2006年6月10日号

昨今郵政公社雑感<2>

 
   昨今郵政公社雑感<2>
 

前号からの続き)
 郵便局はやがて民営化されるという。民営化のために、今から準備するのだとも。
 そもそも民営化していいのかどうか、というのは、ほとんど細かく議論せず、単に是か非か、つまりは0か1かみたいな選択を、国民に迫って、自民党が大勝したのがこの前の衆議院選挙だった。あの時に、具体的なサービスのビジョンは、ほとんど示されてないように思う。私たち利用者が、一番問題に思うのは、全国的に統一料金の現在が、どう変わるのかとか、やたら過疎の進む地域の郵便局は、本当に廃止されないのかとか、これからどういう新サービスが出来るようになるのか…というような、直接的な未来像である。
 しかし、そのあたりは、任期が過ぎたら、横滑りしてしまう大臣や官僚が、場当たり的な答弁を、繰り返していたように思う。その答弁には、何も「縛り」がかかっていない。
 縛りをかけない民営化がもたらすものは、儲け主義にただ邁進し、あげくのはてに、大事故を起こして107人も人命を奪ってしまったJR西の事故を見るまでもなく、決していいことばかりではない。
 民間企業になるのだから、利益追求第一というのは、まあ当たり前だけれど、民営化ということと、儲け第一主義・安全二の次・不採算サービス切り捨てというのは、等価でもあるまい。
 これを郵便局の未来像に当てはめると、やっぱり不採算サービスの切り捨て、いたずらな労働強化というようなシナリオが想定できる。時間にルーズな配達も困るけれど、そういうシナリオを実行するために、いろいろなことを「マニュアル的」または、「機械的」に進められるのも困る。そんなことを、多くの国民は望んでもいまい。
 ただ郵便局に、なんだか危機感がないというのか、一体感が失われているというのか、よくない空気が漂っているのも確かだと思う。
 わずか1センチ程度の長さオーバーな郵便物を見て、「これは送れません」と言ってのけたK駅前郵便局(普通郵便の限界は、長さ60センチ以内)、現役郵便局員なのに、イベント限定の電車共通乗車カードを3セット買って、転売して儲けたり、局内の備品をネットオークションにかける、顔見知りの顔見知りであるSH君。こういうことが、日常的に露呈している現在のままで、民間に伍してやっていけるのか?。その疑問は尽きない。
 ただ、ひとり郵便局だけが、問題を抱えているわけでもない。例えばS運輸、時間にルーズというか、守らないのは、郵便局のはるか上を行っていた。
 発送した人が、「午後1時頃配達願います」と、手で書き、さらに「配達指定・午後1時より遅くても早くてもだめ」というステッカーが貼られているにもかかわらず、玄関のチャイムを鳴らし、10時頃にやってきた。
 玄関のチャイムを鳴らすということは、もう、そこにいるということであり、インタホンを取ったこっちとしては、「いえ、1時まで待って下さい」とは言えない。仕方がないので、別の仕事を中断して、玄関まで取りに出る。これまた全く困る。これでは時間指定の意味など、全くないではないか。
 まあ、人間のやっていることだから、多かれ少なかれ、何事かは改善すべき点があるのは、仕方ないとは思うが、こと郵便局に関しては、国鉄の民営化前夜のように、局内の雰囲気が、曇りがちなのではないかと推察する。なんとなく、間違いが多くなったのも気になるし…。
 郵便局の民営化が、正直成功するとは思えないが、さりとて、今までのままでいいとも思えない。
 結局「親方日の丸」をしょってしまって、人減らしと「日勤教育」には熱心だが、内外の声が届きにくい組織に、よりなっていってしまったJRの轍を踏まずに、いくらかでも、普通に市民の声が届く郵便局であってもらいたい。
 本当の市民の望みは、窓口がぺこぺこしていることだけでは、ないはずなのだから。

(完)

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