ここからは、いわゆる「民鉄」のものを見ていきます。民鉄のものは、JRや国鉄のように類型化は難しいほど、いろいろあります。手書きから掘り文字、印刷まであらゆる手法と、いろいろな字体が混じっています。それらを少しご紹介します。
新交通システムで、初の廃線となるいう思わぬ事例となった「桃花台交通線」の、モ133号車号板です。四隅をリベット止め、さらに裏面に強力粘着テープという取り付け方ですが、文字は印刷によるもので、字体は角ゴシック系の独特なものになっています。
同じくモ121号の車号板。粘着テープは上下の中央部分だけでした。それでもかなり強力です。見た目の編成による違いは無さそうです。
都営地下鉄10−000系。廃車された初期車から発生したものですが、一見国鉄客貨車文字に準拠したような字体ながら、やや全体のバランスが大きめになっている印象の字体です。1ミリほど裏側から掘り文字になっており、それを壁面に強力接着してあったようです。10−121は字取りが10−036と変わっているのが目を引き、また色味の違いもあるようです。10−111も同様でしょうか。
旧営団地下鉄(現:東京メトロ)の1500形の廃車発生品を集めたもの。掘り文字ですが、両端の穴が「皿ネジ形リベット止め」という珍しい形態でした。文字も独特の字体で、最近の車輌にも受け継がれているはずですが、例えば10000系など、車内がどうなっているか資料がないのでなんとも言えません。本品は文字の色に微妙な差異があるほか、1511は板の左右寸法が小さい、文字が微妙に角が丸いなど、きめの細かい違いがあって興味深いです。
副都心線転用改造や、チョッパ制御車廃車の方針で一部廃車された、7000系の車号板。販売時の取り外しに苦労したようで、刀傷がありますが、1500形と同様、皿ネジ形リベット止めであったことがなんとかわかります。東京メトロのこの様式による車号板は、全てやや深めの掘り文字です。アクリルも厚手で、6ミリ程度あります。本品は、上の1500形1511と同様、文字の角にやや丸みがあります。
これは7408号のもの。文字の角は丸くないタイプ。
同じような7217号のもの。
7202号も同様のようですが、色味が少し異なります。
これは千代田線用6000系のもの。営団独特の書体で、角が丸くないものです。種類の違いとしては、上の7000系のものと同様です。
字体そのものには違いが見いだせない、6732号のもの。色味がやや明るめです。それにしても、旧営団の車輌は、字体が特殊ですね。
これは旧営団の3000系から、4554号のもの。3000系は、なぜか中間車は4000番台や4500番台になっている車輌がありました。系列が異なっても、基本的に営団(現:東京メトロ)の車輌は、字体や形状は基本変わりがありません。
本品は、日比谷線の20メートル車化により、廃車となった03系のもの。時代は変わっても、字体に変化はありません。皿リベットまたは皿ネジ取り付けなのも同様です。色はそれまでの紺色系から、茶色系統に変更されています。
なお、これは化粧板ごと販売されたものです。そのため、実働車輌のものを撮影した画像ではありません。
大阪市営地下鉄の車号板。本品は唯一編成廃車となった10系第4編成のものですが、四隅で止める方式、裏からしっかりした掘り文字、文字色が黒い、新幹線字体に似るなどの特徴があります。取付には皿ネジか皿形リベットを使っていたようですが、さらに全面的に粘着材を使っています。
同じく大阪市営地下鉄30系の車号板です。作りは10系と同じですが、四辺が面取りされたやや丁寧な仕上げなのと、文字が丸っこいのが特徴です。メーカーによる差かもしれません。
同3689号のもの。3624と違いは見いだせません。全体に丸ゴシックのような感じですが、やや3や8は独特な字体にも見えます。
近鉄の車号板。全体に角ゴシック調の珍しい字体です。本品はよく見ると書き文字でした。両端穴と両面テープで取り付ける方式。乳白色のアクリル板です。掘り文字のものも多数存在します。
東武3050系の車号板。本品は掘り文字や印刷ではなく、書き文字です。仕上げの丁寧さ、長年取り付けていた様子からして、新製時(車体更新時)からこの車号板を取り付けていたのではないでしょうか。両端ネジのみで取り付けられていますが、8000系などでは掘り文字のものを確認しています(下記)。上手に書かれた国鉄客貨車文字準拠のものと言えそうです。
これは8000系の車号板。アクリル板に掘り文字のタイプです。止め方は皿ネジか皿形リベットのようですね。「サハ」の文字は、意外とJR字体ににています。
裏面。普通に彫刻され、文字色→背景色の順で塗装されています。
東京急行電鉄デハ7139号の車号板です。東急のものは、上下が大きめで、文字もその分若干縦長になり、のびのびした印象です。裏側からの掘り文字です。
同じく東急8000系のデハ8228号車号板。おおむね7000系と同じですが、文字色がやや濃いめですね。
西武鉄道の車号板は、2000系までは少なくともリベットのみで取り付けられています。これは現役のクモハ2409号のもの。西武鉄道が面白いのは、車体の外には「クモハ」などの形式を表記しているのに、車内には「クモハ」等を抜いた番号のみを表示している点です。理由ははっきりしませんが、長年の慣習なのでしょう。禁煙札のほうが厚いのがわかります。
同じく西武3000系、モハ3113号の車号板と禁煙板。3000系では、粘着材とリベット併用で取り付けられています。本品は廃車によって、点検ブタごと外されて販売されたもの。クモハ2409より文字が細めです。
京急電鉄のものは、かなり前から楕円形の独特な形状です。文字の形態は普通の「国鉄客貨車文字」に準じているようですが。本品は、周囲の部分が丁寧に面取り磨き出しされています。更新工事で発生したもののですね。650番台の車は、4輌編成に組まれているグループです。
なお、楕円形の車号板を付けている大手民鉄としては、他に南海電鉄が挙げられます。
阪急電鉄8880号の車号板です。更新に伴い取り外したものと思われますが、うまく剥がせなかったのか白の塗料がはげています。しかし、これにより完全接着取り付けであることがわかります。すっきりきれいな揃い方の字体です。
名古屋市営地下鉄3000系の3708号車号板です。縦横ともにサイズは大きく、番号の配置も間延びした感じになっていますが、乗り入れ先の名鉄からの影響か、「ローマン体風」の文字になっています。しかし完全なローマン体とは違うものです。ラインカラーに合わせたような明るめの青文字が特徴的です。
東京モノレールの800形中間車、804号の車号板と禁煙板です。クリーム色のデコラ板に取り付けられていました。この車号板が珍しいのは、接着剤や両面テープを全く用いず、リベットのみで取り付けられていたことと、裏面の塗装がブルー色、文字が銀色であることです。銀色は文字の削り跡がもろに出ますので、色の選択としてどうなのかはわかりませんが、モノレールという乗り物としての特殊性は、よく表現しているということなのかもしれません。サイズは国鉄・JRなどよりも、縦寸が大きめです。
江ノ島電鉄の2000系です。控えめな大きさのものが、妻面に付きますが、リベットやネジを使わない完全接着取付のものです。字体は普通の「国鉄客貨車文字準拠」に見えますが、やや親会社の小田急電鉄にも似た感じ(「2」の字体など)もします。
今や江ノ電唯一の旧形車になってしまった305−355編成、355号の車号板と銘板です。やはり接着取付で、文字は見た限り印刷のようです。字体は普通に「国鉄客貨車文字」に準拠していると思われます。珍しく銘板は「東急車輌 平成元年改造」と、「小田急車両 平成元年」と2つが付いています。製造は1960年(昭和35年)なんですけどね。
ところがこれがレトロ車10系(形と呼ばれますが)になると、字体は一変します。また銘板より小さくなるという、「主張しない車号板」へ。完全接着取り付けで、字体もレトロ調です。レトロ車は1編成しかないので、これで十分なのでしょう。
私が持っている中では、もっとも桁数の小さい車号板。
摩耶ケーブル2代目2号の車号板です。現在は3代目車輌に更新され、取り外されたもののようです。モハでも「コ」でも「ケ」でもない、ずばり「2」。透明アクリルに黒で印刷し、背景を白く塗装し、粘着材とネジかリベットで取り付けされていたようです。
これは、札幌市営地下鉄6416号の車号板(上)と、JRサハ103−233号(JR新字体)との大きさの比較。上下寸法を国鉄・JRと同じにした結果、左右寸法がかなり小さいものに。完全接着取付です。
変わったものとして、これは廃線となった日立電鉄モハ3023号(元営団地下鉄銀座線2000形)の、運転台用小形車号板です。運転台用なので、サイズは小さく、横幅9.5センチです。日立電鉄モハ3023号は、一度模型店の店頭に保存され、その後そのお店の閉店とともに、なぜか京王重機に運ばれ、結局解体されたという謎の経歴があります。現場で解体せず、一度は京王重機に取り込んだということは、なにがしかの部品を取る必要があったのではないかと推察しますが、真相はどうなんでしょうね。
次のページでは、京王と小田急について見てみます。