2005年7月29日号

日の丸企業の明日<2>

 
  日の丸企業の明日<2>
 

前号からの続き)
 これは、某モードを使う人がほとんどであり、そのためそれを使う人には、最初に1000円安くするというのが、某元公社系電話会社の言い分なのだと思う。つまり毎月300円の利用料を払ってもらうのだから、最初だけキャッシュバックしますよ、ということだろう。それは一見サービスのように見えるけれども、この理屈を、本音で高齢者や、メールなんて携帯でやらないよ、という人に説明していない。お店の人も含めて、「1000円お引きしますよ」とは言っても、「毎月300円はいただきますから、最初だけサービス!」とは、絶対に言わないわけである。
 そもそも某モードに入らなければ、メールもネットサービスも使えないのに、それに毎月別途300円かかるという某元公社系電話会社の神経というのも、よくわからない。別の会社で、いちいちメールやネットの基本料金を設定し、別料金にしているところなど、詳しく調べてないが、無いのではないだろうか?。
 確かこの某元公社系電話会社は、メールの文字数とかにも、いろいろ制約があったような気がする。私の持っている携帯など、毎月定額で、相手が同じ会社なら、通話もメールも無料である。まあ、方式が異なるので、同列比較はしにくい部分もあるが…。
 おばさんは、「みんなメールをこれで打つと言うけれど、微小脳梗塞とかが起こって、手が痺れたら、だれもこんなものでメールなんて、打てやしないわよ」と言った。その瞬間、お店で説明をしていた40歳代と思われる夫婦は、ちょっと押し黙って、息をのんだかのように見えた。考えて見れば、これもまたもっともな話である。だからこそ、みな、私も含めて虚を突かれたわけであろう。
 私にも、若くして脳梗塞になった友達がいる。彼は手はそれほどではないが、足がやや不自由になった。もし梗塞の起こったところが、手を司る場所だったら、携帯のメールはあきらめなければならなかっただろう。

 最近ある会社が売り出し、CMでもなじみの、メールなし、カメラなし、液晶画面もなし、大きめのボタンのみ、という携帯電話は、高齢者に大変人気だと言う。私も適当な機種がなければ、いっそこれにしてしまおうかとすら思った。今、この機種を選んでいる人たちは、メールは出来ないのだから、それで十分と思って買っているわけである。つまり潜在的に、カメラはおろか、メールすらいらないというニーズは、相当あったということになる。
 某元公社系電話会社は、最近画面にタッチしてメールも、ネットも出来るという電話機を売り出した。5万円以上と、高いのであるが、なんとそれには、パソコンと同じ配列のキーボードが呼び出せる。これはいったい何を意味するか?。当然、携帯の0〜9、*と#では、メールやURLの入力場面で、打ちにくいと思っている人がいて、それに応えたものであることは疑いない。確かにこの機種は、値段からしても高級機種なのだろうが、商品開発担当者は、矛盾を感じないのだろうか?。なんだか、片やフルキーボード搭載、片やメールには300円追加支払い…。これはもう、多様化ではなくて、自己矛盾とそれが招く混沌のような気がする。
 おばさんの「意見」に、お店の人も困ったのか、某公社系電話会社の愚痴を漏らした。曰く、「ちょっと何かトラブルがあると、『そういうことをおっしゃるなら、当社の携帯電話の取り扱い、やめて下さって結構ですよ』って、平気で言いますからね…」と。
 私は携帯電話販売店の、中の仕事をしたことなど無いから、厳密な意味で、これが本当かどうか、確かめる術はない。しかし、何となく、「お客様センター」の対応の経験とか、料金のこととか、若者に支持される機種をたくさん発売している奢りとかから見ると、この話が作り話とも思えない。そういう「エラソウ」なことを、平気で口にする「企業風土」というのが、「お役所」時代から抜けていないのだろう。
 JRで切符を買おうとしたお客に向かって、あるいは販売を代行しようとする旅行業社に向かって、「それなら切符は買っていただかなくても結構」とか、「おたくで売っていただかなくても、旅行センターで売りますから」とか言われて、指定券販売用のオンライン端末を引き上げられたなんて話は聞いたことがない。長いこと鉄道ファンやっているけれど…。まあその辺が、某元公社系電話会社は、「殿様商売」なのだと言えるだろうか。
 
 おばさんは結局機種変更の手続きをして、帰っていったが、おばさんが最後に言っていた、「今若い人たちだって、ちょっと事故や脳梗塞、病気で手が不自由になったら、どうするんでしょうね?。ここにいる人もみんなそうよ」という“手厳しい”言葉が、とても気になった。
 それにはどうも、私も含まれているのだろうが、私も中年になって、手の一つや二つ、時には痛かったり、しびれていたりする。まだ数日で治るからいいが、これが固定的になったら、いろいろなことに困るだろう。こうして作品を書くのだって、難儀するかもしれない。
 いつ何時、だれもが手の不自由な生活にならないとも言えない今日(こんにち)、大きな、そして歴史ある企業だからこそ、応えるべきニーズというのが、あるのではないか。
 無論、この某会社が、企業努力をしていないとは言わない。技術的な質問などには、親切に答えてくれるし、ちょっと前よりは、人当たりがよくはなったと思う。
 しかし、コミニュケーションのための、情報のやりとりを仲介することが、今の携帯電話会社には、強く求められている。もともと音声を伝えればよかったのだが、今の携帯電話に求められるのは、もっと広いメディアとしての役割になった。その意味では、あれこれ搭載した「総合電子メディア端末」のように、携帯があたかも“武装”していくのは、必然のように見えるけれども、逆にそれが、誰かを遠ざけ、誰かのバリアになりうるということも、認識しておいて、損はない。
 某元公社系電話会社には、その大手巨大企業としての素質も認めた上で、少し立ち止まって考えることを、おすすめしておきたい。
(完)

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