがあって、その中には２年目、３年目になるものもある。生育不良になると、株ごと差し替えをしたりするので、いろいろな背の高さのものが混じっているが、２年目でキキョウ本来の高さに戻ったのは、わずかに３株のみである。残りは全て背が低めだ。もっとも今年買った株もあるから、それらが来年どうなるか、そもそも来年まで順調に育つのかは、今の時点ではわからないのだが…。
　しかし、これら背の低いままのものは、どうも品種的にそういう品種として作られ、市販されているのではないかと思える。そうでなければ、いくら最近の技術が進歩したと言っても、何年もの間、植物の生理的反応である生長を抑制するような薬が、開発されて実用されているとは思えないからである。実際にそんなものが作られたり、使われているとしたら、なんだか背筋が寒くなるような薬だろう。
　そう考えると、やはり草丈が低い品種というのが、あると考えるのが妥当な気がする。
　昨今、ガーデニングばやりだから、ちょっとした庭やベランダなどで、ちょこちょこっと作るには、植物全般、小さい株のものが好まれるのだろう。花屋の店頭に出されて、売られているもの全てが、何となく、「小さく、低く」なったような気がする。一昔前の花屋は、もっと大きな植物だらけだったような記憶があるのだが…。
　確かに、手軽にいろいろな草花を楽しめるというのが、悪いことだとは思えない。多種多様な草花を、少しずつたくさん育てたいというニーズは、当然にしてあるだろう。かく言ううちだって、そのようなものである。やたら木が多いわが家のベランダでも、その時々で、松葉ボタンが植わっていたり、プリムラがあったり、「断崖の女王」という、謎の厚葉植物が、ちんまりとあったりするのだから。
　だが、キキョウだけは、うちの人々のこだわり？として、昔っぽいものが欲しい。今風の草丈が低いものではなく、するすると伸びて、風にそよぐようなものを。ところが、どこの花屋を探しても、そんなキキョウは売っていないのだ。多少の差はあれ、どれもせいぜい２０センチ台の高さしかない。これを育ててもいいのだが、翌年大きく育つかどうかが、３つの要素で賭けになってしまうとすれば、どんどん買って試してみる気には、まあなりにくい。
　３つの要素とは、品種的に低い品種かもしれず、もしそうなら、翌年も同じであること、２つ目は、矮化剤で小さくなっているとしても、どのくらいでその効果が切れて、もとの大きさになるのか不明。３つ目は、そもそも２年目を迎えられるか、主に根の伸長をうまくさせられるかどうか、うちの人々の技量が不安…ということである。
　そのため株の更新は、あまり躊躇せずに行うようにしているが、そうは言っても、花も命があるわけで、ないがしろにはできない。
　現在の市場ニーズからすれば、背の低いものが好まれるのであろうが、この多様化の時代、それだけしか生産されないというのも、時代に逆行している気がする。少量でもいいので、普通の昔ながらのキキョウも、生産・流通させて欲しい。流通段階での扱いが、背丈の高いものは難しくなるという問題や、ニーズが少ないので、コスト的に競争力が低いとかいう問題もあるかもしれないが、そこをなんとかして欲しい。
　今日もキキョウは、ベランダで紫色のしっかりした花を咲かせているが、もう少し野生っぽいキキョウならな…と、そんな思いもよぎるのである。