レプリカ品とその見分け方の例続き

 さて、ここでは「記念品系」のレプリカを見ていきましょう。

レプリカ車号板の画像です

 雷鳥号のボンネット車廃止を記念して作られたと思われる車号板(下)と、記念のサボ板(上)。いずれもレプリカです。しかし、車号板はよくできており、文字は国鉄字体の掘り文字を模したデカール文字(印刷か?)、長さが微妙に変えてあるなど、マニア心をくすぐるような出来です。

レプリカ車号板の画像です

 当然ですが、裏側を見ればレプリカであるのは一目瞭然。サボも文字が印刷されています。車号板も「未使用状態」なので、シールの裏紙が付いています。いわゆる「記念品」というやつですね。

レプリカ車号板との比較画像です

 これは模型店筋で売られた、急行「東海」引退記念車内形式番号板レプリカと、実物を比較したものです。下のサロ211−4は実物(高崎線筋への転用に伴い、耐寒化改造で改番され発生)。上のサロ165−107はレプリカです。両方とも掘り文字、ネジ穴付き、3ミリアクリル板というあたりは共通ですが、やはり「サロ」の字体が異なります。数字は似たような感じですが、特に「ロ」の字が平べったく、「サ」の字もどことなく印象が異なります。また全体に間延びしているのは、他の番号に合わせたものと思われますが、購入時この1枚しか店頭に在庫がなかったので、比較できないのが残念です。これもまた「記念品」として作られた「鉄道グッズ」と言えそうです。

レプリカ車号板の画像です

 モハ484−37、モハ484−57は、実物と見まごう掘り文字JR更新車字体によるレプリカでした(全体画像は4ページ目をご覧下さい)。大変実際に使われたものと似ていますが、ネジ穴に汚れやスレがあるかどうか、というのが見分ける点の一つになります。一番下は実際に使われたモハ102−281の実物。このようにネジ穴は少し太めで、割と短い間にも汚れが付くものです。ただ、郡山工場更新車の403系では、ネジ穴があいているにも関わらず、ネジ穴を使わず、接着固定のものが実在しました(したがって485系にも?)。この点の区別は、表側からは付きにくいのですが、裏側に接着材料(両面テープか接着剤)のあとがあるかどうかで見分けられると思われます。
 また、上の例では、モハ484−37と−57の色が、少し薄目に見えます。

★車号板のエラー品

 車号板は、アクリル彫刻などで作られています。製法は既に述べましたが、当然人間の作るものですから、ミスが無いとも言えません。そんな「とんでもないエラー」の車号板が、実は存在していました。この項目の画像は、全てEH500氏に提供してもらいました。

信州色115系の画像です

 リニューアル工事のために入場してきたクハ115形。もうすぐ完成です。既に塗装も仕上がり、あとは細かい内装を行うだけ。

信州色115系の画像です

 車号はクハ115−496号です。最近はここの文字も、ただの黒や白のみではないのですね。字体は昔のままですが、グレーだと見づらくないのでしょうか。

クハ115−496号内部の画像

 クハ115−496…。ん?。んん??。

クハ115−496号内部の画像

 んんんんん???。し、新形式が誕生している!?。

車号のエラーが確認された画像

 なんじゃこりゃ!!。確かに壁に、「クハ114」なる謎の形式が…。クハ114形なんて、登場するはずもありません!。ですが、確かに壁にしっかりと取り付けられています。JR更新車字体の車号板が接着されているではないですか!。接着取り付けなのは珍しいですが、そんなことよりこのまま出場させていいものか…。

エラー車号板の画像です

 出場していいわけは無いわけで、間違いに気付き、1ヶ所のみ取り付けられただけで、無事取り外されました(画像は取り外し直後に撮影)。信じられない車号のエラー。これは実際にあったことで、間違った番号で発注したか、もしくは間違って納入されたかのいずれかと思われます。それにしてもこの車号板、クハの「ハ」の字がかなり直線的ですね。これは185系のリニューアル車にあるタイプの、「クハバージョン」なのでしょうか。
 もう少しで「車体の外と中で車号の異なる」車輌が出来てしまうところでした。このような事例は、わずかではありますが実際にあることのようです。

★「工場予備品」なるものは実在するのか

 もちろん、そんなものは実在しません。工場に勤務している友人は、笑って言うのです。
「盗難や破損に備えて、その工場が担当する全車輌の車号板を作って保管しているはず無いでしょ?」
 至極ごもっとも(笑)。鉄道会社は大きな会社とは言え、そんなものをいちいち準備するほど、予算は潤沢ではありません。したがって、「予備品です」とか、「工場予備品が倉庫から出て参りました」などとうたって、オークションなどに出品されているものは、全て「レプリカ」です。
 ただ、前の2ページ目に紹介したような、シールなどを貼って完成させるタイプの「汎用予備品」とでも呼ぶべきものは一応実在します。しかしこれは完成品ではないので、やはり「完成した予備品」というようなものは存在しない、と言い切れます。

おまけ記事

 某夜行列車名をつけた鉄道用品店の、東京での販売会で、不思議なものを売っていました。その場にいたマニア諸氏も、これが何か、またどうやって使うのかわからず、説明してあげたことを思い出します。

103系車号板を使って作られた文具の画像

 これって、何だと思います?。モハ103−322号の車号板…なんですが…。この角度からですと、若干わかりにくいのですが、上辺が斜めに面取りされており、さらに文字の下辺付近に、丸い溝が掘ってあります。
 これは車号板を加工した「直線定規」なんですよ。特にマンガを描く時、イラストで直線を引く時などに重宝します。ペン先にインクを入れて線を引こうとすると、毛細管現象でインクが定規の下ににじんで行ってしまうことがあります。原稿を致命的に汚しますので、それを防止するために、斜めに面取りした部分を下に向けて線を引くようにします。そうすると、定規と紙が直接触れない空間が出来ますので、インクのにじみを防ぐことが出来ます。
 さらには、先が丸くなっている「ガラス棒」とペンを、箸を持つようにいっしょに持ち、ガラス棒の先の丸い部分を溝に当て、ペン先を紙にあてて一気に線を引くと、うまく直線が引けます。ペン先が大きく、斜めに面取りしてある部分でも、定規側面にペン先からインクが流れて行ってしまいそうな時などに、特に効果的な方法です。実際にこれを使って、アニメヲタクであった時分には、イラストを描いたり、マンガの枠線を引いたりしておりました。

103系車号板を使って作られた文具の画像

 裏側はこの通り。定規ですので、下が透けて見えないと困るため、裏面の塗装などはきれいに薄く削って仕上げられています。
 その時の販売会では、クハ481の車号板を同様に加工したものもありました。問題は、いったい誰がこんな加工をしたのだろうか、ということではないでしょうか。さすがに車号板としてそれなりの価値があるものを、個人がここまで精密な加工をするとは思えないので、モハ103とクハ481を両方検査やリニューアルしていた工場の製作品と思えます。しかし、そんな工場は無さそうな気がするのです。モハ103−322は、常磐線で長く活躍し、リニューアルされたものなので、そのリニューアルの際に取り外されたもの(国鉄新字体ですし)と思えますが、そうだとすると当時の大宮工場で検修です。しかし、クハ481は郡山工場が担当と思えるので、大宮工場の製作品とはちょっと考えにくい感じです(大宮工場では、その後ジョイフル車などは製作していますが、時期が合いません)。


戻る 次のページへ