UR都市機構による強制退去の法的措置とその不当性について続き


<家を探す>
 さて、URが「もうおまえらには家は貸さない」と言っているわけですから、別な家を探さなくてはなりません。楽しい楽しい家探しの始まりというわけです。
 さしあたり決めなければならないのは、賃貸か、持ち家か。マンションか、一戸建てか。中古か、リニューアルか、新築か、というようなこととともに、「目的エリアをどこに設定するか」でしょう。
 当初は、とりあえず近くの賃貸マンションなどに一時転居し、そこからもう少し時間をかけて本格的に探すなどということも考えました。しかし、それは引っ越しなど二度手間ですし、あまり得策とも思えません。また、頭はしっかりしているものの、高齢には違いない母のことを考えると、何度も環境が変わることが好ましいと思えず、なるべく元気で長く生活し続けられることが大事なので、転居問題は一発で終わらせたいとも思いました。
 そこでまずは、新聞のチラシ、ネット、看板が出ているところなどは直接行ってみる、不動産屋に登録して情報をもらうというように、「網を張ること」から始めます。また当時の友人に、不動産屋に勤務している者がいたので、その友人の意見も参考にしました。
 転居することを、だいぶ前から一応真剣に考えていたことは、既に書きましたが、賃貸に住み続けるつもりなのか、持ち家にするのかすらはっきりとした方針を決めていないなど、そのあたりのイメージはいかにも漠然としたものでした。しかし、そんなことは言っていられなくなりましたので、少しずつイメージを絞り込むこんで行くこととしました。
 前年夏の旅行時に、西伊豆・松崎町の不動産屋さんには、既に登録してありましたので、再度そちらにも「何かいい物件は無いか」問い合わせるとともに、近くの不動産屋さんに登録をします。幸い小田急線沿線ですから、「小田急不動産」の支店は経堂にもあります。そういったところに登録をしますが、得てして不動産屋さんは、超高速で紹介したがるものなので、「そう簡単には決められないので、夜討ち朝駆けのような営業はしないで欲しい」旨は、きちんと伝えておく必要があります。そうしないと、へたをすれば朝の8時過ぎからじゃんじゃんと電話が鳴り、FAXがガーガーとうなりを上げることになります。
 登録関係は1件ではだめで、数件は登録しておいた方がいいようです。実際浜田山の路上でマンション販売のチラシを配っていた業者や、小田急不動産2カ所、友人筋の不動産屋さん、その他に登録しました。

 浜田山の不動産屋さんには、いろいろな「ちょっと風変わり」な物件も出ています。また小田急不動産の広告も店頭に行って見ました。

不動産屋広告の例

 まずは箱根の売り別荘。生活圏として問題が無ければ、こういう物件を買うのも手ですので、一応考慮には入れました。特に悪くは無いと思いますが、壁が延長した形に描かれているのはなぜでしょうね。立地がどうか、また気候は都内よりずっと寒いところなので、そのあたりがどうか、周囲の様子をよく確かめる必要があるケースかと思います。

不動産屋広告の例

 新築です。経堂からそう遠く無く、各部屋とも南面しており、そこそこ良さそうです。こういう広告をよく見て、自分たちに必要な家の広さ、土地の広さ、部屋の数などをイメージしていきます。

不動産屋広告の例

 浜田山の不動産屋さんにあった賃貸物件の広告から。賃貸で割と広そうなメゾネットでも、杉並区浜田山なら、218000円で借りられるという例です。91.90平方メートル。66平方メートルで175000円くらい払うのと、どっちが得か…。UR団地のアドバンテージは無さそうですね。

不動産屋広告の例

 高井戸駅と浜田山駅の真ん中あたりにあるタウンハウスの例。ペット可です。これで198000円の賃料です。あまり部屋は広くはないものの、UR団地よりはずっと広く、「ペット相談」を始め条件は良いです。

不動産屋広告の例

 3LDKの賃貸メゾネットの例。79.47平方メートル。フレール西経堂近くの売りマンションより少し広いくらいの広さということです。これで賃料225000円。高く思えますが、駅から近いためでしょう。ピアノ可の物件がやや多く感じるのは、どうしてでしょうね。近くに音大があったりするわけでも無いと思うのですが。駐車場付きというのも、人によっては重要な条件でしょう。

不動産屋広告の例

 高井戸駅近くのテラスハウス物件。178000円ですが、これはそれほど広くありません(71平方メートルちょっと)。しかしフレール西経堂と同等な賃料で、片や駅遠団地、片や駅近テラスハウス。当然周辺環境などがかなり異なるので、単純比較は出来ないとしても、今までいかに「情報弱者」だったか、考えさせられてしまいます。
 結局、このような物件広告を参考に、また友人の意見などを聞きますと、この時点での当家が要求する「住宅の性能」は、
1.少なくとも今より広く、マンションなら75平方メートル以上、一戸建てなら土地120平方メートル以上
2.集合住宅よりできれば一戸建て
3.中古と新築にはこだわらない
4.賃貸よりは持ち家
5.今の生活環境(特に利用商店や医院など)を大きく変えてもかまわない
6.予算の概算。賃貸なら毎月の家賃上限(22万円くらいまで)、持ち家なら希望価格(おおよそ4000万円から5000万円に設定)
…といったところであることがはっきりしてきました。今後これらの条件は、少しずつ変化していくことになりますが、その時点時点でまとめてみることは、重要なことと思えました。

 この時期見に行った中古分譲住宅見学の例をご紹介します。現在この物件は、現存しておりませんので、紹介に問題は無いと思います。

中古物件外観の画像です

 手頃ではあった中古物件の外観。おおよそ右側が南側。1階は窓を少なめにしているが、2階には大きな窓を設けて採光面を考慮しているようです。手前が広めの道路になりますが、歩道が無いので、頑丈そうなコンクリの壁が設けられています。

中古物件外観の画像です

 建設時は小さかったのだと思いますが、築年とともに大きくなったと思われる木。玄関前にありましたが、手入れが少々大変かもしれません。

中古物件外観の画像です

 玄関真上にある不思議な形状のバルコニー。こういう「遊び要素」がある家は、面白いものですが、使いやすいのかどうかまではちょっとわかりません。

中古物件外観の画像です

 玄関(下)と2階バルコニーの関係。この物件は、外に柱が見えない設計のようです。

中古物件内装の画像です

 オープンハウスでしたので、中も当然見ます。玄関から入ってすぐ目に入るリビングダイニング。入って直接キッチン方向が見えるというのは、使い勝手というか、心理的にどうなのでしょう。

中古物件内装の画像です

 2階から見下ろすと、玄関が丸見えです。三角形の玄関はちょっと面白いです。

中古物件内装の画像です

 外に柱を出さない設計なのか、リビングダイニング部には、鋼製の柱と思われるものがあります。じゃまになりませんかね…。

模型の画像です

 なぜか模型がありました。これは珍しいと思います。直方体の中に立方体が2つ詰まったような形状であるのがわかります。意欲的な設計とは思いますが、自分の持ち家としてはどうか…。

物置の画像です

 1階の和室奥には、ごく普通の物置がありました。これも物件に含まれるようですが、ここにはこだわりが無いわけです。

内装の画像です

 増築という説明を受けた、1階の玄関から見て右側にあった和室。暖房は床面からの吹き出しにも見えますが、どうなのでしょうね。左側に細めの柱が立っているようです。4畳半くらい。

内装の画像です

 1階から見上げた2階吹き抜けと天井。防寒には弱そうなのと、猫などのペットには危険かもしれません。

内装の画像です

 謎の内窓障子。これが増築などの結果なのか、元からこういう「お遊び」なのか、今ひとつわかりません。面白いとは思いますが、猫なんて飼っていると転落が怖いですね。うちにはいませんが、子どもさんも同様です。上部のギャラリは冷房の吹き出し口でしょうか。

階段の画像です

 2階へ上がる階段です。踏み込みはまあまあ十分あるかと思います。無理した設計ですと、これでかかとが出てしまうような階段の家もあります。ここは一応合格と思いますが、実際に購入することを考えると、こういうところに目を配る必要はありそうです。

2階個室の画像です

 2階の個室は、やや高めの窓が付いています。隣家が(から)よく見えてしまうので、ロールカーテンが既に付いているようです。

バルコニーの画像です

 バルコニーを室内から見たところ。室外機置き場くらいにしか、使えないと思います。鉢植えなどを置くには日当たりが悪すぎます。窓にはもちろん網戸が付いています。

2階からの景色の画像

 2階からの景色。道が通っているせいか、隣家も丸見えで、あまりいいとは言えませんね。車もうるさそう。

屋根裏収納へ上がるはしごの画像

 屋根裏収納があります。問題は、これに上がる時、片手に荷物を持ってがせいぜいで、両手に荷物では、とうてい怖くてこの階段は上がれないことです。鉄道模型のレイアウト(ジオラマ)を、この上に作る人がいますが、今のうちはよくても、将来年齢が上がってきて、体が思うように動かなくなった時どうするのか、真剣に考えてないのでしょうね。当然、ジオラマがあるか無いかに関わらず、実際に屋根裏収納というのは、固定的な階段でもないと、ほとんど活用出来ないと思うのですが。特に高齢になった時困ると思います。死後片付けてもらうものばかり置いておくなら別ですが…。

ウッドデッキの画像です

 1階の一部にウッドデッキがありました。狭くてせいぜい物干し程度ですが…。ウッドデッキは、その下の湿気が問題になることがあり、あまり地表面に設けるべきものではないのかもしれません。また、ここを「物干し」と考えても、この奥側に見えているフェンスの向こうは、道路であることを考えると、そもそも洗濯物の外干しが可能なのかという疑問も生まれます。

 とまあ、中古物件の見学もしてみました。これは一つの例で、他にもいくつもの物件を見ましたが、「これはいいな」という気持ちになるようなものは、探している価格帯ではほぼありませんでした。

 とはいえ、まだこの段階では、あまり絞り切れてないのも事実ですので、浜田山駅近くで営業活動をしていた不動産屋さんに、神田川近くの低層マンション物件に「売りに出ているものは無いか」訪ねたり、その不動産屋さんが売っている物件のパンフレットをもらったり、近くのマンションを見に行ったり、オープンハウス(日にちを決めて、空き家の物件を内覧させる営業方法)になっているところを見たり、不動産屋さんの案内で、三鷹市牟礼の物件を見に行ったりということは、積極的にしていました。何しろ、御用弁護士が設定した期限は、6月末なので、あまり時間をかけてもいられません。中には神田川近くの物件を照会したところ、「建築基準法違反物件」なのでと、案内を断られたりする一幕もありました。
 一方で、遠方の物件はどうなのか、ネットを中心に検討しました。つまりネットであたりを付け、その地域に強い不動産屋さんにネット上から登録。そうするとたいてい電話がかかってくるので、こちらの条件を伝えます。遠方であるということは、意外とメリットが大きいです。例えばそれは「安い」。
 別に当家は、通勤する仕事をしていないので、駅から遠くても、東京から遠くてもいっこうにかまいません。伊豆・松崎でも良いとしたのも、そのような理由によるものです。これは「まれに見る好条件」であると、不動産屋勤務の友人から聞きました。

遠隔地のマンション広告

 東京から電車で1時間くらいの距離まで離れれば、マンションの一室もこの位の広さでこの値段という例です。ただ、管理費が月額39747円、修繕積立金16561円と、それなりの金額がかかります。これは持ち家の一種なのに、家賃のごとくかかるお金として、集合住宅では避けられない支出になります。それと、この物件では、築年が「昭和63年」とやや古いのも気になります。

遠隔地のマンション広告

 これは同じような場所にある、低層マンション物件の広告例です。価格は都内よりかなり安めですが、狭いのが難点。ただペット可、管理費が比較的安いなどの特徴があります。
 この種の集合住宅系の管理費と修繕積立金は、無視できない問題です。もちろん、一戸建てでも修繕はしていかないと、すぐに老朽化が起こりますので、常にある程度のお金は用意しておく必要があったり、管理会社に任せられないために、全てが自己責任の世界であったりと、集合住宅系が一概に条件良くないとまでは言えませんが…。
 それでも試しに、上の物件の管理費と修繕積立金が年額でいくらになるのか計算してみます。
39747+16561=56308円。それが12ヶ月で675696円。20年住むと(途中で値上がりなどが無いとして)実に13513920円。20年で1300万円を超える金額とすると、一戸建ての管理や修繕にかかるお金の20年分と比してどうなのか。これはかなり迷いを感じます。
 ついでに下の物件だとどうか。
16400+17340=33740円。12ヶ月で404880円。20年で8097600円。20年だと上の物件より500万円ちょっと安いですが、やはり800万円を超える金額です。
 この管理費と修繕積立金の関係は、正直集合住宅の購入に強いためらいを感じる理由の一つになりました。さらにそれは、一戸建ての優良な物件が少ない都内から離れた方がいいのではないかという思いも強くしたのです。単純に、「鳩に餌やったから出て行け」と言われる集合住宅の、最近の窮屈さにうんざりして、もう「集合住宅は選びたくない」と思ったこともありますが…。
 また築年数が古い中古マンションは、今後修繕をどうするのか、管理組合がどのレベルで機能しているのかということも心配です。
 それらを総合的に判断すると、まず賃貸・持ち家ともに集合住宅系は原則選択しない方針に転換することになりました。
 これで上にあげた当家の条件は、
1.一戸建てで土地120平方メートル以上・建物100平方メートル以上
2.中古と新築にはこだわらない
3.原則持ち家
4.今の生活環境(特に利用商店や医院など)を大きく変えて、遠方でも良い
5.予算の概算はおおよそ4000万円から5000万円として探す
…というように変化していきました。

 それと、話は多少前後しますが、2010年末頃、近くの「元億ション」が6000万円台で売りに出たことがあり、空室だったので内覧したことがありました。隣家は著名人というようなマンションでしたが、内覧ですから、当然カギを預かっている不動産業者の営業マンと共に行くわけです。
 その物件は、さすがに元億ションというだけあって、トイレが臭い以外は立派な内装とプライバシーなどに配慮した造りには感心したのですが、やはり昭和末期築なので、仕様がバブリーなことや、実生活としてはバルコニーが狭く、外に洗濯物を干したり、ベランダ園芸をしたりというようなことはいっさい考慮されていない、その後の震災で実性能が大幅に低下したオール電化など、設計に疑問点が多く、内覧を終えた時点で同行の営業マンに「ダメ出し」をしたのですが、営業マンは食い下がってこう言うのです。
 「家は夢で買うものですよ!」
 えっ!?。そんな霞のようなもので買うものでしょうか?。不動産業の友人は、「それなら『夢売ってやるから家よこせよ』とでも言ってやれよ」と言うのでした。その友人との話でも出たのですが、家を買うというような「行為」は、もっと「泥臭い」ものを含むのではないかと考えます。
 それはつまり、家族が認知症に陥れば、壁や床は汚れてしまうかもしれないとか、病気が進めば、孤独死もありうるというようなことです。家というのは、そういう家族に発生する全ての問題を包括し、なおかつ外から守るという機能を持っていると言えるでしょう。それを「夢で」なんていう観念的なもので、買うことは出来ません。
 こういうことをさらりと言うので、不動産屋の営業マンは、よくよくの人でないと信用できないというか、頼れない部分があると思った方がいいようでした。
 家は夢で買うものではありませんが、いつまでたっても自分のものにならず、改築なども自由で無い賃貸住宅というのも、今時えらく不自由だと思えたので、基本的に賃貸住宅の線は外して考えることにしました。
 この時点での当家の条件は、
1.一戸建てで土地120平方メートル以上・建物100平方メートル以上
2.中古と新築にはこだわらない
3.持ち家に限る
4.今の生活環境(特に利用商店や医院など)を大きく変えて、遠方でも良い
5.予算の概算はおおよそ4000万円から5000万円として探す
…となったわけです(まだあまり絞り込めていませんね)。

 さて、いい加減どこにするか、というのを決めなければなりません。あまり悠長に探してもいられませんし。
 生活をする上で、一番問題なのは、実はその街が機能的か、ということなのではないないかと考えました。つまりかかりつけ医や病院が近いとか、買いものに便利とか、そういうことです。当家は、通勤仕事ではありませんから、都心のどこそこまで通勤何十分ということを考慮する必要はありません。ただ、たまには都心方向に買いものに行きたい場合があるだろうから、都心に行かれないほど遠いというのはどうか、ということはありますね。
 一方、まるで生活圏を変えてもかまいませんが、気候的にあまりに厳しいところ(極端に寒いとか)や、文化圏が違いすぎる(例えば関東人なので、関西地方とか。または町内会の役員を引き受けないと村八分にされてしまうとか)ところは、生活そのものがストレスになりそうということも無視できません。特に高齢者がいる場合は、極端な環境の変化は、いろいろな意味でよくありません。
 そう考えると、商圏としての機能が低下したと思える経堂町周辺は、原則外して考えていいということになります。他方、西伊豆がいいかと言われると、現在時点からの環境変化(特に買いもの関係)が激しそうなのと、地方独特の「人付き合い」のようなものに慣れられるのかということもあり(実際に、その後長野県佐久市などで、転入してきた人への村八分問題が明るみに出て、2019年時点でも問題になっていたりします)、もう少し「都市化」しているところがいいのではないかとは考えました。それで西伊豆は遠くなったように思えました。
 この時点での当家の条件は、
1.一戸建てで土地120平方メートル以上・建物100平方メートル以上
2.中古と新築にはこだわらない
3.持ち家に限る
4.今の生活環境(特に利用商店や医院など)を大きく変えてもいいが、あまり遠すぎない範囲。ある程度都市化しているところ。
5.予算の概算はおおよそ4000万円から5000万円として探す
…というように変化しました。
 実際に行ってみないことには、そのあたりの住宅地の雰囲気などもわかりません。それで不動産屋さんと相談しながら、三鷹市や神奈川県などへ、足を運びました。
 基本的にネットである程度あたりを付け、気に入った物件のページを印刷するなどしてから向かいます。しかし、実際に現地に着いてみると、掲載されている広告だけではわからないことがわかるようになります。
 例えばそれは、駅からのバスの本数とか、意外と勾配があって、歩くのには多少苦労するとか、電動アシスト自転車が要りそうだとか、商店までが意外に遠いとか、車が危ないとか、そういうようなことです。これらは、やはり現地をしっかり見ないとわからないことです。


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