2004年6月3日臨時増刊号

コメットさん☆に捧ぐ<2>

 コメットさん☆に捧ぐ(連載第2回)

(前号からの続き)
 地球での生活は、コメットさん☆にとって目新しいことばかり。剛くん・寧々ちゃんと、両手をつないで、毎日いろいろなところに行く。星力も、二人の前では使えるだけ使って。市内を歩いたり、電車に乗ったり。ついでに知らない人にも、「星国から来たコメットです」などと名乗ってしまう。
 夜になると、巨大化するラバボーと雲の上に舞い上がり、星力を自分のバトンに集める。そうして補充しておかないと、星から遠い地球では、魔法を自在に使うことは出来ない。
 遅れて地球にやってきたライバル、メテオさんと共に、星力を使って“かがやき”を探すが、なかなか王子らしい人物は見つからない。しかしコメットさん☆としては、地球の風物のほうが珍しくて、あまり熱心に王子探しをしないものだから、地球にわざわざやってきた侍従長や、ラバボーにもせっつかれたりする。また“かがやき”は、王子だけが放つものではなく、望みと良心に従って「努力」を続ける者は皆、“かがやき”を放つことにもコメットさん☆は気付く。そういう人々の手助けを、星力と、星力によって星国から召還する「○○ビト」という「星人(ほしびと)」の力を使ってする。
 やがてコメットさん☆にも、ボーイフレンドが2人できる。一人はケースケという、海難事故で父を亡くしてから、ライフセーバーの道を歩み、いずれは世界一のセーバーを目指す15歳の少年であり、もう一人は人気歌手で、母が有名デザイナーである、今川瞬であった。
 この二人の“かがやき”は大きく、身近にいるだけに、もしかすると王子が記憶をなくしているのかもと思われたが、なかなかそれを確かめられない。
 夏が来てコメットさん☆は、叔母のスピカさんと出会う。それは偶然ではなく、「星の導き=人と人を巡り合わせてくれる、星の子たちの力」によるものだと、スピカさんは言う。スピカさんは、地球人と結婚して八ヶ岳に住んでいたのだ。それ以来地球での唯一の肉親である叔母をたよりにして、時々どうしていいかわからないことをたずねに、星力を使って鎌倉から八ヶ岳山麓まで行くコメットさん☆であった。
 スピカさんのお供として、地球にそのまま住み着いていた、「ラバピョン」という星国の妖精と、ラバボーが恋人同士になってしまう。ところがそれに連動して、コメットさん☆は不思議な「恋力(こいぢから)」という力に目覚める。とまどうコメットさん☆であったが、「恋力」が「異性を好きになる」感情であって、それによって人の気持ちが大きく変わることに、叔母のスピカさんの助言もあり気付く。いよいよコメットさん☆も、思春期を迎えたのだ。
 星力と恋力の2つの「力」を得たコメットさん☆は、なかなかケースケとの関係を、親しくすることはできないが、ケースケがライフセーバーの大会と修行のため、オーストラリアに旅立つ頃、本格的にケースケの存在を通して、恋について意識する。
 しかし、王子探しとしては、今川瞬が王子でないことが確認された。ではケースケが王子なのか?。
 オーストラリアにいるはずのケースケが突然帰ってきた。しかしそれはケースケ本人ではなく、ケースケの姿をした「プラネット」王子その人であった。プラネット王子は“かがやき”を自ら無くしてしまっており、それでなかなか見つからなかったのだ。ということは、本当のケースケも王子ではなかったということになる。
 王子はなぜ自ら“かがやき”をなくしたのか?。コメットさん☆に近づくためか?。
 星雲の未来に、自らの恋愛感情が関係してしまうことに苦悩するコメットさん☆。だが、王子も自分の立場が、星雲の未来を決め、ことに二人の王女から一人を、確たる理由もなく選ばせられることに、反発を感じていたのだ。にもかかわらず後ろ向きな態度に終始する王子に、コメットさん☆は叱責の言葉を放つ。王子は、自らの立場を受け入れてもらえないことに落胆しながら、迎えに来た星国の使者とともに、自分の星国へ帰る。
 王子が見つかったので、コメットさん☆とメテオさんは、星国に帰らなくてはならなくなる。しかし二人にとって、それはつらい別れなのであった。また、地球で縁ができた人々にも、つらい気持ちを起こさせることになる。そのため、一度は星国からの帰還要請を断ろうとするコメットさん☆であった。
 しかし、メテオさんが、自分の思い出を捨ててでも、星雲と「星の子」の未来のために、星国に帰ろうとするその心と、叔母のスピカさんの、コメットさん☆を大切に思っている、星の子たちが悲しむとの説得もあり、一足先に、回りの人々の記憶を消してから帰ったメテオさんのあとに続いて、コメットさん☆も、星国に帰ることにする。
 いよいよ星国に帰る時が来た。星国に帰るということは、縁もゆかりもない他国の王子と、結婚しなければならないかもしれない。ケースケに再会することもできないままに?。
 別れの寂しさを少しでもやわらげようと、星国の父母、王と王妃が迎えに来た。最初で最後になるかもしれないあいさつを、藤吉家の人々や、コメットさん☆の回りに居て、“かがやき”を放っていた人々と交わす王と王妃。
 星力で、時間を少しの間だけ止めた王と王妃といっしょに、コメットさん☆は星のトレインに乗る。地球にやってきた日と同じように、江ノ島電鉄鎌倉駅3番ホームから、星のトレインは、止まった時間の中、コメットさん☆と王と王妃を乗せて、静かに走り出す。
 コメットさん☆の心に、フラッシュバックする、たくさんの思い出。
 汽車は、来たときと全く同じ線路を逆に走り、稲村ヶ崎駅を過ぎた七里ヶ浜駅手前の直線区間で、空に舞い上がった。だが、涙が止まらないコメットさん☆は、窓の外をほとんど見ることはできない。
 星のトレインがまるで彗星のように飛び始めたとき、地球の時間はふたたび刻まれる。コメットさん☆は人々の記憶を消したりはしなかったが、藤吉家他の人々は、そこにさっきまで居たコメットさん☆が居なくなっているのに気付く。そしてその姿は、各自の心に思い出として刻まれた。
 星国に帰る途中で、星のトレインは、プラネット王子の待つ星国へ直行する。それは、ついに婚約の儀式に臨むということ。先に待っていたメテオさんと、コメットさん☆のいずれか王子が指名したほうが、王子の妃にされてしまうのだ。
 ところが王子は、自ら「自分には資格がない。まだ未熟なので、星雲と星の子の未来を考えるほどのやる気は出ない。だから二人のうち、どちらかが自分を選んでくれ」と宣言。これに対し、自分の地球での想いを、弄ぶかのような王子の態度に、メテオさんは思わず「ふざけてるわ!」と怒り、早くも王女のほうから「絶縁」を宣言。メテオさんの星国の女王(母)もそれを支持する。
 一方コメットさん☆も、「星の子は大事だが、『いっしょに』とは、今は考えられない」と断り、あの舞踏会の日以来、拾ったまま持ち続けていた王子の「メモリーストーン」を、彼に返した。しかしその石には、コメットさん☆の地球での生活が、そのまま記録されていたのだ。多くの“かがやき”を持つ人々と過ごした日々が。
 儀式はお流れになった。王子は、コメットさん☆から返されたメモリーストーンを見た。そして、そこに映った、素直で直情的なコメットさん☆の姿にうたれ、「まっすぐに物事を見つめることができなければ、瞳に“かがやき”を映すことなどできやしない」という、セリフ通りの本質に気付き、自らの“かがやき”を探し求めるために、地球に旅立つ決意をする。
 それを追って、いや、王子だけでなく、もっとたくさんの“かがやき”を求めて、ふたたびコメットさん☆とメテオさんは、地球に行くことになる。それは星国でコメットさん☆をよく知る、「星の子」たちが、皆そうすすめてくれたのだ。
 ふたたびやってくる2002年の夏を前にして、コメットさん☆、メテオさんは、地球に戻ってきたのだった─劇終─。
 …と、読者諸氏にあっては、長いお話におつきあい感謝するが、作品としての「コメットさん☆」は、おおむね上に書いたようなストーリーである。
 なお公式な文献によっても、多少背景説明が、異なっているものが存在する。また「後日談」的なことが、書かれているものもある。しかし、本来的に創作物は、その中だけで完結するべきであり、創作された作品以外で、創作者がその作品を“説明”することは、好ましいと思われない。作品の意図することは、全て作品の中でのみ語られるべきだと思う。よって上のストーリーの解説部分は、作品で見聞きした範囲にのみ基づいて記した。
 さてこれは、さらっと見れば、コメットさん☆という一人の少女の、「成長物語」と言ってしまうこともできる。しかし、ただ単にそれだけとは言い切れない。もっと深遠なテーマも、いくつか見いだすことができると思えるからだ。
 次の章からは、「コメットさん☆」という作品が、持っていたと思えるいくつかのストーリー上の特徴を考え、それによって、私的感覚になるけれども、この作品が私たち視聴者にとって、どんな作品であったのかを考えてみたい。

(以下次号)→続きを読む

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