2005年7月1日号

督促状

 
  督促状
 

 私は長年、某携帯電話会社を利用していて、毎月お金を支払って、既に長期割引にもなっていている。契約したのは、覚えていないくらい前なので、おそらく8〜9年前ではないか?。ちょうどそのシステムの携帯電話ができたばかりのころで、今のエッジなどの原型になったシステムである。
 ところがこの会社は、最近利用者が少ないようで、各地でサービスをやめたり、他の会社に事業譲渡をするようになってきて、サービス内容自体も、お寂しくなって来ていたから、そろそろ何か考えなければならないかな、とは思っている。
 さて、そんな矢先、春に引いた風邪が長引いて、調子の悪い日といい日が交互にやってきたりしていたところ、この電話の料金支払いが遅れてしまった。この部分は全く私のほうのミスであるから、遅れたことには違いがない。それは認めた上で、一言言いたいことがある。
 まずこの会社は、月末までに支払いをすることになっているのだが、請求書が届いてから、銀行などの営業日にして、8日くらいしか猶予がない。
 私ら自営業では、お金の支払いを、全て口座引き落としにすると、お金の流れが見えなくなってしまうため、仕方のないもの以外は、いちいち伝票で支払う「窓口納付」の形を取っている。これは原始的だが、いついくらどこに支払ったかがわかってよい。また安心でもある。
 しかし、数日おきに、いろいろな請求書が届くので、ある程度まとまってからでないと、支払いはしないし、手数からしてもできない。そのため稀にではあるが、指定期日を過ぎてしまうことがある。そういうときは急いで支払いに行くので、特に問題は生じない…はずであった。
  それとここの会社は、支払期限が、請求書の、郵便局や銀行に持っていく部分に書かれていない。そのため、送られてきた請求書の、窓口に出す部分のみを切り離してしまうと、いつまでに支払わなければならないか、わからなくなってしまう。
 これは他の公共料金でも、同じタイプの請求書というのがあるけれど、多少支払いが遅れたところで、あとに書くような問題は生じない。
 では、この会社の問題とは何か?。それは、支払いを忘れたとして、1週間くらい経つと、いきなり何の前触れもなく「督促状」と書かれた書面と、その下半分が支払伝票になった書類が来ることである。
 最初の請求から、わずか15営業日程度ですぐに「督促状」…。この神経は、なかなかすごい。
 毎月ずっと支払っていて、一度も踏み倒したりしたことはなく、長期の顧客のつもりでいるこちらとしては、「督促状」なるものを受け取るのは、いい気持ちはしない。
 そもそも他の会社で、最初の請求から15営業日程度で、いきなり「督促」をしてくる会社というのは、見たことがない。
 前のことになるが、うっかり他の請求書に紛れて忘れていた電気だかガスだかの料金は、1ヶ月後に「お納めでしょうか?」という書面といっしょに、新たな請求書が送られてきた。行き違いに支払ったあとになったが…。
 自動引き落としでも、某国営放送は、「引き落としができませんでした。来月の○○日に再度引き落としをさせていただきます」とあった。この時は、不祥事に怒って、抗議の意味で、わざと1月遅らせたのだったが…。
 こうしてみると、どうもこの携帯電話会社は、特異的に「いきなり督促状」方面のようである。他の携帯電話会社がどうなのか、詳しく知らないが、他はともかく、ちょっとこの書き方は、トゲがあるのではないか?。
 携帯電話の不正使用とか、不正入手や犯罪がらみの話はよく知っている。だから、料金回収には厳密を期する気持ちはよくわかるし、正直にお金を支払っている人に、バカを見させないためにも、きちんと料金請求はするべきだ。それには賛成するが、請求書の送りかたや、その文言については、もう少し心のある言い方はできないのだろうか。その語彙の狭さ具合が気になる。また、物理的に余裕のなさ過ぎるスケジュールも、あまりに不親切ではないのか。
 給与所得者の人々は、毎月月末までには、定期的な収入があるから、それにあわせて請求すればいいかもしれないが、自営業の人は、最初から眼中に無いかのような、マニュアル的な対応と言わざるを得ない。
 それと、私がもう一つ気になるのは、携帯電話というのは、今やコミニュケーションツールの一つ。会話にしても、メールにしても、その交わされる通信の内容は、とりもなおさず「言葉」である。その言葉のやりとりを仲介することで成り立っている会社なのではないのか、携帯電話会社というところは。そのようなコミニュケーション促進企業とも言うべき会社が、1月も遅れたわけでもない顧客に、いきなり「督促状」という、きつい表現の書面を送りつける神経というのは、私の理解を越えている。もう少し表現のしようはあるのではないか?。
 まあしかし、語彙が狭いのであろうなとは思うので、例をいくつか示すと、まず15営業日を過ぎても支払いがないとして、最初に送るのは、「下記のお支払いはお済みですか?」くらいにしてもいいのではないだろうか。それでも1月なりなんなり、会社で決めた期限までに支払わない人には、はじめて「催告」とかという言葉を考えてもいいとは思う。1月も経たないうちから、いきなり「督促」とは、穏やかでない気がする。
 どうも、この世は、人に使う言葉について、配慮が足りなくなっているのではないか。そうしたことが、無用な誤解を生む原因になっていると感じる。毎日のように殺人事件が起こる、恐ろしい世の中だが、それとて一部は、言葉を尽くして話していれば、そこまで行かなかったのでは?と思う例が、無くはない。
 そもそも人は「言葉」を獲得した生命体である。地球上にそのような動物は、ほぼ皆無と言っていい。ならばなぜその言葉を、人は大事にしないのだろう?。ことに「言葉」を伝えるはずの企業がこのありさまでは…。
 今回の騒動は、この会社に要望としては出しておいたが、どのくらい反映されるのか、社内のことなので何とも言えない。しかし、遅れはしたものの、私がお金を支払った日と、会社が書類を発行した日は、同じ日だった、つまりは行き違いになっていたということは明記しておきたい。
 「言葉」を伝える企業であるA社には、社長以下、「言葉」遣いを勉強し直すことをおすすめしておきたい。

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