2005年8月26日号

夏の植物たち

 
  夏の植物たち
 

 去年の夏の気候は、大変酷暑だったと言えるのだろうが、今年はそれほどでもなさそうだ。梅雨明けは、少なくとも都内に関して、平年並みに近かったし、その後の気温や雷雨の状況なども、さほど異常は感じない。もっとも太平洋の高気圧の張り出しは、偏っているらしく、東風が入って、短時間に非常に強い雨が降ったりはしているが…。
 そんな中、わが家で毎年育てている「オオケタデ」の生育は、悪くはないのだが、どうも草丈が低い。大きくなるときには、2メートルにもなって、ベランダの天井につきそうになるほどなのに、今年は私の背丈より少し低いのではないか?、というレベルである。どうもこれまでで、一番低そうな気配である。
 しかし、水は相変わらず「がぶ飲み」で、朝昼晩と1日に3回も、1リットル程度の水やりが欠かせない。まあ、例年より小さいとは言っても、人の背丈近くある、そして横にも大きく広がる植物体の隅々まで、水を行き渡らせるのだから、その必要水量は、かなりに上ることは、想像に難くないが。
 オオケタデには、毎年初夏の頃から、花が咲いて実がつき出すと、カワラヒワがやってくるようになる。ところが今年はこれが遅く、ようやく7月の下旬近くなってから、頻繁にやってくるようになった。どうも理由ははっきりしないが…。
 考えられる理由としては、このところ近所にマンションが建ち、それに続いて、そばの公園の整備工事や、そのマンションの後ろにもう一つマンションを建てる工事などが、延々と続いていて、騒々しく、また鳥が止まれるような木々が、工事で根こそぎ切られてしまったり…ということがある、もしくはあった。これらは鳥たちにしてみれば、生活しにくくなる要因だろう。
 ただそれだけが原因でもなさそうで、一度覚えてからは、例年のようにやってきているのだから、オオケタデの草丈が低いことも、影響していると考えられる。ベランダには、手すりと半透明なフェンス状の目隠し板が、取り付けられているので、その内側に入ってしまう枝は、外から見えにくいからだ。
 今年は春先に小雨だったこともあり、あまり全体に生育がよくなかったのだろうか?。水やりを十分にしていても、葉っぱに雨が当たらないというのは、やはり生育に影響するような気もする。それはハダニがたくさん繁殖して、葉っぱを弱らせるというような、生育障害のもとともなりうる。やはり、マンション形建物の6階という条件は、植物を自然に近く生育させるには、あまりよいとは言えない。

 一方今年は、水をがぶ飲みする植物に、「リュウキュウアサガオ」が加わった。これはアサガオでありながら、宿根草であるのがミソである。
 生育は早く、買ってきて、ヒモをベランダ手すりから天井近くに向けて張ってやると、するするとつるが、それに巻き付いていく。そうしてたちまち、緑の壁のようにベランダの半分近くを覆い尽くした。
 これは、意外なほどの生育の良さであるし、花もたくさん毎日ひっきりなしに、多いときは40輪も咲く。その景色はなかなかに美しく、また植物としてのパワーにあふれている感じが、とても力強く思える。それに、その緑の壁の内側は、とても涼しい。
 今年は世間で「クールビズ」なるものが流行っており、ラフな格好で仕事をすることで、オフィス・エアコンの設定温度を上げて、「温暖化対策をしましょう」ということらしいが、人はともかく、パソコンが熱暴走して使いものにならなくなったりという、困ったことというか、妙な副産物というか、そういうことも起こっている。
 文明が進みすぎて、便利になったら、地球が暖まって、オフィスは冷えすぎになり、それはまずいと、オフィスを冷えすぎないようにしたら、文明の利器であるコンピュータが暖まってしまうという。まったく皮肉なものである。
 だが、うちの様子を見ていると、リュウキュウアサガオの「緑の壁」があるのとないのでは、かなりその内側の気温が違っていることに気付く。とすれば、このように植物で太陽光を遮断するだけで、相当な熱線遮蔽効果が期待できそうだ。事実、去年はやったベランダの打ち水は、今年まったくと言っていいほどやっていない。これは、今年の気温が、去年ほどには高くないこともあろうが、やはりリュウキュウアサガオが、日光とその熱線を遮ってくれているからに、ほかならない。いっそビルには、低層階だけでもアサガオなぞ、はわせたらどうなのか?。
 それにしてもリュウキュウアサガオは、それほどまでに大きいわけだから、これまた水は大量に必要である。1回に2リットルくらいを、朝晩。天気の状態によっては、昼も1リットルくらい足してやらないとならない。これらの水を、台所や風呂場からくんでくるのも、一苦労である。
 もっとも「緑の壁」は、植物体の細胞の中が、人間と同様に水で満たされているわけだから、「水の壁」ということなる。そうであれば、大量の水が葉っぱから蒸散し、その分根から吸い上げられ、土が乾く…という流れは、当然のものであって、その流れの中、気化熱の要領で、内側の熱を冷ましているのだ。
 オオケタデ、カワラヒワ、リュウキュウアサガオ。都会のマンションベランダでも、「生き物」の存在感は、やはりわれわれを和ませてくれるものである。

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