2006年3月20日号

風邪引き通販<2>

 
   風邪引き通販<2>
 

前号からの続き)
 この建物は、築10年弱であるが、結構建築当初から結露する。そのため意外と湿度は高いのではないかと推定していたが、実際に測ってみると、40%台から60%台と、はかる場所、時によって、大きな変動があることがわかった。
 結露の多い窓際は、あまり大きな変動はなく、結露しようがしまいが、50%台をいつも維持していたが、枕元というのは、雨の降る日など、60%になるかと思えば、少しエアコンを連続運転するだけで、40%に下がってしまう。これではウイルスは活性化し、私の喉を攻撃にやってきてしまう。
 さらに私の部屋に至っては、モノが多いし、狭いからか、50%ギリギリで、時に48%を示すときがあった。ところが、私が風呂に入ってきて、そのままデスクに座るだけで、48%から56%なんかに変動する。やっぱり狭い範囲では、空気の湿度は変わりやすいのだろう。
 うちには加湿器というものはない。建築当初から、けっこう湿気ている気がしたからだ。それにメンテナンスが面倒なので、あまり使ってうれしい機器ではなかった。湿気の増やしすぎになると、今度は風通しの悪い壁や床、窓などにカビがはえたり、電気製品にあまりよくなかったり、おそらくはものが腐りやすくもなるということである。
 そのようなことを勘案すると、あまり際限なく湿度を上げることも、好ましくない。ではどうやって湿度を調整するか。まさか水をまくわけにもいかないから、タオルを濡らして、ハンガーに掛けておくことにした。これだけで、湿度はすぐに50%台を回復しつつ、それ以上には上がらないのだ。

 風邪のウイルスは、湿度50%を境に、活性化−不活性化していると言われているが、もちろん、50%を境に、スイッチが入ったり切れたりしているわけではない。そのあたりからジワジワ活動的になったり、そうでなくなったりという「程度」を示す数値に過ぎない。なので、48%ではいけないということでもないし、52%なら完全ということもない。
 しかし、まだ風邪があまりよくなかったとき、濡れタオルを掛けて寝た時と、そうでないときの、翌日の喉の具合は、結構違っていた。ウイルス云々の前に、喉を湿らせておくというのは、風邪の予防と治療に大事なことであると、今さらながら思い起こさせてくれる。
 というわけで、今年新たに風邪予防グッズを、全て通販の類で、またまたそろえてしまった。それらが全て、ネットを通じた通販であるという点が、今までのうちでは、考えられないことであり、特徴的とも言える。
 残念ながら、歳のせいか、年々風邪の治りは悪くなった気がする。中学・高校の頃は、しょっちゅう風邪を引いていたが、数日で元のように治ったし、また基礎体力もあったような気がする。
 ところがそれらが確実に、悪い方向に向かっているのだ。これは何だか、だんだん自分の体が、ステップダウンしているようで、悲しい気分になる。
 近年新形インフルエンザや、新形肺炎などが、各国で流行の兆しを見せている。上気道の弱い私なぞ、そんな病気にかかったら、イチコロかもしれない。しかし、むざむざイチコロになるのを、お待ち申し上げるのは、まっぴらごめんである。まだ中年世代の私は、この世でやり残していることがたくさんあると思うので、そう簡単にイチコロされるわけにはいかない。
 すると、いかにそれらを予防するか、ということになるのだが、国としての対策や、世界的な対策は、国連や国にがんばってもらうしかない。私個人の問題を離れてしまうし、私の責任に帰するところでもない。しかし、自分の喉を、極力良好に保つというのは、個人でも出来る対策である。
 新形インフルエンザや、新形肺炎を、ネットで買った湿度計や、空気清浄機で防ぎきれるとも思えないけれど、少なくとも、普段の風邪の予防には、まあ有効であると思える。
 今日電車で、重たそうな空気清浄機を二人で持っている、成人の子どもと母親を見た。彼らは量販店で買った空気清浄機を、下げて家まで帰り、今晩早速置いてみるのだろうが、私はネットで注文して、簡単に設置することが出来た。これはまあ、通販、それもネット通販の恩恵であろう。
 今や風邪対策グッズすら、ネット通販。そういう時代なのだ…。そう、今だ痰の出る咳をしながら、思うところである。
(完)

※この作品が面白いと思った方は、恐れ入りますが下の「投票する」をクリックして、アンケートに投票して下さい。今後の創作の参考にさせていただきます。アンケートを正しく集計するため、接続時のIPアドレスを記録しますが、その他の情報は収集されません。

投票する