4.書き文字の世界

 書き文字とは、盗難補充などで、工場にてアクリル板などへ直接塗料で手書きし、それを壁に貼ったものです。盗難によるものについては、イレギュラーな発生なので、大変困った問題ですが、結果として製作される車号板は、なかなか芸術的な「職人芸」によって書かれたものが多く、それはそれで見飽きないと言えます。また私鉄では、元から手書きの車号板を付けている例があります。

手書き車号板の画像です

 手書き文字の車号板いろいろ。基本的に「国鉄客貨車文字」に準拠するように、似せて書こうとしている様子ですが、やはりそこには書く人の個性が出ます。また、材質・寸法もいろいろであるのがわかります。モハ113−2070や、モハ112−131など、1や0の文字など、そっくり同じに字を書けるというのは、まさに職人芸の世界です。

クモユニ74形車号板の画像です

 珍しいところでは、クモユニ74212号も書き文字の車号板を付けていたようです。本品はアルミデコラ板を白く塗装し、それに紺色の塗料で書いてあるものですが、クモユニ74212は100番台(101号)からの改造(ジャンパ栓の改造)なので、おそらく改造時から本品が付いていたものと思われます。

手書き車号板の画像です

 材質のいろいろを見てみましょう。上からモハ102−802は、5ミリ厚透明アクリルに裏から青で書いて白塗装です。2枚目モハ113−137は、3ミリ厚透明アクリルに、裏から少し明るい青で書いて白塗装。オハネフ25 9は、3ミリ厚白アクリル板に表から青で書いています。4枚目モハ113−246は、3ミリ厚白アクリルまではオハネフ25と同じですが、四隅を丸める加工をしていません。これはやや珍しい作りです。一番下サロ110−1281は、アルミデコラ板を白く塗装し、それに青で表から書いています。ちょっと見ただけでも、これだけ多種多様。なかなかあなどれない手書き車号板の世界でした。
 

5.レプリカ品とその見分け方の例

A.レプリカ品の実例

 レプリカ品は、記念などの目的で作られるものもあります。また単純にコレクション用として作られるものもあります。問題は、「人をだます目的で作られたものが存在する」ということでしょう。もっとも、これは骨董の世界などでは当たり前に存在しているので、あまり罪の意識も無いのかもしれませんが…。レプリカと知って買うのは、値段が妥当ならば問題は生じないと思うのですが、「純正品」などと銘打って、レプリカをあたかも本物のように見せかけ、知らない人に売る売り方は、やはり糾弾されなければなりません。
 レプリカの具体例をまずは見てみましょう。

レプリカ車号板の画像です

 レプリカであることが明示された、あるいはレプリカと承知で買ってみたいくつかの車号板です。
 一番上、クモハ115−1016は純正品と見まごう仕上がりですが、クモハの「モハ」の字がわずかに異なります。モの一番下の横棒が上にはねてない反面、その割にハの字の右側が直線的という特徴があります。これは後の項目でさらに細かく見てみます。
 2枚目と3枚目のサハ103−766、754の車号板は、デカール文字タイプのレプリカです。これは大井工場のイベントで、好きな番号をその場で作ってくれるサービスがあったとかで、おそらくはそのような場所で売られたものでしょう。何しろ実物工場のイベントで売られたものだけに、全く純正品と見間違えますが、サハ103−766には、取り付け穴が開けられている、塗膜が薄い、裏側の粘着材の材料が異なり、使用された形跡が無いなど、よく見ればやはりレプリカであることがわかります。
 4段目、クハ207−901は、デカール字の感じですが、両端に穴があり、そもそも印刷で作られ、文字の色もやや濃いめにわざと仕上げられているように見えます。何しろ販売時の袋に入っています(笑)。
 一番下サロ165−107は、「急行 東海」の引退に際して、鉄道模型店筋で売られた、裏から掘り文字のレプリカです。サロの形式の字体が実物と異なり、全体に明るい色で、なんとなく左右に間延びした感じがあります。当時2000円で、立川エンドウにて購入した記憶があります。

レプリカ車号板の画像です

 もう少しレプリカの例を見てみましょう。上のクハ481−101と103は、「雷鳥」から485系が引退する際の特別列車サボとともに販売されたレプリカです。デカール文字タイプですが、よく出来ています。裏側を見ないと、単品では見分けが付きにくいかもしれません。下のモハ484−57と36は、実物そっくりに作られたレプリカ。これが一番だまされやすいタイプです。両端のネジ穴に、取り付けあとが無いことと、裏面に粘着材の痕跡が全くないことくらいしか、見分ける手段がありません。さらに、郡山工場更新車の中には、ネジ穴はあるものの、ネジ穴を使わないで接着のみで壁に取り付けた例(例:クハ401−73など実見)があるので、粘着材が付いてないと、文字からの見分けはかなり難しいと言わざるを得ません。他の番号もあるようですが、比較的初期の485系の番号から選ばれているので、このような初期形485系JR字体の車号板を、コレクションのために買うときは、裏面の様子などをよく観察した方がいいと思います。


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