その先のコメットさん☆へ…2003年前半

 「コメットさん☆」の放送がそのまま続くと、第86話からは2003年になります。このページは2003年前半分のストーリー原案で、第108話までを収録しています。2003年の後半分第109話から第131話まではこちらです。

 各話数のリンクをクリックしていただきますと、そのストーリーへジャンプします。第86話から第108話全てをお読みになりたい方は、全話数とも下の方に並んでおりますので、お手数ですが、スクロールしてご覧下さい。

話数

タイトル

放送日

主要登場人物

新規

第86話

振り袖のコメット

2003年1月上旬

コメットさん☆・沙也加ママさん・景太朗パパさん・ツヨシくん・ネネちゃん・ケースケ

第87話

秘密のスピカ

2003年1月中旬

スピカさん・コメットさん☆・柊修造さん・ラバピョン・景太朗パパさん・沙也加ママさん

第88話

私の夢は?

2003年1月下旬

コメットさん☆・人間ラバボー・プラネット王子

第89話

コメット☆夢の夜明け

2003年2月上旬

コメットさん☆・景太朗パパさん・沙也加ママさん・メテオさん・スピカさん

第90話

ケースケ夢のゆくえ

2003年2月上旬

ケースケ・景太朗パパさん・コメットさん☆・沙也加ママさん(・メテオさん)

第93話

ミントティーの香り

2003年3月上旬

コメットさん☆・プラネット王子

第94話

ドレスコンテストのミラ

2003年3月上旬

ミラ・コメットさん☆・プラネット王子・メテオさん・留子さん・カロン

第96話

コメットの誕生日

2003年3月下旬

コメットさん☆・景太朗パパさん・沙也加ママさん・人間ラバボー・人間ラバピョン・(ツヨシくん・ネネちゃん)

第97話

写真が写すかがやき

2003年4月上旬

コメットさん☆・プラネット王子

第98話

桜咲く星国とコメットの心

2003年4月中旬

コメットさん☆・景太朗パパさん・沙也加ママさん(・プラネット王子)

第100話

桐の木の秘密

2003年4月下旬

コメットさん☆・沙也加ママさん・ツヨシくん・ネネちゃん・桐の木

第101話

お泊まりは星空の下

2003年5月中旬

メテオさん・コメットさん☆・ツヨシくん・ネネちゃん・沙也加ママさん・景太朗パパさん

第102話

心ののぞき見

2003年5月中旬

メテオさん・コメットさん☆・カロン・プラネット王子

第103話

季節はずれの嵐

2003年5月下旬

コメットさん☆・景太朗パパさん・他
※挿入歌あり=歌部分にジャンプ

第104話

ごめんなさいの仕方

2003年6月初旬

プラネット王子・コメットさん☆・メテオさん・カロン

第105話

コメットさん☆星国へ帰る

2003年6月上旬

コメットさん☆・景太朗パパさん・沙也加ママさん・ツヨシくん・ネネちゃん・王様・王妃様

第106話

ハモニカ星国の海開き

2003年6月中旬

コメットさん☆・海の妖精・日照りビト・人間ラバボー・人間ラバピョン・牛ビト・星人多数・星の子多数・王様・王妃様・ヒゲノシタ

第107話

星国と地球の遠い絆

2003年6月下旬

王様・コメットさん☆・ラバボー・ラバピョン・ねこ車掌・景太朗パパさん・沙也加ママさん
※新ドレスの設定あり=ジャンプ

第108話

王子の特訓

2003年6月下旬

メテオさん・コメットさん☆・プラネット王子・ミラ・カロン・ラバボー・ムーク

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★第86話:振り袖のコメット−−(2004年1月上旬放送)

 お正月。コメットさん☆の星国でも、新年を同じように祝うのだが、星国は暦の関係で、おおよそ734日に1回しか新しい年にならない。だからコメットさん☆にとって、地球での1年は、とても早く感じられる。また地球は星国より少し寒い。沙也加ママさんから聞いたところでは、もっと寒い地方もあるのだという。そんなに寒かったら、いつも風邪をひいちゃうな…などと思うコメットさん☆。沙也加ママさんは、コメットさん☆に、本当に「上から下まで」いろいろな服を買ってくれる。ことに、去年の年末、コメットさん☆が自ら、「星ビト」であることを知らせてから…。そして、とても心配してくれる。いつも「寒くない?」と。部屋の床には、電気カーペットまで入れてくれた。

 三が日も過ぎようかというある日、沙也加ママさんが不思議なことを言いだした。コメットさん☆にとっては。

沙也加ママさん:コメットさん☆、振り袖って着たことある?。

コメットさん☆:ふり…そで?。言葉は聞いたことがある気がしますが、それはなんですか?。着るっていうことは…、洋服ですか?。

沙也加ママさん:ううん、違うのよ。和服っていうのよ。わ・ふ・く。日本の昔からある着物の一種で、女の人や女の子が着る、きれいな着物。

コメットさん☆:…和服…。着たことないです。どんな着物ですか?。

沙也加ママさん:そっか。じゃコメットさん☆も着てみる?。今年はツヨシとネネには着せてみようかと思っていたところ。あ、ツヨシは羽織袴って言う、男の子用だけどね。

コメットさん☆:…なんか面白そう。それってどこかで見られますか?。

沙也加ママさん:じゃ、ちょっといらっしゃい。私がコメットさん☆さんくらいの時に、ちょうど何度か着たのがあるの。それでよければ着せてあげるわ。それでね、はねつきでもするといいかもよ。ちょっと着るのに時間がかかるから、そのつもりでね。

コメットさん☆:はい!。…はねつき?。それはなんですか?。

沙也加ママさん:コメットさん☆は、割と日本の習慣は知らないな〜。うふふふ。無理もないかもね。着たら教えてあげるわよ。いろいろ。

コメットさん☆:…はあ。お願いします。えへっ。

 コメットさん☆は、ちょっと恥ずかしそうに笑った。沙也加ママさんも微笑みながら、タンスのある部屋に、コメットさん☆を連れていった。

沙也加ママさん:さあ、これよ。“本裁ち”で作ってあるから、サイズの直しはできるけど、たぶんそのままで大丈夫だと思うわ。

コメットさん☆:ほんだち?。すみません、わからないことだらけです。

沙也加ママさん:いいのよ。ふふふっ…。

 沙也加ママさんは、たとう紙に包まれた振り袖をタンスから出して、広げて見せた。柄は桜の花があしらわれた、全体に模様の入ったもの。

コメットさん☆:わあ、きれい。あ、桜の花の模様なんですね。

沙也加ママさん:ああ、そうね!。結構前のことなんで、忘れていたわ。ほんと、コメットさん☆の好きな桜の花の柄ね。

コメットさん☆:これが着られるんですか。なんだかうれしいな。この振り袖って…、小町通りとか、若宮大路で同じような感じのを着ている人見たことあります。若い女性が着ていたのは、この振り袖っていうのですよね。

沙也加ママさん:多分そうよ。コメットさん☆も、“若い女性”じゃない?。

コメットさん☆:え…、そ、そう…でしょうか。

 コメットさん☆は、なんだか恥ずかしいような気持ちになった。

 

 さて、着付けが終わって、コメットさん☆の晴れ姿は、みんなに披露されることに。

沙也加ママさん:どう?、着た感じは。苦しい?。

コメットさん☆:少し腰のあたりが苦しいです。でも大丈夫です。

沙也加ママさん:帯はきつく締めるから、ちょっと苦しいかもしれないわ。あまり苦しかったら言ってね。ちょっと鏡の前に立ってみて。どう?。

コメットさん☆:はい。わぁ…。…きれいな着物…。

沙也加ママさん:コメットさん☆、とってもかわいいわね。きれいよ。サイズも大丈夫ね。

コメットさん☆:……。(私が私でないみたい…)。

 コメットさん☆は、恥ずかしそうに、顔を紅潮させながら、鏡の中の自分を見た。はじめて着る振り袖。それはまるで、きらびやかなドレスのよう。星国では、あまりドレスにいい思い出も、特にはないけれど、ここは星国じゃない。そして、この着物は、いつもとまったく違った“藤吉コメット”を、見る人の目に印象づけそう…。そう思うと、少しドキドキするような、不思議な感覚を覚えた。

ツヨシくん:ママー、今日はねつきするの…、あっ!。すげー、コメットさん☆が…変身してる。

コメットさん☆:…。ツヨシくん?。

 コメットさん☆は、鏡から後ろを振り返った。ツヨシくんが、目を丸くしてびっくりしている。

ツヨシくん:コメットさん☆きれい。パパー!…。

 ツヨシくんは、ちょっと気恥ずかしいのか、景太朗パパさんのところに行ってしまった。その様子を遠くで見ていたネネちゃんがやってきた。

ネネちゃん:わあ、コメットさん☆きれい。およめさんみたい!。

コメットさん☆:…およめさんって…?。

沙也加ママさん:結婚式で、和服の衣装ってあるのよ。ウエディングドレスだけじゃないの。ネネはそのことを言っているんだと思うわ。

コメットさん☆:そうですか。この衣装が、結婚式の衣装なのかと思っちゃった…。

沙也加ママさん:うふふふふ…。違うわよ。日本の昔からある着物も、浴衣とか、この振り袖とか、いろいろあるのよ。振り袖は、今は晴れ着と言って、特別な行事とかのときに着るものね。さあ、コメットさん☆、ちょっと歩いてみて。すその線が乱れるから、少し内股気味に歩幅を狭めて歩いてね。そうしないとみっともないわ。

コメットさん☆:はい。やってみます。

ネネちゃん:ママー、私にも着せてー。

沙也加ママさん:はいはい。今やりますよー。ちょっと待っててね。

 コメットさん☆は、少し歩き方や、袂を気にした手ののばし方を練習していた。すると景太朗パパさんが、カメラにフィルムを入れながらやってきた。

景太朗パパさん:おっ、コメットさん☆きれいだなぁ。よく似合っているよ。少し庭ででも写真撮ろうか。

コメットさん☆:…恥ずかしいです。そんなに言われると…。

 コメットさん☆は、恥ずかしがって赤くなった。

 

 やがて準備ができたので、縁側の前の庭に出て、みんなで写真におさまることになった。ツヨシくんもネネちゃんも和服でおめかし。

景太朗パパさん:今年もいいことが、たくさんあるといいね。はいみんなこっち向いてー。撮るよー。

ツヨシくん:今年もいいことたくさん!。

ネネちゃん:ネネちゃんもたくさん!。

コメットさん☆:私も、いいことがたくさんありますように。

沙也加ママさん:パパ撮った?。じゃあみんなはねつきしましょ。コメットさん☆は知らないわね。教えてあげるわね。

コメットさん☆:あ、はい。お願いします。

沙也加ママさん:そんなにかしこまらないで。着物を着ると、気持ちも変わっちゃうかな?。…えーと、これが羽子板よ。桐でできているのが軽くていいのよ。これはちゃんと桐でできているわ。それからこれがハネ。利き手で羽子板を持って、ハネを落とさないように二人で打ち合うのよ。相手から飛んできたハネを打ち返せないと負け。

 沙也加ママさんは、羽子板とハネを取り出して、コメットさん☆に説明をはじめた。

コメットさん☆:面白そうですね。スポーツの一種ですか?。

沙也加ママさん:…す、スポーツってわけじゃないわね。まあ、お正月に昔はよくやっていた遊びの一種かな?。ほら、ツヨシとネネも、ウッドデッキの前でやったら?。パパも写真ばっかり撮ってないで。

景太朗パパさん:えっ!?、ぼくもやるの?。

沙也加ママさん:もちろんよ!。

景太朗パパさん:…ぼくはカメラマンに徹していたかったのにな…。

沙也加ママさん:何か言った?。パパ。

景太朗パパさん:いいや、何も言いません!。

 沙也加ママさんは、羽子板の持ち方から、ハネの打ち方、相手との距離の取り方など、コメットさん☆に手とり足とり教えてくれた。コメットさん☆は、パパさんや、ママさん、ツヨシくんとネネちゃんを相手に、一生懸命はねつきをした。

コメットさん☆:(わあ、なんだか、心がうきうきするな。ちょっと動きづらいけど、はねつき面白い。うふっ。)

 その時、門を開けて誰か入ってきた。

ケースケ:師匠、こんにちはー。新年おめでとうございまーす。

 ケースケは、門を開けて、通ってから閉め、そして玄関脇まで来た。そのまま門の脇にあるウッドデッキの横を通り過ぎようとして、コメットさん☆を見た。

ケースケ:あっ!。コ、コメット、なな、何で…そ、そんな格好を。

コメットさん☆:あ、ケースケ…。新年おめでとう…。何でって…、沙也加ママさんが着せてくれたもの…。

 ケースケは、羽織袴姿でやってきたのだ。

ケースケ:…そ、そ、そうか…。なな、なんていうか、その…、に、似合っているっていうかー…。

沙也加ママさん:ケースケったら。ふふふふっ…。

景太朗パパさん:ケースケ、何を言っているんだ?。はっきり言えよ。はははは…。

 ケースケも、コメットさん☆も、二人とも顔が赤くなった。

景太朗パパさん:ちょうどいい。ケースケもコメットさん☆も晴れ着なんだから、二人そこに並びなよ。写真撮ろう。

ケースケ:…い、イヤですよ。そ、そんな、勘弁して下さい。恥ずかしいっす!。オオオ、オレ、か、帰ります。

コメットさん☆:待って、ケースケ。いっしょにはねつきしようよ。

ケースケ:…は、はねつきって…。そんなの女の遊びじゃんか…。

ツヨシくん:あ、ケースケ兄ちゃん古ーい。そういうのって、“だんじょびょうどう”に反するって、ママもパパも言っていたよ。

ネネちゃん:言ってた、言ってた。ケースケお兄ちゃん古い!。

ケースケ:…うっ…。わ、…わかったよ。やるよ。ネネやツヨシにまでそう言われちゃかなわないな…。…ああ、オレ何しに来たんだろう…。

景太朗パパさん:まあ、それは遊びに来たんだろ?。違うか?、ケースケ。

ケースケ:師匠…。そりゃそうですけど…。

沙也加ママさん:コメットさん☆は、今日はじめてはねつきしているんだから、ケースケ、手加減してあげてね。

ケースケ:…は、はいっ。

沙也加ママさん:うん。いい返事だ。

 せっかくの晴れ着が汚れてしまうから、顔に墨こそ塗らなかったが、みんなで楽しくはねつきをした。景太朗パパさんは、そんなみんなをニコニコしながら写真に撮る。コメットさん☆がケースケに打ち込まれると、沙也加ママさんが強烈な打ち込みをケースケに返したり…。そして、はねつきが終わると、家の中に入って、おせち料理を食べたり、カルタ取りをしたり…。コメットさん☆も含めた藤吉家全員と、ケースケのお正月はにぎやかだった。

 特別な日に着るという、晴れ着の振り袖を着て、特別な時間を過ごすコメットさん☆。コメットさん☆は今年一年、こういう時間が長ければいいなあと思いつつ…。

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★第87話:秘密のスピカ−−(2003年1月中旬放送)

 昨年の12月、ネネちゃんが本棚から持ち出した本、「ハモニカ星国の歴史」のおかげで、コメットさん☆が星国人であることが、沙也加ママさんにわかってしまった。そうなった以上、もういままでのように、自分の身分と正体を、隠しておくのはイヤだと思ったコメットさん☆は、それまで自らの秘密を知っていたツヨシくん、ネネちゃん以外に、景太朗パパさんと沙也加ママさんにも、自分がハモニカ星国からやってきた星国人で、地球に「かがやき探し」にやってきていることなど、全てを隠さずに告げた。それで星国に帰らなければならないかもしれないと思ったが、意外にも二人は、それほど驚かず、逆に不思議な力を持つコメットさん☆を受け入れ、あらためて長くいて欲しいと言ってくれた。

 そうして、コメットさん☆は、いつもとほとんど変わらない生活を、また新年になっても送り続ける。今まで心の隅で、どこか隠し事をしているような気分で、イヤだった心の曇りも、さっと晴れたような気持ちだ。ただ、コメットさん☆には、まだ引っかかっていることがあった。

 景太朗パパさんは、「この家以外には言わないほうがいいだろう」と言い、性質を考えても、ケースケは信じてくれないだろうと思ったから、ケースケには今まで通り、自分の出身について、何もしゃべっていない。オーストラリアに行っていたケースケに、星国から再度地球に向かうとき、わずかな時間会いに行ったが、ケースケは、今でもそれを時々不思議がるので、真実を告げたほうがいいのかもとも思うけど…。

 それもさることながら、スピカさんのことはどうしようか。スピカさんが星国人であることを、もし景太朗パパさんと沙也加ママさんにしゃべったとしても、二人はたぶん何事もなかったかのように、事態としては受け入れてくれるだろう。だが、何かの拍子に、スピカさんの夫、修造さんにそれが知れてしまったら…。コメットさん☆としては、予想がつかない。それに第一、スピカさんに、自分の今度のことを話していない。あんなにいつも相談に乗ってくれる、地球で唯一の肉親の叔母さまに、まだ知らせていない…。そう思うと、コメットさん☆は、なるべく早く知らせて、それからスピカさんのことを、景太朗パパさんと、沙也加ママさんにしゃべってもいいかどうか、聞かなくてはと思う。

 コメットさん☆は、星のトンネルを通って、スピカさんに会いに行った。とりあえず、景太朗パパさんと沙也加ママさんには、わからないように、ウッドデッキからそっと…。また隠し事をしているようで、ちょっと沈んだ気持ちになりながら…。

コメットさん☆:おばさま、新年おめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

スピカさん:あら、コメット、かしこまってどうしたの?。新年おめでとう。よろしくね。

コメットさん☆:…実は…。

 コメットさん☆は、ことの顛末を全てスピカさんに話した。

スピカさん:…そう。それは思い切ったことだったわねぇ。でも、コメットは、そのことを後悔している?。

コメットさん☆:いいえ。していないです。だっておばさま、私うそついているのはイヤだったもの…。いつも、星力のこととか、夜に突然出かけたりするのを、ちゃんと説明できないのは、悪いなぁって…。

スピカさん:…そうね。それで失うものがなかったのなら、それでよかったんじゃないかなぁ。私はそう思うけど。しょうがないわ。今度のネネちゃんのような子どものいたずらは、その身に危険が及ぶのでなければ、叱れないもの。でも、藤吉さんたちが、あなたを何事もなかったように受け入れてくれたのは、とてもやさしい思いやりだと思うな。

コメットさん☆:…よかった…。ありがとう、おばさま。私が叱られるかと思った…。…あ、でも私、私のことはいいとしても、…あの、…その、おばさまのことを…、どうしようと思って…。

スピカさん:…私のこと?。

 スピカさんは、とまどったような顔を一瞬したが、すぐそれは、自分のことを、藤吉夫妻に伝えるかどうかであることを理解した。

スピカさん:…それはつまり、私がハモニカ星国出身であることを、藤吉さんに言ってもいいか、ということよね?。

コメットさん☆:…はい。

 コメットさん☆は、小さな声で答え、スピカさんは、しばらく黙って考えていた。

スピカさん:…あなたの話からしても、藤吉さんが誰かにしゃべっちゃうことはないと思うけど…、もしどうかして、彼が、修造さんが聞いたら驚くだろうなぁ…。それで急にどう、ということはないと思うけど…。彼は割と現実主義者だから…。

コメットさん☆:……。

スピカさん:…でも、コメットが、この先ずっと黙ってなくてはならないというのも、なんだかかわいそうな気がするわ。

修造さん:おおい、美穂、誰としゃべってるんだい?。

 とっさにスピカさんは、そばにあったコードレスホンの受話器を取って耳に当てた。コメットさん☆はいすの下に隠れた。

スピカさん:そうなのよ…。それでね…長野の高原野菜が最近高値でね…。

修造さん:…あ、なんだ電話か。誰かと話しているのかと思ったよ。耳が遠くなったのかな?。まだそんな歳じゃないはずなのに、とほほ…。

 修造さんは、玄関前の雪かきに行ってしまった。それを見たスピカさんは、コードレスホンを置き、コメットさん☆はいすの下から這い出して、二人顔を見合わせた。

スピカさん:…そうね、じゃこうしましょ。ずっとコメットが黙っているのも、何かと不都合があるかもしれないから…。

コメットさん☆:…おばさま?。

スピカさん:コメット、あなたは夏に八ヶ岳に行ったとき、偶然出会った女の子がいた。その子は星国の人だった。コメットやメテオさん、それに王子の他に、地球に降り立っていた星国の人間はもう一人いた。それが私だったということにしましょ。それでお供はラバピョン。

コメットさん☆:…え!?。でもそれじゃ同じことなんじゃ…。

スピカさん:うふふふ…。大丈夫よ。ちょっと待ってて。…あなたー、ちょっと足りない食材を買ってくるから、少しの間みどりを見ていてくれない?。

 スピカさんはコメットさん☆に答えると、修造さんに声をかけた。

修造さん:え?、ああ、わかった。いっといで。みどりは見ておくよ。

スピカさん:お願いねー。

 スピカさんはみどりちゃんの世話を、修造さんに頼むと、コメットさん☆を連れて、裏口から星のトンネルのそばまで来た。修造さんが家に入ったのを確かめると、バトンを取り出した。

コメットさん☆:おばさま?。…星力使うの?。

スピカさん:まあ見てて。

 スピカさんはバトンを高く掲げると、かつてコメットさん☆に星力を教えていた、少女時代の姿に戻った。びっくりするコメットさん☆。懐かしいスピカさんの姿に、感激もする。

コメットさん☆:おばさま!。わあ、懐かしいな…。

スピカさん:今から藤吉さんのところに会いに行きましょ。

コメットさん☆:ええーっ!?。…でも、どうするのおばさま。

スピカさん:あいさつしておけば、大丈夫でしょ?。さっき言ったように、あなたが出会った星国の女の子は、いまの姿のこの私。…どうかしら?。

コメットさん☆:…ああ、…なるほど。おばさま、すごいシナリオ…。

 コメットさん☆は、なんだかスピカさんの、意外な一面を見た気がした。

 

 星のトンネルをくぐって、ラバピョンを腕に抱き、星国のドレス姿で藤吉家のウッドデッキに姿を現したスピカさん。コメットさん☆はさっそく、景太朗パパさんと沙也加ママさんを呼んだ。

スピカさん:はじめまして。スピカと言います。

ラバピョン:よろしくなのピョン。

コメットさん☆:八ヶ岳に行ったときに、お友達になった星国の女の…子のスピカさん。とお供のラバピョンちゃんです。

景太朗パパさん:そうか、コメットさん☆の星国のお友達かぁ。いらっしゃい。ぼくは景太朗。よろしくね。

沙也加ママさん:八ヶ岳から来たの?。遠くからよく…。あ、星力っていうやつで来たのかな?。私は沙也加。よろしく。お菓子があるから、お茶でもどうぞ。

 沙也加ママさんは、せっかくなので家の中に招き入れようとするが…。

スピカさん:あ、どうぞ、お構いなく。私、これから、コメット…さん☆と出かけますから。

沙也加ママさん:あらそう?、それは残念ねぇ…。でも、その格好で?。

スピカさん:…あ、あはははは…、ほんのそこまで。

 星国の派手なドレスのままであるのを、忘れていたスピカさん。赤面しながら答えると、コメットさん☆の袖を引っ張った。

スピカさん:じゃ、失礼します。

コメットさん☆:ちょっと行ってきます。すぐ戻りますから。

沙也加ママさん:ほんと残念ねぇ…。また寄ってね。すぐ来られるんでしょ?。

スピカさん:はい。ではまた今度。

 スピカさんとコメットさん☆は、藤吉家の前の坂を下って、曲がり角を曲がった。

スピカさん:…どう?。コメット。これでいいんじゃないかな?。

コメットさん☆:…おばさま、ありがとう。面白かった…ふふふっ。

スピカさん:あー、笑ったなぁ。これでもいろいろ考えたのよ。…でもね、人を不幸にしないうそなら、時には許される…。そういうことなんじゃないかな?。

コメットさん☆:あっ、…そうですね、おばさま…。そうなんだ…。

 スピカさんは、コメットさん☆が見送る中、ウッドデッキのところから、星のトンネルを通って帰っていった。コメットさん☆は、スピカさんが、別れ際に言った言葉を思い出しながら、ウッドデッキから遠くの海を見つめた…。

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★第88話:私の夢は?−−(2003年1月下旬放送)

 ある朝、ツヨシくんとネネちゃんを保育園に送りだしてから、コメットさん☆は冬の海を見に行った。ラバボーをなんとなく人間の姿にして。ツヨシくんとネネちゃんも、この4月からは小学校。ずいぶんしっかりしてきたようにも思う。

 稲村ヶ崎の海岸を、流木を拾ったりしながら、ゆっくり歩くコメットさん☆とラバボー。冬の朝の風は冷たいが、ピンと澄んでいる。

コメットさん☆:ラバボー、今日はフジサンが見えるよ。

 江ノ島と小動(こゆるぎ)の向こうに、くっきりと見える富士山。

コメットさん☆:あの山は、この国で一番高い山なんだって。景太朗パパさんが言ってた。

ラバボー:そうかボ。きれいな姿だボ。

コメットさん☆:でもゴミが多くて、登るとけっこう汚いんだって。

ラバボー:そうなのかボ?。地球人は、なんでゴミなんて捨てるんだボ。いまだによくわからないボ。

 そんな富士山を、大形のフィルムカメラで、熱心に撮影している少年を見かけた。さっそく声をかけるコメットさん☆。

コメットさん☆:こんにちは。

少年:こんちは…、あ、お、お前!。

コメットさん☆:ああー!、殿下、…何してるんですか、こんなところで。

 なんと少年は、あのプラネット王子だったのだ。カメラマンコートを着て、衣装はいっぱしのカメラマンだ。

プラネット王子:何って、富士山を撮っているに決まっているじゃないか…。…おっと。

 王子は、人の姿になっているラバボーを、コメットさん☆のうしろに見つけて、ちょっと遠慮した。

コメットさん☆:紹介しますね。ラバボーです。

ラバボー:タンバリン星国の王子さま、よろしくお願いしますボ。

プラネット王子:ええっ?、あのゴムマリみたいなラバボー?。まるっきりわからなかった。…新しい彼氏かと思ったよ。

コメットさん☆:失礼ね!。そんなんじゃないよ、もう!。

 コメットさん☆は、ちょっと口をとがらせた。

プラネット王子:悪い、悪い。すまん。気を悪くしないでくれ。…ところで、みんな元気か?。

 王子は申し訳なさそうな顔をして、富士山のほうに向き直り、シャッターを切りつつ聞いた。

コメットさん☆:はい。私もメテオさんも、ラバボーも。ミラさんやカロンくんは?。

プラネット王子:オレといっしょに住んでいるよ。オレ、今藤沢の先の、湘南台ってところの写真館で、世話になっているんだ。

コメットさん☆:へぇーっ。

プラネット王子:写真の勉強しててさ、面白いものだから、写真館で働きながらってわけさ。ミラとカロンも、学校行きながら、店の手伝いをしているよ。

コメットさん☆:…そうですか。藤沢の先って、あんまり行ったことないから、よくわからないけど。

プラネット王子:寄っていかないか?って言いたいところだけど、今日はこれから新宿に、お客さんから頼まれた、カメラのパーツを探しに行かなけりゃならないんだ。よかったら、いっしょに行かないか?。

 コメットさん☆は、ちょっと躊躇した。

ラバボー:姫さま、大丈夫かボ?。

 ラバボーも警戒している。

プラネット王子:オレと行くのはいやか?。別にムリヤリお妃にしたりしないよ。…あの時は…。

 王子はコメットさん☆から、視線をそらした。

プラネット王子:…あの時は、オレも、心の整理に時間がかかって…。

コメットさん☆:えっ?。

 コメットさん☆は、王子がつぶやくように語ったその言葉を、すぐには理解できなかった。王子は、自分の気持ちをただ言ったんじゃなかったのだろうか?…。そんな疑問が頭をかすめた。

 

 コメットさん☆は、沙也加ママさんに電話をしてから、王子といっしょに、江ノ電と小田急線で新宿へ向かった。

 新宿に着いて、王子は西口の中古カメラ店で、必要なパーツを買い、昼食を三人で食べた。彼は王子らしく、コメットさん☆には支払いをさせなかった。

 そして帰り、電車は新宿を発車する時点で既に混んでいた。三人は一番前の車輌、運転室の後にある狭い空間に乗った。電車が新宿を発車すると、王子はいろいろな話をしてくれた。が、電車が東京都内を抜け、神奈川県に入る頃、王子は未来の話をはじめた。

プラネット王子:オレはお前のメモリーボールに入っていたという、メモリーストーンを見て、地球に「かがやき」探しをしに、あらためて行こうと思ったわけだけど、なかなか最初は勝手がわからなくて、ミラとカロンが住んでいたマンションに、しばらく住んだりもしたんだ。そのうちに、今の写真館で世話になることになったのさ。写真館の主人は子どもがいなくて、それなりに歓迎してくれた。それからオレに写真の技術を教えてくれてさ、お前も撮ってみろと。それでオレも、写真ってのは、本当に「真」を「写す」のかって、興味がわいて、カメラマンになるのもいいなって、だんだん希望を持つようになって…。だからオレはもっと勉強して、個展を開けるくらいの写真家になりたいと思うようになったんだ。もっとも被写体は、身近なものだけどな。でも身近なものに、いろいろなかがやきって、あるんじゃないかって、思えてさ。ごめん。オレばっかりしゃべってるな。…ところで、お前の夢ってなんだ?。

コメットさん☆:…えっ?。

 いきなり自分に話をもってこられ、はっとするコメットさん☆。

プラネット王子:今日の夕食のメニューとかじゃないぜ。はははっ。そういうのは単なる希望。夢ってのはさ、もっと未来にこうしたいとか、こうなりたいとか…。

 王子は冗談を交えて、ニコニコしているが、実はコメットさん☆のそれに興味津々だ。一方コメットさん☆は、考え込んでしまった。その様子に気付いた王子は、表情から笑みを消して、まじめな顔になった。

コメットさん☆:…私の夢って…。…何だろう。あんまりはっきり考えたことなかったし…。

プラネット王子:ま、そう固く考えるなよ。…変なこと言っちまったかな、オレ。

 そして会話は途切れた。

 電車は湘南台駅に着き、王子は「じゃあまたな。今度は寄っていってくれよ。ミラとカロンも待っているからさ」と言って、店の場所を記した名刺をコメットさん☆に手渡し、降りていった。

 コメットさん☆は王子が降りてから、ずっと押し黙ったままだった。ラバボーは、心配になって尋ねた。

ラバボー:姫さま、どうしたんだボ?。

コメットさん☆:…うん。王子の言った夢って、私に本当にあるのかなって…。

ラバボー:姫さま…。

 ラバボーは、それに何て答えたらいいか、わからなかった…。

(次回に続く)

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★第89話:コメット☆夢の夜明け−−(2003年2月上旬放送)

景太朗パパさん:え?、夢かぁ…。夢って…、将来かなうといいなっていうような願いかなぁ。でも、どうしてそんなこと聞くんだい?、コメットさん☆。

コメットさん☆:私…、自分の夢ってなんだかわからなくなっちゃって…。それで、地球の人たちの夢って、どんなんだろうって思ったからです。

景太朗パパさん:うーん、そうかぁ…。コメットさん☆の年頃だったら、将来なりたいものとかが一般的だよね。どんな仕事をしたいかとか。

 コメットさん☆は、家に帰ってから、景太朗パパさん、沙也加ママさんに、自分の疑問をぶつけてみた。

景太朗パパさん:ぼくは学生時代、世界を旅するヨットマンとか考えていた時期もあったけど、その後は一流の建築士になって、いろいろな設計をしてみたいとか考えていたなぁ。ま、一流かどうかはわからないけど、一応両方ともかなったのかなぁ。

沙也加ママさん:私は小さい頃は、「およめさん」とか思っていたけど、それは「なりたいもの」というのとは違うわよねぇ。一時期は小説家が夢って思った時期もあったっけ。

コメットさん☆:…そうですか。私、地球人じゃないから、わからないのかな…。

 コメットさん☆は悲しそうな目になった。

沙也加ママさん:コメットさん☆は、星国のお姫様だから、私たちの昔持っていた夢なんて、あまり参考にはならないかもしれないけど、一つ言えることは、夢ってその人の成長とともに、ずいぶん変化するものってことかなぁ。

コメットさん☆:…はぁ。沙也加ママさんは、どうして小説家にならなかったんですか?。

沙也加ママさん:だって、いっくらコンテストに作品を送っても、入選しないんだもの。それで向いてないなって、あきらめちゃった。夢って持ってるだけじゃだめね。強い努力が必要かな。それをかなえるには。

 景太朗パパさんと沙也加ママさんも、そうは言ってみたけれど、コメットさん☆の要求する答えとは、質の違うものかもしれない難しい問題だと感じ、あまり実のある話はできなかった。

 コメットさん☆はメテオさんに会いに出かけた。メテオさんの部屋で、話を聞いた。

メテオさん:私の夢ぇ?。そうね、イマシュンといっしょにデュエット曲で本格的に歌手デビューして、ツアーで全国を回って、CDのジャケットにもなって…ってなところかしら。

コメットさん☆:いいなぁメテオさんは。私そんなにいろいろ出てこないよ…。

メテオさん:コメット、そんな弱気じゃだめだわ。……でも、いつかは私もカスタネット星国の女王になるのかも…。その時、いっしょに星国に来てくれる男性は、いるのかしら…。

 メテオさんは、ちょっと視線を落とした。

メテオさん:でも、でも、コメット、夢ってかなうものばかりじゃないわ。かなわないで終わる夢のほうが、多いんじゃなくて?。…私だって、「夢って何か?」なんて聞かれても、「夢とはこういうものです」なんて、答えられやしないわ。たぶん、それくらいつかみどころのないもの…。

 メテオさんの言葉に、はっとするコメットさん☆。「夢はかなうものばかりじゃない」。その言葉は胸にしみた。

 コメットさん☆は、また今度はスピカさんのところに、星のトンネルを通って聞きに行った。みどりちゃんにも会いたかったし。

 じっとみどりちゃんを見て、抱いてみたりしてあやすコメットさん☆。みどりちゃんの小さな手は、コメットさん☆をつかもうとする。そんな様子を見ているだけで、コメットさん☆は楽しいし、幸せだと思う。

 …でも、今日はもっと知りたいことがある。さっそくスピカさんに、コメットさん☆は話し始めた。王子に出会ったところから。

スピカさん:コメットは将来何になりたいの?。

コメットさん☆:そんなこと、ちゃんと考えたこと…、あったのかなぁ。なんとなく、星国に帰って、星の子たちと過ごすのかなって、思ってはいたけど…。

スピカさん:今地球で、何をしようとしているのかな?。恋人探し?。

コメットさん☆:ううん、そんなんじゃないです。地球の人たちの「かがやき」をたくさん見つけること…。

スピカさん:「かがやき」は、希望の光。誰かがその良心にしたがって、目標に向かうときに放つ目には見えない光のことよね。

コメットさん☆:うん、そうだと思う…。

スピカさん:かがやきを見つけるということそのものだって、夢と言ってもいいと思うな。でもね、夢っていうのは、いろいろあってもいいもの。ケースケくんと、もっと仲良くなりたいっていうのもそうだし、プラネット王子のことをいろいろ知りたいっていうのもそう。ツヨシくんとネネちゃんが、うまく学校になじみますようにって思うことだって…。本当は「希望」と同じものよ。少し大きさが大きいかな?。あなたが「こうしたい」とか、「何になりたい」とか、「かなえたい」と思う気持ちは、みんな夢。別にかなわなくてもいいものよ。だってかなってしまったら、それはもう夢じゃないでしょう?。だからそんなに難しく考えることはないし、プラネット王子だって、そんなに深い意味で聞いたわけじゃないと思うなぁ。それに、今すぐにわからなくてもいいんじゃない?。もう少しおとなになると、見えてくることだってあると思うな。

コメットさん☆:うーん、そういうものなの?。私なんだか自分がわからなくなっちゃった。

スピカさん:自分がどんな人で、何に向いているか、何になったらいいかなんて、わかっている人のほうが少ないと思うなぁ。私だって、今幸せだと思うけど、これから将来の夢は?なんて聞かれたら、困っちゃうかも。すぐには答えられないと思うわ。母親として、みどりが元気に育ってくれるのを見届けることは、夢に違いないけど、それだけかって言われたら…。

 スピカさんは一息ついてから続けた。

スピカさん:だからコメット、あなたくらいの年頃の子が、いちばんいろんな可能性があるんだから、どんなことだって夢になるのよ。あなたはハモニカ星国の女王さまになるかもしれないから、それも夢かもしれないけど、私みたいに地球が気に入れば、そこに住み続けたいっていうのだって、夢になると思うな。

コメットさん☆:…やっぱりそうなんだ。…おばさま、ありがとう。私の夢って、まだはっきりしないけど、地球の人たちの「かがやき」を見つけて、いつか星国をまとめたり、星の子を導いたりすることは、夢の一つだと思います。でも、そのほかの夢は、まだはっきり見つからないかも…。

スピカさん:それでいいんじゃない?。人ってね、みどりもそうだけど、ゆっくり成長するものよ。あなたもそう。そのゆっくりの成長の中で、いつか見つけられればいい。夢なんてそういうものだと思うな…。

 コメットさん☆の夢。それはほかの友だちや、まわりの人たちよりは少し見つけにくいところにあるようだ。それでもコメットさん☆の夢を、いっしょに見つけだし、それを応援しようという人が、まわりにたくさんいることは、確かなようである…。

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★第90話:ケースケ夢のゆくえ−−(2003年2月上旬放送)

ケースケ:師匠!、師匠!、受かりました!、夜間高校!。

 玄関の引き戸を、突然開けて駆け入ってくるケースケ。急いで仕事部屋から、出てくる景太朗パパさん。

景太朗パパさん:おっ、ケースケ、ほんとか!。よーし、よくやった!。おめでとう!。ママ、ママ、ケースケ合格だよ!。

ケースケ:ありがとうございます。師匠のおかげっす。見て下さい。合格通知!。

 景太朗パパさんとケースケの、大きな声を聞きつけた沙也加ママさんとコメットさん☆も、次々に部屋から玄関にやってきた。

コメットさん☆:ケースケ、合格…したの?。

ケースケ:あ、ああ。合格したぜ!。ほら。

 コメットさん☆にも、合格通知を見せる。

コメットさん☆:やったね!。あめでとう!。…春から、高校生、なんだね!。いいなぁ〜。うれしい!。

ケースケ:ははっ。なんだよ、オレが受かったんだぞ。まるで自分が行くみたいだな、高校へ。

コメットさん☆:だって…。ふふふっ。これってケースケの夢が、また一つ実現したってことでしょ。それがうれしいんだもん。

沙也加ママさん:実はね、コメットさん☆は、このところことあるごとに、ケースケは、ケースケはって。ずいぶん気にしていたのよ。

コメットさん☆:あー、ママさん、それはないしょにしておいて下さいよ。

 コメットさん☆は、赤くなりながら言った。

ケースケ:…そうか。サンキュ。オレのこと、だいぶ心配してくれたんだな…。

 ケースケはそういうと、自分の手を差し出した。ちょっとおずおずとその手をにぎり返すコメットさん☆。

景太朗パパさん:さあ、お祝いだ。ママなにか寿司でもとろうよ。

沙也加ママさん:そうね、パパ。はりきって注文しちゃうおうっと!。早くツヨシもネネも帰ってこないかしら。

コメットさん☆:あ、そうだ。メテオさんにも教えてあげよう。

ケースケ:あ、お、おい…。そんな、あちこち触れて回るなよ…。て…、聞いてねぇよ…。

 ケースケは、あきらめたように小声でぼやいた。沙也加ママさんは、電話で近所の寿司店に出前を注文した。コメットさん☆は、ティンクルホンで、メテオさんに電話をかける。

メテオさん:なんでわざわざカリカリ坊やの、高校とやらの合格を知らせてくるわけぇ…?。しょうがないわねぇ…でも、伝えておいて。おめでとうってね。何しろ私の命の恩人だから、いい加減なことも言えないわよ。…でも、コメットにも言っておくわ。おめでとう。じゃあーねー。

コメットさん☆:うん、ありがとう。メテオさん、ありがとう…。じゃあね。

 コメットさん☆は、うれしそうにティンクルホンを切った。そして、リビングに座っていたケースケに言った。

コメットさん☆:メテオさんがおめでとうって。よかったねケースケ。

ケースケ:…そ、そんなにいろんなところに教えるなよ…。恥ずかしいじゃないか。

コメットさん☆:いいじゃない。うれしいんだもの。

ケースケ:全く…しょうがねーなー。はははっ。

 そう言って笑ったケースケだったが、ふとコメットさん☆の様子を見ていて、不思議な感覚を覚えた。「高校に合格したのは、たしかにオレなのに、なんでコメットは、まるで自分のことであるかのように、喜んでくれるんだろう」と。そう思うと、それは少しとまどいにも似た感情なことに気付く。そんなコメットさん☆とは、自分にとって何なのだろうか…。ふとそんな考えも、頭をよぎった。なぜこんな時に、そんなことが頭をよぎるのか?。ケースケ自身にも説明がつかないことだが。

 大切な心の支え?。…それはそうに違いない。あこがれの子?。…それも多分そうだ。…恋人?。…それは…。そこまで思ったとき、コメットさん☆が呼んでいることに気付いた。

コメットさん☆:ケースケ、ケースケ、どうしたの?。ママさんが呼んでいるよ。お寿司が来るまで、とりあえず料理が少し出来たから、乾杯しましょうって。

ケースケ:ん、ああ、わりいわりい。ちょっと考えごとしててさ。

コメットさん☆:考えごと?。

ケースケ:ちょっと将来のこととかさ。さて、行こうかな。

 ケースケは、さっきまでの思いを断ち切りつつ、廊下を歩きながら思った。

ケースケ:(これから新しい生活に、オレは飛び込んでいく。高校を早く出て、ひたすら突き進むだけだ。コメットがオレにとって何なのか…。その答えはもう出ているのかもしれない。だが、オレは今は前に進むだけだ。)

 そんなケースケが思う、わずかな時間の心の動きを、知る由もないコメットさん☆は、無邪気にパパさん、ママさんと、手を取り合っていた…。

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★第93話:ミントティーの香り−−(2003年3月上旬放送)

 1月に王子からもらった名刺を手に、コメットさん☆は、王子に会いに行くことにした。かねてより、彼に聞きたいと思っていたことがあったのだ。それは星国のこと。トライアングル星雲のこと…。メテオさんに聞くのもいいし、それもいずれはと思うけれど、自分とメテオさんのどちらかを、なかば強引に結婚させてまで、星国を併合しようとしたのは、どうしてだったのか。1月には「ムリヤリお妃にしたりしないよ」と言っていたが、その言葉を信じていいのか…。そんな様子はなかったけれど、もしも…と考えると、それは怖い。イヤだ。

 コメットさん☆は、少しドキドキしていた。自分から王子に会いに行くことが、まるで「王子探し」をしているようだから?。否、それとも…。

 星のトンネルは使えないから、1月のように、江ノ電と小田急線を乗り継ぎ、コメットさん☆は、湘南台駅に降り立った。なにしろ彼の住んでいる家に、行ってみるのは初めてだ。お供のラバボーは、ラバピョンのところにおいてきた。もし心配するといけないから…。コメットさん☆は、一つ深呼吸すると、駅前から歩き出した。そしてしばらく歩き…。

コメットさん☆:橋田写真館…。ここだ…。

 1階はお店、2階が住居になっているらしい、やや古い建物だった。王子がくれた名刺の場所は、たしかにここである。

 そっとお店の入口のドアを入ると、そこには王子がいた。

プラネット王子:いらっしゃい…って、やあ!、よく来たな。ずっと待ってたよ。

 王子は、ちょっと驚いて、それからすぐに、懐かしそうな目をコメットさん☆に向けた。

コメットさん☆:…こんにちは。

 コメットさん☆はいっそう緊張して、あたりを見回した。

プラネット王子:ミラとカロンはまだ学校に行っているよ。今まだ店のおやじさんも、現像所に打ち合わせに行っているから、オレ店をあけられない。だからもう30分くらい、2階で待っていてくれよ。すぐ行くからさ。

コメットさん☆:…はい。じゃそうします。

 コメットさん☆は、王子に言われるままに、店の中にある階段を昇って、2階に上がった。そこは大形のカメラがあって、記念写真を撮る部屋だった。壁には何枚もの写真が飾られている。風景や花、子どもの笑顔、それにウエディングドレスの見知らぬ女性や、結婚写真も。その中に王子が撮ったと思える富士山の写真もあった。

 春になったばかりの、やわらかな日ざしが、それらの写真を浮かび上がらせる。写真のバックになる、時の流れを受け止めたような、窓や柱のくすみも、独特な雰囲気を醸し出していた。

 しばらくそんな写真たちを眺めていると、1階で王子と、お店の主人とおぼしき声がした。何事か仕事の話をしている様子だ。それが途切れると、王子が2階にやってきた。

0プラネット王子:やあ、お待たせ。今お茶入れるから。ハモニカ星国のお姫さま。

コメットさん☆:…もう、やめてよ…。そんな言い方。

プラネット王子:…ごめん。イヤだったか?。じゃ、コメットさん☆。

 コメットさん☆は、そんなかしこまったような言い方を、軽々しくされるのはイヤだった。

 王子はハーブティーを入れて、お菓子といっしょに持ってきた。ミントの香りが、天井の高い2階の写真室に広がる。ミントティーだ。

プラネット王子:オレ、ちょっと最近ハーブティーに凝っててさ。ハハハ…、おかしいだろ?。ま、どうぞ。

コメットさん☆:…い、いいえ、そんなことないですよ。…あ、これ、おいしい。

プラネット王子:そうか。よかった。こういうのキライだったら困るなと思って…。…この部屋、けっこういいだろ?。

コメットさん☆:天井が高くて、雰囲気いいですね。いつもここに?。

プラネット王子:いや、奥に部屋あるんだけどさ、お客様だからね

 王子は、いたずらっぽく片目をつぶって見せた。

コメットさん☆:お店、いいんですか?。見てなくて。

プラネット王子:いいんだよ。もう休憩だし。おやじさんも帰ってきたし。

コメットさん☆:…そうですか。

 コメットさん☆は、またひと口ミントティーを飲むと、しばしの沈黙を破るように切り出した。

コメットさん☆:…あ、あの…、私聞きたいことがあって…。トライアングル星雲の3つの星国って、どうしても1つにならなければいけないのかなって…。

プラネット王子:…君はどう思う?。

コメットさん☆:…それって、なんだかずるいと思う。だって私かメテオさんを…、それなのに自分の意見を言わないなんて…。

 コメットさん☆は、そこまで言うと、黙ってしまった。

プラネット王子:…そうだな。ごめん。あの時は本当に悪かった。でも安心してくれ。もうあんなことは絶対にさせない。ヘンゲリーノたちは、もうタンバリン星国を、あやつってはいない。

コメットさん☆:……。

プラネット王子:あれからオレもオレなりに考えたんだ。オレの星国が、人の運命を変えてしまうなら、そんな国のあり方はイヤだなって。オレは人のことをモノのように扱ったり、扱われたりもしたくない。だからオレは、オレの星国を変えなければならないなって。そして今、それぞれの星国は、それぞれのやり方を保っていいはずだと思う。

 プラネット王子は、ミントティーを一口飲むと続けた。

プラネット王子:オレももちろんだけど、カスタネット星国の王女も、もし将来自分の星国を治めるなら、治め方は自由でいいんじゃないか。だから君も。

 王子は、視線をコメットさん☆から窓に移した。コメットさん☆は、ほっとして答えた。

コメットさん☆:やっぱり…そうですよね…。私も、何となくそう思ってた。それぞれの星国には、それぞれの良さがきっとあると思う。

プラネット王子:…それって、オレたちが実現すべき一つの「夢」なのかもしれないな…。

コメットさん☆:えっ!?、夢?。

プラネット王子:誰かが誰かに無理をさせて、一つになるっていうんじゃなく、それぞれがそれぞれの良さを認めあって、支え合うっていう…。オレたち王子や王女の理想であり、夢なんじゃないかな…。ほんとうの夢って、「夢」っていう言葉のためにあるのでも、夢を語るために作るものでもないだろう。だからとらえどころのないものかもしれない。だが、タンバリン星国がやろうとしてしまった過ちを、繰り返さないというのは、新しい「夢や希望」の形の一つには違いない…。

 それを聞いたコメットさん☆の心に、安心の気持ちが、ぱぁっと広がった。

コメットさん☆:そうなんだ!。そうですよね!。

 コメットさん☆は、急にいすから立ち上がった。一瞬びっくりする王子。

コメットさん☆:ありがとう、プラネット王子。また一つ「夢のかがやき」が見つかったような気がします!。…あ、ミントティー、おいしかった。またごちそうして下さいね。私、帰ります。

プラネット王子:お、おい、なんだ?、もう帰るのか?。もっとゆっくりしていけよ…。おかわりも出そうかと…。

コメットさん☆:ラバボーたちが待っているし、この春小学校にあがるツヨシくんと、ネネちゃんが待っているから。ごめんなさい。私ばっかり聞いて…。でも、なんだかとても気持ちが軽くなった…。本当にありがとう。また来ます。

プラネット王子:しょうがないなー…。

 王子は残念そうな顔を見せたが、その目は微笑んでいた。そして階段を下りていくコメットさん☆を、笑顔で店の前まで見送ってくれた。「またいつでも寄ってくれよ。こんどはオレも君の家に行くからさ」と言いながら…。

 

 夜景太朗パパさんから、地球のEU=ヨーロッパ連合の話も聞いたコメットさん☆は、メモリーボールに語りかけた。

コメットさん☆:私の夢が、プラネット王子のおかげで、一つ見つかったような気がする。もし私が、いつか星国を治めるときがあったら、ハモニカ星国は、ハモニカ星国のままで、ほかの星国と助け合っていこうと思う。だって、無理に一つになる必要もないし、互いの星国の良さを認めあえば、それでうまくいくと思うもの。プラネット王子も、メテオさんも、二人がもしそれぞれの星国を治めるなら、私は二人を信頼できると思うもの…。星の子たちもきっとわかってくれると思う。お父様、お母様、私そう決めた。夢って、ふわふわした雲のようなものだけど、これって今ある夢の一つだと思う…。

 コメットさん☆は、また一つ希望のかがやきを、自らのものにしたのかもしれない。コメットさん☆の夢の姿は、まだまだおぼろげだが、着実にそこに向かおうとしていることは、どうやら確かなようだ…。

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★第94話:ドレスコンテストのミラ−−(2003年3月上旬放送)

 ある日、橋田写真館に住んでいるミラが、コメットさん☆を訪ねてやってきた。話があるという。「何だろう?」と思うコメットさん☆だが、会って話を聞いてみることにした。ミラはコメットさん☆の部屋に通され、話を切りだした。

ミラ:コメットさまお久しぶりです。いきなりですが、私洋服のデザイナーになりたいなぁ、なんて思っているんです。それで星国でいろいろな衣装を作って、星人に着せてあげたいんです。

コメットさん☆:わあ、ミラさん、いいね。ミラさんなら、いろいろなかがやきのある洋服作れそう。

ミラ:いえ、そんな…、私まだ…。ただ希望を持っただけですから…。…それで、このコンテスト知っていますか?、コメットさま。

 ミラは、市内に置かれていたチラシを持ってきていた。「3市共催ドレスデザインコンテスト」とある。

コメットさん☆:あ、これって、鎌倉の、小町通りにポスターが出ていたよ。ちょっと見た。

ミラ:これに私、ドレスを作って出したいんです。突然でご迷惑でしょうけど…、コメットさま、モデルになって下さいませんか?。

コメットさん☆:モデル…って、ええー!?。私がモデルになるの?。

 コメットさん☆は、急いでチラシを読んだ。チラシには逗子市、鎌倉市、藤沢市の3市共催の、「相模湾フェスタ」の一環として、「ドレスデザインコンテスト」を行うと書かれていた。そして今回のドレスの題は「ウエディングドレス」。ドレスを実際に作って、モデルに着せるドレス部門と、デザインだけを審査するデザイン部門があり、ドレス部門の場合は、モデルは年齢不問。男女のペアで出場し、男性の衣装は既製品でも可。応募は3市に住んだり、勤めたりしていて、服飾関係の仕事をしていない人なら、年齢や性別不問。締め切りは9月末で、簡単な写真審査があり、その時点で完成していておおよその水準ならば、発表会に出られ、それは10月下旬…とあった。

コメットさん☆:…もしかして、ミラさん、これの…ドレス部門に応募するってこと?。

ミラ:…はい。そう考えているんですが…。

コメットさん☆:ウ、ウエディングドレス…って。

 コメットさん☆は、ちょっとめまいがしそうな感覚にとらわれた。自分のウエディングドレス姿なんて、いまは予想もつかないし、実感なんてあるはずもない。去年、王子と結婚させられそうになったとき、もしかすると着ることになっちゃうのかな…と思ったが、その姿を想像すらしたくなかった。しかし、今度のこれは、そんな怖いような、悲しいような思い出の話ではない。だが、それにしても…。

ミラ:おいやでしたら、断って下さってもかまいません。私あきらめますから…。

 コメットさん☆は、しばらく黙って考えていたが、やがて静かに口を開いた。

コメットさん☆:…いいよ。ミラさん。あなたがドレスを作ってくれるなら、私モデルになる。去年のことは、もう過ぎたことだし。

ミラ:…コメットさま。つらい思い出を、思い出させてしまってすみません。

コメットさん☆:ううん。全然気にしないで。…がんばって出ようね。

ミラ:…コメットさま。ありがとうございます。私、がんばってデザインして、優勝できるように作りますから。

コメットさん☆:…ところで、これって男性の出場者が必要なようだけど、どうするの?。

ミラ:…そうなんですよね…。ケースケさんなんてどうでしょうか?。プラネット王子殿下じゃ、おいやかもしれませんから…。

コメットさん☆:えっ!?。

 さらりと言ってのけるミラに、コメットさん☆は、顔から火を吹きそうになった。ケースケといっしょにウエディングドレス…って。ちょっとそんなことは、考えたこともない。そもそもまだそんなドレスを着る年頃じゃないし…。でも、たぶんケースケは、あの様子だと絶対いやがって、話にものってきてくれないだろうなぁ…と、ちょっと寂しいような気にもなった。だが、よくよく考えてみると、ただのコンテストなんだから、あまり深い意味を考えること自体、変なことなのかも、と思い直すコメットさん☆だった。

 結局、相手役の男性は、まだ決まらないものの、男性の衣装はデザインコンテストの対象ではないので、だれにするかは追々考えることにして、手探りながら、ミラはドレス作りに挑むことになった。ただミラは、全くの素人なので、コメットさん☆が紹介して、服飾デザイナーの前島さんに、相談に行った。前島さんは、デザインの仕方の基本と、縫い方の基本だけは教えてくれるが、「ここから先は、自分のデザインとして努力しないと意味がないでしょ」と、ミラとコメットさん☆に釘をさした。それは確かにそういうことになる。プロにデザインしてもらったら、コンテスト規定違反になってしまうし。

ミラ:コメットさま、私あれから考えたんですが、ドレス本体の装飾は、あまり豪華にできないと思うんです。私の腕もたいしたことはできませんし…。布地も結構高いですから、レースがたくさんというようなのは、無理かもしれません。ですから、ヘアオーナメントでアピールしようと思うんです。

コメットさん☆:なんだかミラさん、ずいぶんいろんなこと研究しているね。私ちょっと見えてなかった。ごめんね…。

ミラ:いいえ、そんな…。コメットさま、恥ずかしいです…。でもやっぱりいろいろ考えないと…。

 コメットさん☆とミラは、資料になりそうな本を、沙也加ママさんから貸してもらったり、ミラの描いたラフデザインを見たりして、いろいろ話し合った。

ミラ:コメットさまの好きなお花は何ですか?。

コメットさん☆:好きな花?。うーん…桜かな。桜は大好き。

ミラ:…桜ですか…。…実はヘアオーナメントを、花と緑色の葉っぱで飾ろうかと思ったんですけど…。桜は9月には、咲いていないですよね…。当たり前ですね。どうしようかしら…。

コメットさん☆:あ、ごめんね。そっか、9月に咲いている花じゃないとだめだよね。それなら…うーん…。

ミラ:いえ、せっかくですから、桜の線で考えてみます。造花にして、緑の葉っぱのところだけ、生花を使うというようにすれば、なんとかなりそうな気もしますから。

 そうは言ったミラであったが、桜のヘアオーナメントというのは、かなり困った。季節が限定されるし、そういうデザインのものは見たことも、聞いたこともない。しかし、だからこそ、面白い題材ではないかとも思うのだが…。ミラは、桜を造花にするとして、どうやってその造花を作るか、それに今度は悩んだ。

 ところが、その様子を見ていた王子が聞いてきた。

プラネット王子:ミラ、どうしたんだ?。例のコンテスト、なんかうまく行かないのか?。

ミラ:あ、殿下、コメットさまのヘアオーナメントを作るつもりなんですけど、コメットさまは、桜がお好きだとおっしゃいます。

プラネット王子:ああ、そういえばコメットは、桜が好きみたいだな。なるほど桜の花を、頭にのっけるわけか。…まてよ、コメットのヘアオーナメントということは…、まさかコメットがウエディングドレス着るのか?。

ミラ:え?、殿下ご存じなかったんですか?。私言いませんでしたっけ?。

プラネット王子:…全然聞いてなかったぞ。ただドレスデザインコンテストに出品するから、ミシンと手縫いが大変だとかしか言ってなかったぞ。…でもまあいいや。そうか、コメットがねぇ…。

 王子は、コメットさん☆のウエディングドレス姿を、見たい、そして写真に撮りたいと急に思った。でも、少し考えると、もし自分がコメットさん☆をエスコートできたら…。そんな気分にもなる。

プラネット王子:(オレは…。どうしてそんな気分になるんだ?。カメラマンとしての、写材としての興味だけじゃない…のか…。)

 王子は、自分の感情をうまく整理できない気持ちになりながらも、ミラに重ねて聞いた。

プラネット王子:それはそれとして、どこがうまく行かないんだ?。

ミラ:桜は9月には咲いていませんよね。ですから、生花をヘアオーナメントには使えないんです。でも、かえって、桜をヘアオーナメントにするというのは、誰もあまり考えないかもしれませんから、ちょっと面白いと思うのですが、造花で作るとしてもなかなかいい方法が…。

プラネット王子:なるほどな。そういうことか…。うーん…、桜の花びらを、造花で作れればいい…。そういうことになるのかな?。

ミラ:…ええ、そうですね。何かいい方法ありますか?、殿下。

プラネット王子:そうだな、模型作りで使う方法で、作ってみないと何とも言えないが、使えそうな方法があるな。さっそくやってみるか?。

ミラ:はい!。

 思わぬところからの助け船に、喜ぶミラ。王子は朴の木の板と彫刻刀、それにプラスチックの薄い板を、自室から持ってきた。

プラネット王子:まず、この木を削って、桜の花びらの形を作る。そして、熱湯をわかして、それにこのプラスチック板を漬けて、それを素早く木を削って作った桜の花びらのカタに押しつけるんだ。そうすると柔らかくなったプラスチックが、カタと同じように変形して、同じものが量産できるだろ。あとから余分なところを切り抜いて、薄いピンクに塗れば、なんとか桜の花びらになるんじゃないか?。これは「ヒートプレス」って方法の応用だな。

ミラ:すごいです!。殿下、模型作りって、いろんなことができるんですね!。

プラネット王子:まあ、たまには役に立つかもしれないわけですよ、ミラさま。はははっ。

 王子は、まんざらでもない様子で、いたずらっぽく言って、少し笑った。

 

 一方、メテオさんは、町に貼られているポスターを見て、何となく出てみたい気持ちになっていた。自分もドレスを着て、そんなコンテストに出てみたい…。でも、作ってくれる人もいないし、自分で作って自分で出るのは、いくら何でも…。星力で作るっていうのも、さすがにナシだと思うし…。メテオさんは、飼っている猫、メトを抱いて、つぶやいていた。

メテオさん:メト、私コンテストに出たいな…。

メト:ニャー。

 メトは、メテオさんが寂しそうにしていると、いつも何となくそばから離れない。なぐさめようとしてくれるのか。すると留子さんがやってきた。

留子さん:メテオちゃん、メテオちゃん。

メテオさん:はーい。何?、お母様。

留子さん:そろそろお風呂が沸くわよ。先にお入りなさいね…。あら、なんだか元気ないわね。どうしたの?。

メテオさん:ううん。別に、たいしたことじゃないわ…。

留子さん:メテオちゃんが元気ないのは、たいていたいしたことだわ。私に話してごらんなさいな。

メテオさん:……。今度、ウエディングドレスのコンテストがあるの。それに私出たいな…なんて思っているんだけど…。ドレス自分で作れないし…。自分で作って、自分で出るんじゃ、ばかみたいだし…。

留子さん:ああ、あのコンテストね。町に貼ってあるポスターでしょ。

メテオさん:お母様、知っているの?。

留子さん:ええ、知っていますとも。メテオちゃんが出たら、どんなにきれいかしらと思うわ。…そうね…、それならね、いいことを思いついたわ。ちょっと待ってね。

メテオさん:お母様?。

 留子さんは、物置部屋に行くと、何か探している。あっちこっちの箱を開けては、何か書類のようなものを探しているようだ。メテオさんは、理由がわからず不思議に思うのだが…。

留子さん:ああ、やっとあったわ。これよ、これ。もう二度と使わないと思っていたけど…。…実はね、美沙子が亡くなる前に、いつかその日が来たら、オーダーしようと幸治郎さんと相談して、ある人に描いてもらった、ウエディングドレスのラフスケッチがあったのよ。それがこれ。

メテオさん:ええ!?。お母様…。

留子さん:これを私が作れるくらいに手直ししたのでよければ、メテオちゃん、あなたのために作ってあげるわよ。どう?。

 留子さんは、ラフスケッチの数枚の束を、メテオさんに手渡した。メテオさんは、それを見て、美沙子さんとの不思議な縁を感じた。そして、涙が出そうになるくらいうれしくなった。「これも星の導きなの?」そんな思いも、メテオさんの胸をよぎった。

メテオさん:…お母様…。ありがとう。私にドレス、作って…。

留子さん:あのコンテスト、出るためにはエスコート役の男性が必要だったわね。だれかやってくれる人を見つけなさいな。メテオちゃん。

メテオさん:お母様、ありがとう。私必ず見つけるわったら、見つけるわ!。

留子さん:あらあら、俄然元気が出たわね、メテオちゃん。

 思わぬ助け船に喜ぶメテオさんだが、相手役の男性は…。イマシュンと思うけれど、そんなことがかなうはずもない。でも、何とかしなければ…。メテオさんは思案した。

 ともあれ、こうしてミラと留子さんの挑戦が、始まった…。

(秋に続く)→続きの話を読む

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※言うまでもありませんが、このコンテストは架空のものです。

★第96話:コメットの誕生日−−(2003年3月下旬放送)

 おととしから、コメットさん☆の誕生日はいつ?というのが、藤吉家の話題にのぼっていたのだが、コメットさん☆は、暦の異なる星国の日付を言っても、景太朗パパさんや沙也加ママさんには通じないだろうと思って、「クリスマスです」と答えていた。それは、コメットさん☆なりの、プレゼントを2度もらっては悪いなぁという、配慮でもあったのだが、自分が星国人であることを、明かすことになってしまうから、本当のことは、どうしても言えないでいたのだ…。

 コメットさん☆の星国は、地球より1年がかなり長い。おおよそ2倍である。1日の長さは、それほど違わないが、星国の人間は、歳をとるのが遅い。だが、コメットさん☆自身は、正確にどのくらい星国と地球で、1年の長さの違いがあるのかまではわからない。だから、今まで自分の誕生日を、この地球で意識はしないようにしていた。

 でも今年は、もう藤吉家の人々は、みんなコメットさん☆が、「星国人」であることを知っている。

景太朗パパさん:コメットさん☆、そう言えば君の誕生日は、いままでクリスマスと同じ日ってことになっていたけど、本当にそれであっているの?。星国というところは、1年の長さは地球と同じかい?。

コメットさん☆:えっと…、私にも詳しいことはわからないです。えへっ。

景太朗パパさん:ということは…、クリスマスと同じ日じゃない可能性が高いわけか…。どうしてクリスマスにしてたんだい?…って待てよ、去年までは、僕たちに星国の人だって、教えられなかったからかな。

コメットさん☆:…はい。だまっていてごめんなさい。

景太朗パパさん:いやいや、それはもういいとして。せっかくだから、正確にわからないかなぁ。いや、ママの誕生日が4月だからさ。ちょっと気になってね。

コメットさん☆:じゃあ、私も正確に地球の暦でいつになるのか、わからないから、計算してもらいます。

景太朗パパさん:え、だれに?。計算できる人がいるの?。

コメットさん☆:去年の年末に少しお話ししましたけど、ラバボーとラバピョンという星国のお供がいます。ラバボーは、人間になっているときは、星の軌道計算や暦の計算が得意です。だからラバボーに頼みます。

景太朗パパさん:ラバボー?。動物のような星人だよね?。

コメットさん☆:はい。ちょっと呼んできます。でも、パパさんには、今日は人間の姿でお目にかけます。あ、一応男の子です。あとラバピョンは女の子ですので、その子もお目にかけます。待っていて下さい。

 コメットさん☆は、びっくりしたような顔の景太朗パパさんを置いて、部屋に上がった。

ラバボー:姫さま、どうするんだボ?。

コメットさん☆:ラバボー、人間の姿になって。それで星の軌道から、私の誕生日を正しく計算してくれないかな。

ラバボー:景太朗パパさんの前でかボ?。

コメットさん☆:うん。

ラバボー:わかったボ。姫さま、バトンを振ってだボ。

 コメットさん☆は、バトンを振って、ラバボーを人間の姿にした。それからラバピョンのティンクルホンUに電話をかけて、星のトンネルを使って呼ぶことにした。

 ラバピョンは、すぐにやってきた。もちろん動物の姿のままで…。縁側から、そのまま2階に上がろうとするところで、景太朗パパさんがその姿を目撃する。

ラバピョン:おじゃまするのピョン。

景太朗パパさん:うわっ。な、なんだ?。ウサギ猫がしゃべった?。

 景太朗パパさんは、1月にスピカさんといっしょにラバピョンに会っていたことを忘れていた。そして、コメットさん☆は、ラバピョンも人間の姿にしてから、3人で1階におりた。

コメットさん☆:景太朗パパさん、紹介します。私についてきているラバボーとラバピョンです。

ラバボー:はじめましてだボ。…といいつつ、ずっと姫さまといっしょに暮らしていましたボ。

ラバピョン:はじめましてなのピョン。ラバピョンですのピョン。

 景太朗パパさんは、突然あらわれた中学生のような二人にびっくりし、言っていることに二度びっくりした。

景太朗パパさん:…ふ、不思議なしゃべり方だねぇ…。二人ともコメットさん☆のお供かい?。も、もしかしてラバピョンさんは、さっきのウサギ猫のような姿がいつもの姿?。

コメットさん☆:まあ、一応そうです。パパさんびっくりさせてしまってごめんなさい。ところでラバボー、私の誕生日を地球の暦で計算して。

ラバボー:えーと、星国暦では15月41日だボ?。それをもとにこれから計算するボ。

コメットさん☆:計算はどうするの?。紙と電卓くらいで出来るの?。

ラバピョン:ラバボー、難しい計算なのピョン?。

ラバボー:それは星の動きをもとに、計算しないとわからないボ。地球から星国の星回りは見えないからだボ…。まず姫さま、星国の星雲観測所に電話するボ。…あと、景太朗パパさん、関数電卓ってありますかボ?。

景太朗パパさん:あ、ああ、あるよ。それがいるのかい?。じゃ今とってこよう。

 景太朗パパさんは、目を白黒させながら仕事部屋に取りにいった。一方コメットさん☆は、星国にティンクルホンで電話をかけ、星雲観測所を呼び出してもらった。そしてラバボーにかわる。

ラバボー:あ、星雲観測所ですかボ?。姫さまのお供をしているラバボーですボ。ちょっと星の軌道と、ルナ星の月齢とか教えて欲しいボ。…ええ、…そう。そうですボ。

コメットさん☆:わあ、私何歳なのかわかるんだね。地球に来てから、いくつかなんて、あんまり意識したことなかったな。

ラバピョン:姫さま、女の子がそんなことではいけないのピョン。

コメットさん☆:あはっ。…そうだね。

ラバボー:はいだボ、…今日のタルテス星は、0時で10.565齢かボ。それで15月36日のルナが、29.261齢で満月かボ。新月は?…。

コメットさん☆:ラバピョン、ラバボー何言っているのかわかる?。

ラバピョン:全然わからないのピョン。

 ラバボーが電話を切るのと同時に、景太朗パパさんが関数電卓を手に戻ってきた。

景太朗パパさん:…こんなんでいいのかな?。ラバボーくん。

ラバボー:姫さま、たぶんこれで計算できるボ。景太朗パパさん、これ少しの間、お借りしますボ。

 ラバボーは、景太朗パパさんとコメットさん☆、それにラバピョンが囲むソファーの前のテーブルで、計算をはじめた。

 ラバボーは5分ほど計算していただろうか。みんなかたずを飲むように、ラバボーが計算しているのを見ていた。ラバピョンも、コメットさん☆も、普段見たことのないラバボーの能力に、驚くばかりだ。ましてや景太朗パパさんに至っては、そもそも理解の範囲を越えている様子だ。

ラバボー:わかりましたボ。景太朗パパさん電卓ありがとうございましたボ。姫さまの誕生日を、地球暦で計算すると、3月27日になるボ。ただ、地球とハモニカ星国の間に、1年の長さに相当なズレがあるから、毎年少しずつズレていくんだボ。だから、今年は3月27日だけど、地球の来年だと、3月29日になるボ。本当は地球の2年に1度しか、姫さまの誕生日はないボ。理由は地球の2年が、星国のおよそ1年に当たるからだボ。

コメットさん☆:わあー、ラバボーありがとうー!。じゃ、私今年いくつになるの?。

ラバボー:どういたしましてだボ。たぶん地球で言えば、姫さまは今度14歳になるんじゃないのかボ?。地球にいる限り、365日で1歳ずつ増えるボ。

景太朗パパさん:へー。すごいなぁ。地球と星国って、そんなに違うんだね。面白いなぁ。ママが店から帰ってきたら、教えてあげなきゃいけないなぁ。コメットさん☆は14歳になるのかぁ。もううちに来てから、2年になるんだねぇ…。

コメットさん☆:14歳かぁ…。地球の女の子の14歳ってどんなだろう?。

景太朗パパさん:あ!、じゃあ、もうすぐじゃないか。コメットさん☆の誕生日。これはお祝いしないとね。ツヨシとネネも、4月から小学校に上がるから、ママの誕生日とあわせて「お祝い」ラッシュだね。

コメットさん☆:…そんな、年末にお祝いしていただきましたから…。

景太朗パパさん:いいじゃんないか。またお祝いしても。だって正確な日付がわかったんだよ、ラバボーくんのおかげで。これは藤吉家としては、お祝いしないでいられないよ。

コメットさん☆:…なんだか、すみません。

 そんなことを言うコメットさん☆だが、とてもうれしそうだ。

 そうして数日後、コメットさん☆の誕生日と、ツヨシくんとネネちゃんの進学を祝って、藤吉家内パーティーが開かれた。もちろんラバボーと、ラバピョンも、人間の姿で同席…。ケースケも、とは考えた景太朗パパさんだったが、まさか「コメットさん☆の誕生日は、星国暦では15月41日だが、地球暦では3月27日だということがわかったから、お祝いを…」とは言えず、藤吉家だけになる。

 コメットさん☆は、景太朗パパさんと沙也加ママさんから、小形のデジタルカメラをもらう。ツヨシくんとネネちゃんは、もちろん新入学の学用品だ。

 コメットさん☆は、さっそくデジタルカメラを手に、最初のショットは家族全員を写す。それから大喜びで家の中を写して回る。重さ115グラムの小さなパールピンク色のデジタルカメラ。

景太朗パパさん:コメットさん☆、プリントしたければ、プリンタはうちのやつを使っていいからね。紙もたくさんあるから。

沙也加ママさん:パパが絶対にカメラにしようって言ったのよ。しょうがないわねぇ…。ふふふっ。でもね、コメットさん☆は14歳。ローティーンとは、もうすぐお別れかもしれないけど、そのころの思い出って、いつまでたっても懐かしく思い出すものよ。…もっとも、いつだって思い出は懐かしいけどね。

景太朗パパさん:…そうだなぁ。もう二度と来ない青春時代ってやつかなぁ。はははっ。ちょっとキザだけど。そんな今を、君は記録しておくといいと思うよ。大人になったら、いつかきっと楽しい思い出だから…。

コメットさん☆:……パパさん、ママさん…ありがとうございます。私このカメラで、いろいろなかがやきを写せたら…いいなあ。

 コメットさん☆は、「思い出」という言葉に、ちょっと胸のうずきを覚えた。「なんだろう…この気持ち。楽しいはずの話なのに…」。それはいつか…。

 しかしその気持ちをうち消すかのように、カメラを手に、ツヨシくんとネネちゃん、ラバボーとラバピョンといっしょに、庭に飛び出して行った。それをリビングのソファーで見る景太朗パパさんと沙也加ママさん。互いににっこり顔を見合わせて…。

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※2003年3月末当時、重量115グラムのデジタルカメラはありましたが、カラーリングされたタイプは、正しくは未発売でした。


★第97話:写真が写すかがやき−−(2004年4月上旬放送)

 3月27日の「誕生日」に、小さなパールピンクのデジタルカメラを、景太朗パパさんからもらって、大喜びのコメットさん☆。それ以来、いつも出かけるときには、小さなポーチに入れて持ち歩いている。ちょっとした街の風景や、ツヨシくん、ネネちゃんを撮る。稲村ヶ崎から見える富士山も、光る海も、メテオさんと猫のメト、海辺を走る江ノ電、練習する倉田さん、流木アートを制作中の鹿島さん…。みんな真剣な顔、穏やかな微笑み、生き生きとした顔、迫力のある感じ…。「かがやきって、写真にも写るものなんだ…」。そんなことをあらためて思うコメットさん☆。

 しかし、実のところ、構図の取り方や、シャッターチャンスとかはよくわからない。だから、カメラのモニタに映る画像通りには、なかなか撮れない。「いいな」と思って、カメラのスイッチを入れても、即撮れるわけでもない。

 沙也加ママさんも、景太朗パパさんも「思い出を撮るといい…」なんて言っていた。それってどういう意味なんだろう?。コメットさん☆は「思い出」という言葉に、胸のうずきを覚えつつ、それがどうしてなんだか、まだわからない。たしかに時間は過去に向かってどんどん流れていく。だから、さっき見たものは、もう今は思い出とも言えるけれど、なんだかそういうことじゃない。だけど、じゃあ「思い出」って何?。

 スピカさんが星力の使い方を教えてくれた。星国のみんなが、もう一度地球に行くことに、賛成してくれた。タンバリン星国のお妃に指名されそうになったときのいすは、とても冷たかった。星遊びばかりしていると、ヒゲノシタがいつも叱りに来た…。それらは全てたぶん思い出。でも、これから先、私にどんな「思い出」ができるのだろう?。思い出って作るもの?。ううん、そうじゃない。たぶん自然にできているもの…。

 写真…と言えば、今はプラネット王子に聞くのがいいかもしれない。そう思うと、コメットさん☆の足は、自然と王子の住む写真館に向かっていた。

プラネット王子:…へーえ、デジタルカメラもらったのか。いいな、それ。

コメットさん☆:そうなんですか?。うれしくていつも持ち歩いてるんですけど…。

プラネット王子:ごく最近発売された最新機種だよ。軽さは今のところ一番だ。…どれ、どんな写真撮ったんだ?。

コメットさん☆:見てくれますか?。私まだよく写し方がわからなくて。

 コメットさん☆は、デジタルカメラをそのまま王子に渡した。王子は説明書を見るでもなく、ピッピッとボタンを押して、カメラの動作を確認している。もっとも、コメットさん☆は説明書を持ってきたわけではないのだが。

プラネット王子:…なるほどな。まったくカメラの設定は、もらったままだな。そうだな…、まずモニタの中央部にフォーカスが合うようにしておいた方がいい。

コメットさん☆:フォーカス?ですか。

プラネット王子:…なんだよフォーカスも知らないのか!?。やれやれ…。まあ最初は誰でも初心者だ。しょうがないよな。…フォーカスってのは画像がはっきり写る部分のこと。難しいから簡単に言うけど。こうやってモニタの中央にフォーカスが来るようにしておいたほうが、カメラ任せの時より失敗が少ない。

コメットさん☆:このかぎかっこみたいなところがはっきり写るんですか?。じゃあ、二人を撮るときなんかは…。

プラネット王子:おっ、なかなか鋭いな。そういうときは、まずひとりにカメラを向けて、このシャッターボタンを半押しにして、それからカメラだけ二人の間に向くように動かすのさ。それからそのまま手を離さずにシャッターを切ればちゃんと写る。…今おやじさんいないから、写っている画像、全部プリントしてみよう。

コメットさん☆:いいんですか?。

プラネット王子:いいんだよ。カメラの下からメモリカードを抜いて、このマシンにかけるだけさ。…おーい、ミラ、ちょいと店頼むよ。

ミラさん:はーい、兄さま。あ、コメットさま、いらしてたんですか。

プラネット王子:あー、その兄さまってのは、コメットの前ではやめてくれよ…。

コメットさん☆:ミラさん、こんにちは、久しぶり。兄さまって?。

ミラさん:ここにお世話になるときに、「殿下」じゃ不自然だから、私たち三人兄妹ということにしたんです。

コメットさん☆:ふぅん…。

 コメットさん☆はびっくりしたような、ちょっと笑ったような目で、二人を見た。王子は恥ずかしそうだ。

 王子は出来上がったプリントを持って、コメットさん☆を二階の写真室に招いた。例によってハーブティとお菓子を出してくれる。

プラネット王子:…さて、コメットの撮った写真を拝見するか。

コメットさん☆:…なんだか恥ずかしいな…。

プラネット王子:なあに、写真なんて、どんどん撮って、その中に1枚かそこらいいものがあるかどうかだよ。プロの写真家だって、フィルム1本まるまるいい写真なんて、撮れやしないさ。…にしても、けっこういろいろだな…。これは。

コメットさん☆:……。そんなにひどい…?。

プラネット王子:なかなか表情はいいところねらえてると思うんだけど、君が使っているような小さいカメラは、シャッターを押すときにどうしてもブレやすいのと、画面の傾きが起きやすいな。それと光のとらえ方をもう少し…ってところか。…この江ノ電が写っているやつ、電車の運転士に警笛鳴らされなかったか?。

 コメットさん☆の撮った江ノ電は、踏切の直前で撮ったもの。七里ヶ浜の踏切脇には柵がない。だから…。

コメットさん☆:そう言えば、2回くらい「パァーン」とかいっていたような…。

プラネット王子:これ危険だよ。こんなに線路に近づいたらダメだ。もっと離れて、横から電車の横腹を写す感じにしないと。とにかく線路に近づいちゃ絶対ダメだ。巻き込まれるぞ。電車は考えるよりはずっと危険なんだ。乗っている分には関係ないけどな。

コメットさん☆:…はい。

 王子の意外な厳しい顔の様子に、ちょっとびっくりするコメットさん☆。しかし、王子は「私のことを心配してくれてるんだな…」と思う。

プラネット王子:まあ、初めてにしてはなかなかいい感覚していると思うよ…って、オレだってまだまだだから、えらそうなこと言えないけど…。このメテオと猫のやつなんかは、メテオの表情がいいよな。…結局たくさん撮ることだよ。その中に、必ずいくつも思い出に残る作品ができるさ。

コメットさん☆:えっ?。思い出?。

プラネット王子:カメラは思い出を切り出す道具だな。だが、ファインダーやモニタに映るものが全てじゃない。たしかにカメラは思い出を切り取り、保存する役目を果たすし、写真はその場を切り取るものだけど、まず対象を自分の目に焼き付けておくっていうのも、実は大事だな。カメラに頼ってしまうと、そのものをよく見ないでシャッターを切って、ハイ終わり、ということになってしまうかもしれない。それじゃ本当の写真の意味は無いな。本当の思い出ってのは、自分の心の中に残るもので、忘れていても、いつか思い出し、その人を支えてくれる記憶。写真はその手助けをするに過ぎないんじゃないか…。メモリカードに写すだけじゃなくて、心にも写すことが大事ってことだよ、たぶん。

コメットさん☆:…そっか。そういうものなんだね…。思い出って…。

プラネット王子:…うん?。

コメットさん☆:……。

 コメットさん☆は微笑んで王子の顔をじっと見た。王子は気恥ずかしそうに、少し視線をそらした。「コメットのこの笑顔には、弱いんだよな…」と思いつつ。

 王子は、簡単に構図の取り方や、画面が傾かないようにする工夫、ブレを防ぐ脇のしめ方などを、カメラに手を沿えて、あるいは手をとりながら教えてくれた。そして王子は、帰り際一枚のチラシをくれた。

プラネット王子:ちょうど店に来ているコンテストのチラシ。デジタルカメラの写真コンテストさ。いいのが撮れたら、これに応募してみろよ。練習すれば、いい線いくと思うぞ。

コメットさん☆:ありがとう。また来ます。いろいろ教えて下さいね。

プラネット王子:ああ、いつでもどうぞ、コメットさん☆。…王女さまって言うと、叱られちゃうからね。

コメットさん☆:ああー。もう。

プラネット王子:はははははは…。

 コメットさん☆は、星のトンネルを通って家に帰った。そして夜、窓から遠くに見える海を眺めつつ、昼間の王子の言葉を思い出していた…。

(プラネット王子:…本当の思い出ってのは、自分の心の中に残るもので、忘れていても、いつか思い出し、その人を支えてくれる記憶。写真はその手助けをするに過ぎないんじゃないか…。)

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★第98話:桜咲く星国とコメットの心−−(2003年4月中旬放送)

 今年は横浜・本牧の三渓園にお花見に行った、コメットさん☆と藤吉家の人々。美しい桜の花に、目を奪われるコメットさん☆。

 コメットさん☆は去年、桜は二度と見られないかと思ったのだ。なぜなら、星国に桜はない。そしてその星国に帰らなくてはならなくなったから…。それも王子と無理に結婚させられてしまうかも…と、不安な気持ちで…。だから去年、鎌倉に再びやってきて、段葛の桜をまた見ることができたとき、コメットさん☆は一人そっと泣いてしまった。だが、今年はそんな心配をする必要もない。王子はもうそんなつもりはないこともわかったし…。

 そしてコメットさん☆は、とても桜という花が、好きになっていた。自分が地球に戻ってきたとき、また素知らぬ顔で迎えてくれたのは、もう見られないかと思っていた桜だったし、人々が新たな気持ちになる春、年に一度だけ咲く桜が、不思議なかがやきにも似た「光」を放っていることに、ひかれたから…。

 しかし、コメットさん☆の故郷であるハモニカ星国に、桜がないことには変わりはない。似たような植物はあるが、年中咲いているものが多く、春になるとぱぁっと咲き、そしてはらはらと散るなんていうような木はないのだ。だから、ハモニカ星国にも、桜があればなぁと、コメットさん☆は思う。そこで景太朗パパさんに、その話を思い切ってしてみることにした。

コメットさん☆:景太朗パパさん、教えて欲しいことがあるんですけど…。相談に乗ってくれますか?。

景太朗パパさん:ん?。いいよ。コメットさん☆。どんなことだい?。

コメットさん☆:実は、私の星国には、桜がないんです。だいたい季節が、あんまり大きく変化もしません。でも、星国にも桜があったらなぁって思うんです。

景太朗パパさん:え?。そうなのかぁ…。それはあったらいいだろうねぇ。うーん、しかし季節の変化が大きくないのかぁ。でも冬はあるんでしょ?。一応は。

コメットさん☆:えーと、はい。あまり寒くはないですけど、あることはあります。

景太朗パパさん:それなら、木が根付けば咲くことは咲くはずだなぁ。桜は春の気温を感じて咲くからね。−−(※注下)

コメットさん☆:ほんとうですか?。じゃタネをまけばいいんですね。

景太朗パパさん:いや、桜、特に今日見てきたような「ソメイヨシノ」という種類なんかは、普通タネから育てはしないんだよ。

コメットさん☆:えっ?。じゃ、鎌倉山や、パパさんが作っている裏山の畑のそばにある桜なんかは、どうやって木になったんですか?。

景太朗パパさん:あれはね、挿し木っていってね、枝を切って地面にさしてしばらくすると、その枝の先から根っこが出て、あたらしい木になるんだよ。あとは接ぎ木とか。だいたいはそうやって増やしたものなんだ。だから、この国にあるソメイヨシノは、全部もとは同じ1本の木だったとか言われているね。

コメットさん☆:へーえ。じゃ枝を切って増やすしかないんでしょうか。

景太朗パパさん:もしタネがつく木でも、花が咲くようになるには何年もかかるから、普通はある程度育ったやつを、植木屋さんで買うことになるなぁ。

コメットさん☆:そうなんですか…。

景太朗パパさん:でも、せっかくだから、知っている人に聞いてあげるよ。しかし、それにしても、お花見ができるような木になるまでには、少なくとも10年くらいかかるかも…。

コメットさん☆:それなら大丈夫です。星力を使えば、早く成長させられます。

景太朗パパさん:ええ!?。…はははっ。なるほどそういうのもアリか…。「星使い」って、こういうときは便利だなぁ。

コメットさん☆:ふふふっ。そうですね。

景太朗パパさん:じゃあまあ、苗木がありさえすれば、あとは増やしたり、成長させたりはできるわけだね。それならなんとかしてみよう。

コメットさん☆:パパさん、ありがとうございます。無理を言ってごめんなさい。

景太朗パパさん:いやいや。どうということもないよ。あ、それで苗木がたくさんできたとしても、どうやって星国に持っていくの?。コメットさん☆が持って行くわけにもいかないよね。

コメットさん☆:大丈夫です。それも星力で、星のトレインを呼びます。

景太朗パパさん:…あ、そう。それもまた星力か…。ぼくの想像をとっくに越えているな…。とほほ…。

 景太朗パパさんは、情けなそうに笑った。

コメットさん☆:すみません。いろいろ驚かせちゃって…。

景太朗パパさん:いやぁ、なかなか面白いよ。星力は、いいことに生かして使えば、いろいろな人のためになると思うよ。コメットさん☆も知っているように。

コメットさん☆:はいっ。

 景太朗パパさんは、そうして苗木をさがしてくれることになった。

 苗木は景太朗パパさんの仕事の関係の知り合いから、何本か分けてもらい、5本がそろった。コメットさん☆は最初これを星力で大きくして、それから星国に送ろうかと思っていたが、想像以上に大きかったので、夜に星のトレインを呼んで、そのまま星国に送った。あとは星国の「学者ビト」さんたちに、なんとかしてもらおう。王様にも電話して、頼んでおいた。

 そんなやりとりを、聞くとはなしに聞いていた沙也加ママさんだったが、それから数日して、お店「HONNO KIMICHI YA」に、不思議なものが持ち込まれた。透明なプラスチックの中空な玉の中に、模型の桜の木が1本入っている。大きさは両手で持てるくらい。玉の上半分と下半分は、分けられるようになっていて、下半分には木とそれが生えている地面、それに地下の根のところ、細い真鍮の針金をたくさん束ねて、それをねじって着色し、大きな桜の木の枝と花を表現してある。花は小さく刻んだ薄いピンク色の紙を、一つ一つ貼り付けた手間のかかったものだった。そして上半分はふたのようになっていて、桜の木をおおうようになっている。

 お店の窓よりの台に、それを置いてみる沙也加ママさん。コメットさん☆は、お店に届け物をしに行ったとき、それを偶然目にする。そして、その見た目が、あまりにも「星の子」に似ていることに驚く。でも中に入っているのは、桜の木…。

 さっそく沙也加ママさんに聞いてみた。

コメットさん☆:これってどこから持ち込まれたんですか?。

沙也加ママさん:うふふ。桜が好きなのね、コメットさん☆。きっとすぐ見つけるなぁと思っていたわ。それはね、藤沢のほうに住んでいる留学生の人からよ。今度初めて持ち込まれたんだけど。ちょっと不思議な感じよね。丸い球体の中に、桜の木なんて。

コメットさん☆:そうですね。なんで閉じこめてあるんだろう…。でも面白いですね。なんかいいなぁ…。

 コメットさん☆はそう言いつつも、もしかしてこれは…と思っていた。一方沙也加ママさんは、コメットさん☆の様子を黙って見ていた。

 さらに数日後、ふいにコメットさん☆に荷物が届く。両手で抱えるくらいの大きさ。なんだろう?。だれからかな…?。差出人を見ると、「橋田」としか書いていない。橋田…橋田…。そう、あの写真館の名前だ。それならこれは…。コメットさん☆は急いで荷造りを解く。すると、お店に持ち込まれたものと、ほとんど同じもの、「球に閉じこめられた桜の木」が入っていた。そこに手紙が添えられている。

手紙:桜好きなんだってな。沙也加ママさんに聞いた。これ、あげるよ。ちょっと徹夜しちゃったけど、こういうの作るのも、けっこう好きでさ。星国に桜はないけれど、こんな星の子がいたら楽しいよな。−−プラネットより。

 やはりあの桜の飾り物を作ったのは、プラネット王子だったのだ。またコメットさん☆への贈り物も、プラネット王子…。

 コメットさん☆の桜への思いは、特別な思い…。裏山の桜はもう葉桜になっていたけれど、地面にはわずかに散った桜の花びらが残っていた。それを数枚拾ったコメットさん☆。バトンを出すと、星力でそれをメッセージメールに変えた。プラネット王子への…。それにのせたメッセージは…。

コメットさん☆:桜の星の子、ありがとう。あなたの気持ち、とても温かいよ。大事にする。桜ってなんだかかがやいているね。いつか星国を桜で飾りたい。−コメットより。

 メッセージを、プラネット王子のもとに、星力で飛ばすと、彼のくれた「桜の星の子」を、自分の部屋のチェストの脇に置いた。部屋の中にいつでも桜の木がある。そんな感じがとてもうれしい。コメットさん☆の心には、桜が咲いた…そんな気分。

 星国に送った桜も、「今増やしながら、いろいろなところに植えているよ」と、王様から電話があった。星力がいっぱいにはたらく星国では、次の冬が終われば、花が咲くかもしれない。その時は見に行ってみたいな…。そう思うコメットさん☆だった…。

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★第100話:桐の木の秘密−−(2003年4月下旬放送)

 コメットさん☆の大好きな桜の季節は終わり、鎌倉は新緑の季節になった。山の木々も、生き生きと薄緑色の葉っぱを出している。そんなある日、沙也加ママさんとコメットさん☆は、製図で忙しい景太朗パパさんに代わって、裏山の畑に、野菜の苗の植え付けに行った。

 二人は菜園用の箱に、野菜の苗と、移植ゴテ、手袋を持つと、裏山への道を歩いた。ツヨシくんと、ネネちゃんは、まだ学校だから、珍しく二人きり。畑には、既に景太朗パパさんが、苗を植えられるように、有機質肥料を入れ、畝立て(うねたて※下)はしておいてくれている。あとは穴を掘って苗を植えて、水をまくだけだ。

コメットさん☆:沙也加ママさん、ママさんは、お花は作らないんですね。

沙也加ママさん:そうねぇ。あまり作らないわね。お店があるから、手を掛けていられないし…。本当は土いじりがきらいなわけじゃないんだけど…。コメットさん☆は作ってみたい?。

コメットさん☆:あ、いえ、その…。

沙也加ママさん:いいのよ。何か作ってみたければ。お部屋のゴムの木だけじゃ、あんまり面白くもないわよねぇ。ウッドデッキをお花で飾ってみてもいいのよ。

コメットさん☆:はい…。…でも私、あまり育て方も知らないし…。地球の植物は、まだあまりよくわからないですから…。

沙也加ママさん:そんなに違う?、星国と地球の植物って。

コメットさん☆:けっこう違う気がします。

沙也加ママさん:そう…。じゃ、今度お花屋さんに行きましょ。手のかからないお花を選んでみたらどうかしら。

コメットさん☆:はい。じゃあいろいろ教えてください。

沙也加ママさん:もちろん。パパも喜ぶと思うし、ツヨシやネネにもいいと思うわ。

 沙也加ママさんとコメットさん☆は、畑に苗を植えながら、話を続けた。

コメットさん☆:…沙也加ママさん、さっきから「きれいだな」って思っているんですけど…、あの木は何ていう木ですか?。

 コメットさん☆は、畑を見下ろすように立つ、薄紫色の小さなラッパのような花がたくさん咲いている、背の高い木を指さして聞いた。

沙也加ママさん:ああ、あれはね、キリ。桐の木って言うのよ。冬の間は棒みたいな木なのに、春になるとああして薄紫色の花を咲かせるの。成長がものすごく早い木。とても大きな葉っぱよ。

コメットさん☆:きれいな花ですね。桐っていうんですか。

沙也加ママさん:桐の木はね、軽くて加工がしやすいから、タンスやゲタ、小さな箱なんかの材料になるわ…。それと…、よく昔は女の子が生まれると、わざわざ植えたりしたものよ。

コメットさん☆:え、何でですか?。男の子じゃ植えないんですか?。

沙也加ママさん:今でもそういう考え方は割と普通だけど、女の子は男の人のところに嫁ぐって感覚だったのね。だから、「嫁入り道具」ってものが必要と考えられていたの。それでお嫁入りするときに、タンスとかの家具まで持って、相手の男性の家に嫁ぐっていうものだったわけ。その時に、持っていくタンスに、桐はとってもよかったのよ。なぜなら、成長が早いから、女の子が産まれて、その子がちょうど結婚するような歳になると、タンスに加工できるってわけね。

コメットさん☆:へぇ…そうなんですか。…あの木は、誰かのために植えられているんですか。あ、もしかして、ネネちゃんの…?。

沙也加ママさん:いやぁね、違うわよ。ふふふっ。あの木はもっと前からあったわ。私とパパがここに越してきたときから…。でももっと小さな木だった…。それからツヨシとネネが生まれて…、コメットさん☆がやってきて…。気がついたら、あんなに大きく…。

 沙也加ママさんは、遠い日を見るような目で、木のことを眺めながら、やや情感をこめるように続けた。

沙也加ママさん:…誰のために植えていたわけじゃないし、女の子が嫁ぐときに…なんて今時…。…でも、そうね、ネネやコメットさん☆が結婚するときは、あの木なら十分タンスになるわねぇ…。うふふふ…。桐は虫除けの成分が入っているから、中に入れた衣類が、虫に食われなくていいのよ。

コメットさん☆:わ…、私の結婚なんて…。

沙也加ママさん:コメットさん☆の結婚相手って、…どんな人かしらね。見てみたいなぁ…。…でもまだ先のことよね。ふふふ…。

 沙也加ママさんは、そう言って、ちらりとコメットさん☆を見た。コメットさん☆は、ちょっと恥ずかしいような気分とともに、なんだか、少し心配な気持ちにもなった。…そんな人、いつか本当にあらわれるのかな、…もう出会っているのかな…と。

 そして、コメットさん☆は、ゆっくりと桐の木に近づいて、手のひらを木に当ててみた。すると不思議な感覚が、コメットさん☆の体から手のひらに向かって流れた。それはまるで、星力が手のひらから出ていくような…。コメットさん☆は、びっくりして、木を見上げた。木は、何も語ることなく、ただ風に揺れている。薄紫色の花もそのままに。

沙也加ママさん:…桐の木の花はきれいよね。あんまり薄紫なんて色の花が咲く木ってないし…。花が終わると桜のように花はぱらぱらと散るのよ。

コメットさん☆:そうなんですか…。星国にはこんな木はないですね…。

 コメットさん☆は、なんだか不思議な気持ちになっていた。この木が、自分のことを知っているような気がしたから。私は星の導きで、この家にやってきた…。でもそれを、ずっと前からあらかじめ知っている木があったとすれば、それはこの木…。そんな気持ちがどういうわけだか、したから…。そんなことありえないはずなのに…。

 

 夜になって、コメットさん☆はパジャマ姿で、ベッドの上から部屋の窓の外を見ていた。すると、窓の外がぼんやりと紫色の光に包まれ、何だろうと思ったとたん、突然強い眠けがコメットさん☆をおそい、つい目を閉じて、その場にくずおれてしまった。

 気がついてみると、コメットさん☆は、パジャマ姿のまま、裏山の桐の木の前にいた。

コメットさん☆:(なんでこんなところにいるんだろう私。…うーん、思い出せない…。)

桐の木:(それは、私がここに呼んだからですよ。)

 コメットさん☆は、直接頭の中にささやくような声にびっくりして、木を見上げた。桐の木は、夜であるはずなのに、ぼぅっとわずかな光に照らされるように光り、高い位置に咲いている薄紫色の花を、いっそう際だたせていた。

コメットさん☆:(あ…あなたは誰?。桐の木の妖精さん?。)

桐の木:(あなたは、この星の人ではありませんね?。遠い違う星から来た女の子…。)

コメットさん☆:(…どうして、知っているの?。)

桐の木:(私は、いつかあなたが、こうしてこの家にやってくることを知っていました。あなたは星の導きによって、ここにやってきましたね。そして今、星の力を操り、いろいろな人を楽しい気持ち、うれしい気持ち、大切に思う気持ちにさせています。)

コメットさん☆:(…昼間、私が手を触れたときに、不思議な感じがした…。それで知っているの?。桐の木の妖精さん。)

桐の木:(私は妖精ではありません。ただの木ですよ。でも、だいたいのことは知っているかもしれませんね。例えば…、あなたの今の心のなかとか、未来のこととか…。)

コメットさん☆:(私の…今の心?。未来?。それってどういうこと?。)

桐の木:(あなたは昼間、あなたの「いちばん大事な人」になる男の人が、あらわれるのだろうか、あるいは、その人にもう出会っているのだろうかと思いましたね。)

 コメットさん☆は、どきっとした。

コメットさん☆:(…私の「いちばん大事な人」って…。)

桐の木:(その人があらわれたら、私を切って家具にしてもいいですよ。私はあなたのために、ここにこうして生えているのでしょう。)

コメットさん☆:(…そんなこと…、私はできないよ。それじゃあ、あなたの命を切ることになってしまうもの…。それに…、だれが決めたの?。そんなこと…。)

桐の木:(…あなたはやさしいのですね。)

コメットさん☆:(…やさしいだなんて…そんな…。だって私のために、あなたを切るなんて…。別に家具なんていらない…。そんなことより、あなたがいつまでもきれいな花を咲かせてくれるほうが、みんなが喜ぶと思うもの…。)

桐の木:(あなたのそのやさしい心が、きっとあなたを、いつか必ず、とても多くの人たちに愛される立場に導くでしょう…。)

コメットさん☆:(えっ?、それって未来の予言なの?。…もしそうなら、私の…、結婚相手って…、……いるとしたら…だれ?。)

桐の木:(あなたは自分が王女であるという立場ゆえ、自分の心に正直になれないところもある…。…私はあなたが将来どうなるか、予言することもできます。…でも、それを知ってしまって、あなたはどうするのです?。)

コメットさん☆:(……そ、それは…。)

 コメットさん☆は、考え込んでしまった。それは桐の木の言うとおり。もしそれが知っている人だったら…。明日からどういう気持ちで、その人に接すればいいのだろう…。

桐の木:(あなたは今、結婚相手が、もし知っている人だったら、明日からどういう気持ちで接すればいいかわからないと思いましたね。…だから知らないほうがいいのです。そんなことを思い悩むより、今はまだ、もっといろいろな「人の想い」を感じることのほうが大切でしょう。でも…、…心の目を常に見開いていてご覧なさい。そうすれば…、いつか……きっと……。)

 コメットさん☆は、考えたことも見透かされてしまうのかと思ったとたん、ふぅっと気が遠くなり、倒れそうになる感覚に見舞われた。いけない…と思ったが…。

 気がつくと、朝になっていた。コメットさん☆は、ちゃんとパジャマで、自分のベッドにきちんと寝ていた。目を覚ましたコメットさん☆は、ゆっくり起きあがった。

コメットさん☆:あれ…、夢を見ていたのかな…。なんだか不思議な夢…。木とお話するような夢だったような…。あっ!。

 コメットさん☆は、自分の右手に持っているものを見て、思わず声をあげた。…右手で知らない間ににぎっていたものは、…桐の木の花一輪であった。コメットさん☆は、それを見るなり、急いで縁側からパジャマ姿のまま、裏山に走った。その様子を、怪訝な顔で沙也加ママさんは見送った。

沙也加ママさん:コメットさん☆?。どうしたのかしら?。

 コメットさん☆は、息を切らせて昨日の桐の木の前にやってきた。右手の手のひらにある桐の木の花ごと、その手のひらを木の幹に当てる。…ところが、桐の木は何の反応もしない。夜の「会話」のように、語ることもなければ、昼間のように不思議な感覚を感じることもない。コメットさん☆は、何度か手を当ててみて、さらにはバトンを出して、星力で木に語りかけようともしてみた。それでも木は、何も語らない、ただの木に戻っていた。コメットさん☆は、力無く木を見上げた。昨日と同じように、薄紫色の花が咲いて、そよぐ風に揺れていた。

 コメットさん☆は、半信半疑のような、自分でもうまく説明できないような気持ちになりながら、裏山をあとにした。

ツヨシくん:コメットさん☆おはよう。何やっているの?。

ネネちゃん:パジャマのままでどうしたの?。

コメットさん☆:あ、あはっ。おはよ。ち、ちょっと…ジョギング。あははは…。

沙也加ママさん:おはようコメットさん☆、パジャマのままで何しているの?。

コメットさん☆:お、おはようございます、沙也加ママさん。な、何でもないです。ちょっと朝の運動…。あははは。

 コメットさん☆は、恥ずかしそうに笑った。しかし、右手には、相変わらず桐の木の花が一輪、にぎられていた。

コメットさん☆:(あれは夢なんかじゃない…。でも夢じゃないとしたら何だろう?。どうして私の未来を知っているの?。いつかきっと…っていうことは…。それにしても、心の目を常に見開くって…どういうこと?。)

 コメットさん☆が、本当に「いちばん大切に想う人」は、いつかあらわれるのか…。それとも、もうあらわれているのか…。

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●桐の木についての解説→こちら


※注:畝立てとは、作物を植えるために、土を畑の面から少し高く、帯状に盛り上げることを差して言います。


★第101話:お泊まりは星空の下−−(2003年5月中旬放送)

 ある日、メテオさんがコメットさん☆の家に、お泊まりすることになった。それはメテオさんが、ふと漏らした一言から始まった。

メテオさん:そういえば、コメットの部屋って、前に行ったときのまま?。あのときは星国のお母様のせいで、あまりちゃんと見なかったけど。そのままなのかしら?。

コメットさん☆:うーん。特に変わっていないけど。桜の星の子があるよ。

メテオさん:桜の星の子?。何それ?。

コメットさん☆:一度泊まりに来ない?、メテオさん。そうすればわかるよ。

メテオさん:……。それは…行ってもいいけど…。

 以前のメテオさんだったら、「なーに言ってくれちゃうのかしら」とか答えて、断っていたに違いない。だが、今はコメットさん☆は友だち…。

 沙也加ママさんと、景太朗パパさんに相談して、「大歓迎」との答えを得たコメットさん☆は、メテオさんを、週末の土曜日「お泊まり」に呼ぶことになった。

 

 沙也加ママさんは、その日、朝からはりきっていた。何をメテオさんに食べさせようかしら…。掃除にも一段と熱が入る。一方コメットさん☆も、ちょっとそわそわ。ツヨシくんとネネちゃんは、もう楽しみでしょうがない。沙也加ママさんは、いろいろコメットさん☆に聞いてくる。メテオさんの家族のこと、住んでいる家の様子、好み…。コメットさん☆は、質問責めに圧倒されそうである。

 午後になって、メテオさんはやってきた。玄関の引き戸を開けて入るメテオさん。

メテオさん:…こんにちは。

沙也加ママさん:メテオさんいらっしゃい。さあ、遠慮なく上がってね。

メテオさん:…はい。

 メテオさんも、ちょっと緊張気味だ。

景太朗パパさん:メテオさん、いらっしゃい。今日は風岡さんちのお嬢さんがお客様だね。

ツヨシくん:メテオさん、遊ぼう!。

ネネちゃん:メテオさん、何して遊ぶ?。

コメットさん☆:いらっしゃい。メテオさん。

メテオさん:おじゃまします。

 メテオさんは、そういうと玄関から上がって、コメットさん☆の部屋に向かった。ツヨシくんやネネちゃんもいっしょだ。4人でボードゲームをしたりして遊ぶ。

 

 やがて夕食の時間になった。メテオさんにとっては、珍しく大人数での食卓になる。いつもは幸治郎さんと、留子さんと3人だけだから。おかずは鳥の竜田揚げやサラダ、それにグラタン、漬け物、ひじきの煮物、ごはん…。メテオさんは、普段食べないものも食卓に上り、珍しそうに食べる。その様子を見て、沙也加ママさんと、景太朗パパさんはにっこり。

景太朗パパさん:メテオさんは、コメットさん☆と同い年かな?。

メテオさん:ええ。そうだと思いますわ。

沙也加ママさん:おいしい?。お口に合うかしら?。

メテオさん:は、はい。うちでもちゃんと、洋食も和食も食べますから。

沙也加ママさん:そう。よかった。

コメットさん☆:メテオさんが来るって聞いたら、沙也加ママさんとても張り切っていたんだよ。

沙也加ママさん:あー、コメットさん☆、それはないしょよー、もう。

 食卓に笑い声が響いた。メテオさんも、ちょっと恥ずかしそうに笑う。

メテオさん:(こんなに大勢で食事するのは、久しぶりかもしれないわ。なんだか面白いわ)。

ツヨシくん:メテオさん、食事がすんだら、お風呂だよ。ツヨシくん、わかしておいたから。

ネネちゃん:ツヨシくん、ただスイッチ入れただけじゃない。

ツヨシくん:…それは、そうだけど。

コメットさん☆:あはははは。

 メテオさんも、それにつられて笑う。大勢の家族の食卓は、思いもかけずに楽しい。

 食後、お風呂をすすめられるメテオさん。ツヨシくんとネネちゃんは、いっしょに入ると言って聞かない。メテオさんは、ちょっと気後れするが、小さい子どもにはかなわない。

メテオさん:いいわ。いっしょに入りましょったら、入りましょ。

ネネちゃん:わーい、ネネちゃんメテオさんといっしょー。

ツヨシくん:ツヨシくんもいっしょー。

コメットさん☆:ああ、いいなぁ。私もいっしょに入ろうと思っていたのに。でも…、入っちゃお。

 藤吉家の風呂場は、それほど広くない。ツヨシくんとネネちゃんが小さい子といっても、4人で入るのはかなり無理なのだが、大騒ぎで入ってしまう。

沙也加ママさん:あらあら、小さい子が4人いるみたいね。ふふふ。…メテオさん、タオルおいて置くわねー。ピンク色のがそれよー。

メテオさん:あ、はーい。…こら、ツヨシくん、ちゃんと体流してから、湯船に入らないとダメよったら、ダメよ。

ツヨシくん:メテオさん、ママみたいだー。

メテオさん:なんですってぇー。誰がママよー。まだ当分ママにはならないわよ!。

コメットさん☆:あははははははは。メテオさんも形無しだね。

ネネちゃん:ツヨシくんメテオママに怒られたー。

メテオさん:だぁからぁ!。お願いだから勘弁してよ、そのママっていうのは…。まだその歳じゃないわよう…。

コメットさん☆:ツヨシくんもネネちゃんも、いいかげんにして、そろそろ上がらないと、のぼせちゃうよ。冷たい飲み物が待っているよ。

メテオさん:コメットは、毎日こんなしてお風呂入ってるの?。

コメットさん☆:ううん。普通は一人で入るよ。たまにはツヨシくんとネネちゃんといっしょに入るけど。

メテオさん:おこちゃまのパワーには、ついていけないわよ。

コメットさん☆:メテオさんにも苦手ってあるんだね。あはははは。

メテオさん:…決まってるじゃない。もう。笑い事じゃないわよぅ。

 メテオさんは、両手を湯船のへりにのせて、ため息をつきながら言った。が、その目はどこか楽しそうだった。

 お風呂から上がった4人は、パジャマに着替えて、コメットさん☆の部屋で、メテオさんの話を聞いた。

ネネちゃん:メテオさんのカスタネット星国ってどんなところ?。

メテオさん:そうねぇ。コメットの星国より小さいけど、まあまあ居心地のいいところよ。1年が長くて、少し地球より涼しいかな。花が咲く森があって、タヌキビトっていう、世話をしてくれる星人がいるわ。

ネネちゃん:メテオさんのおうちの人はやさしい?。

メテオさん:今住んでいるうちのこと?。それならやさしいわ。幸治郎さんと留子さんという、お父様とお母様がいるわ。景太朗パパさんや、沙也加ママさんより歳とっているけど。あと、猫がいるのよ。メトって言う…。

ネネちゃん:猫いるの?。ネネちゃん見たい。

ツヨシくん:ツヨシくんも見たい。コメットさん☆は?。

コメットさん☆:私も見たい…というところだけど、この前メテオさんの、お手伝いに行ったときに見ちゃった。

ツヨシくん:あ、コメットさん☆もう見たの?。いいなぁ。連れていって欲しかったなぁ。

ネネちゃん:ネネちゃんもー。

コメットさん☆:ごめんね。連れていけなくて。

メテオさん:もう少しメトが大きくなったら、見せてあげるわ。まだ小さくて、いろいろいたずらするのよ。

ネネちゃん:メテオさんの星国のお父さんとお母さんはどんな人なの?。

メテオさん:…お父様は、私が生まれる前に亡くなったわ。だからいないの。

ツヨシくん:えー、メテオさんのパパいないの?。

メテオさん:そうよ。

ネネちゃん:さびしくない?。

メテオさん:今は…、寂しくないわ。地球のおうちの幸治郎お父様と、留子お母様がやさしくしてくれるし…。それに…あなたたちみたいな友だちもいるもの。

 メテオさんは、静かにそう言うと、ちらっとコメットさん☆を見た。

ネネちゃん:星国のお母さんは?。

メテオさん:お母様は…。怒ると怖ーい人よ。星国の女王様。忙しいらしくて、あまり最近は話もしてないわ。小さい頃は、いたずらして、よくお尻叩かれたりしたわ。私も、何て言ったらいいのかしら。いつか星国を継いでも、あそこまで厳しくなりたくないなって思うけど…。

ツヨシくん:思うけど…?。そんなに厳しいの?。メテオさんでもかなわない?。

メテオさん:なんか引っかかるわねぇ。その「私でもかなわない」っていうのは…。フフフフ…。…でも、お母様のこと、本当は好きよ。一人で星国を治めて、私をこうやって送り出してくれたんだし。女王って大変なんだと思うわ。

ネネちゃん:ふーん。

コメットさん☆:メテオさんも大変なんだね。

 メテオさんは、なんだか同情を集めているような、不思議な気分だった。こんなことを人に話したことはなかったし、相手の反応も、予想できなかったから。

ネネちゃん:イマシュンは?。

メテオさん:えっ!?。

ネネちゃん:メテオさん、イマシュンが好きなんでしょ?。

メテオさん:どうして、知っているの?。

 メテオさん、びっくりするとともに、少し赤くなって聞いた。

ネネちゃん:コメットさん☆が教えてくれた。メテオさんは、イマシュンのお姫さまなんだよって。

メテオさん:…コメットー!。

 メテオさんは、コメットさん☆のほうに向き直ると、目を三角にして言った。コメットさん☆はばつが悪そうに答える。

コメットさん☆:あはっ、あはははは。だってあれだけイマシュンといっしょにいれば、誰だって知っていると思うよ。

メテオさん:もう…、それはそうだけど…。おこちゃまにまで何でもしゃべっちゃうんだから、コメットは。…そうね、うそついてもしょうがないわ。…瞬さまのこと、好きよ……って、照れるじゃないのったら、照れるじゃないのー!。

コメットさん☆:ね?。メテオさんは、イマシュンのお姫さま。

メテオさん:……。

 メテオさんは、すっかり耳まで真っ赤になってしまった。

ネネちゃん:イマシュンとどんなことしゃべるの?。

メテオさん:どんなって…、歌のこととか、瞬さまのおうちのこととか…。瞬さまもお父様いないの。

ネネちゃん:そう…。イマシュンもかわいそう。

 ちらっとネネちゃんのことを見るメテオさん。

コメットさん☆:…そうなんだ。イマシュンにもお父さんいないんだ。

メテオさん:でも、もうそんな話はやめにして、面白い話を聞かせてあげるわ。ふふふ…みんな、今晩おねしょかもよ〜。

 メテオさんは、いたずらっぽく笑って言った。

ツヨシくん:ツヨシくん、おねしょ困る。

ネネちゃん:ネネちゃんも困る。

コメットさん☆:コメットさん☆も…、この歳になって…困る。

メテオさん:コメット、あなたまでしないでよ!。…やっぱりお泊まりには怪談よね、か・い・だ・ん。

ツヨシくん:かいだん?。1階から2階にあがるやつ?。

メテオさん:そういうお約束なんじゃなくてぇー。瞬さまが地方公演に行ったときの、こわーい話。…どう、聞きたい?。

ツヨシくん:う…うん。

ネネちゃん:ネネちゃんこわい…けど、聞きたい。

コメットさん☆:…やっぱり、聞きたいかも…。

メテオさん:ふふふふ…。じゃあ聞かせてあげるわ。瞬さまが地方公演に行って、コンサートの1日目が終わったんですって。そして普通の旅館に泊まることになったんだそうよ。そうして、マネージャーっているじゃないの。あのよく瞬さまといっしょにいる黒岩さんっていう人。あの人と同じ部屋に泊まって、夜遅いから布団に入って寝たんですって。

ネネちゃん:わあこわい。

ツヨシくん:まだこわくないじゃんか。しょうがねーな。

メテオさん:ふふっ。これからよ。…そしたら、夜中に瞬さまが寝苦しくなって、ふと目を覚ましたんですって。そうしたら、部屋に白い服を着た女の人が立っていて、じっと瞬さまのことを見ていたんですって。でも、瞬さまは、どうしてか身動きがとれなくて、声も出せないの。なんとかしてとなりに寝ていたマネージャーに声をかけようとしたんだけど、体が動かなくて…。

ネネちゃん:こわーい。コメットさん☆こわいよ。

コメットさん☆:大丈夫だよ。メテオさん、それって「金縛り」だよね。沙也加ママさんが教えてくれた。

メテオさん:…ていうことは、コメット、最近まで知らなかったの?。まったくお気楽ねぇ…。

コメットさん☆:うん。知らなかった。あははっ。

メテオさん:…そういうお気楽な人はおいておいて…、やっとの思いで、瞬さまはマネージャーに手を伸ばして、彼を叩いて起こしたんだそうよ。それで、二人でその女の人をよく見たんですって。ところが、変なことに、その女の人は、じーっとこっちを見るだけで、動きもしないんですって。そこでようやく金縛りが解けた瞬さまは、マネージャーと、なんとか起きあがって、その女の人に近づいてみたら…。

ネネちゃん:…みたら…?。

ツヨシくん:…みたら…。

コメットさん☆:……。

メテオさん:なんと、その女の人は、壁に貼ってあったポスターだったんだって。たまたま寝るまでは、気がつかない位置に貼ってあったんですって。

ツヨシくん:なぁんだ。こわくないじゃんか。

ネネちゃん:ほんとだ。こわくない…。

メテオさん:ふふふ…。やっぱりこわくなかった?。ただ、瞬さまも、どうして身動きがとれなかったのかだけは、わからなかったそうよ。

ツヨシくん:ふーん。なんで身動き取れないの?。

メテオさん:たぶん疲れていたんじゃないのかしら。瞬さま忙しいし…。あ、私お手洗い行って来るわ。

ネネちゃん:私もいっしょに行く。

ツヨシくん:ツヨシくんも。

コメットさん☆:…一応、私もいっしょに行こうかな。あははは…。

メテオさん:何よ、みんなこわくないんじゃなかったの?。ふふっ。面白ーい。

 メテオさんは、ちょっと笑って言った。みんなでお手洗いに行ってから、ツヨシくんとネネちゃんを寝かしつけた、メテオさんとコメットさん☆。そして、メテオさんは、コメットさん☆と同じベッドに入った。

メテオさん:あー楽しかった。こんなに笑ったり、私のことを人に話すのなんて、はじめてよ。

コメットさん☆:メテオさん…、そうなんだ…。

メテオさん:だって、お父様やお母様は、いろいろ話もしてくれるし、聞いてもくれるけど、話ズレていることも多いし…。

コメットさん☆:メテオさん、今夜はみんなのお姫さまだったね。

メテオさん:えっ!?、どういうこと?。

コメットさん☆:ツヨシくんやネネちゃん、それに瞬さんにも慕われるお姫さま。

メテオさん:……。

 メテオさんは、目を丸く見開いて、しばらくコメットさん☆を見つめていたが、目を元に戻して…。

メテオさん:…そう…かもね…。ふふっ。

 藤吉家の屋根の下、夜は更けてゆく。コメットさん☆の部屋の窓からは、星空が見える。星は、星国の二人の王女に、またたくように光を投げかける。

 時々思いがけないことを言う友だちコメットさん☆。それも今は、ちょっと楽しい、ちょっとうれしいメテオさん。今夜はきっと、楽しい夢…。

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★第102話:心ののぞき見−−(2003年5月中旬放送)

 ここ数日、五月晴れの天気に誘われて、メテオさんとコメットさん☆は、二人で連れ立って、市内を歩いたりしていた。時にはちょっとした買い物も。しかし、それを尾行しているものがいた。カロンである。

 時々視線を感じて、振り返るメテオさんとコメットさん☆。だが、なかなかその視線が、本当に自分たちに向けられているのか、また誰なのかはわからない。しかし、二人がコメットさん☆の家の近くまで来たとき、メテオさんがふいに振り向いたため、その姿が見えた。

メテオさん:待ちなさいよ!。

 電柱の陰から走り出そうとするカロン。すぐに追いつくメテオさん。

メテオさん:どういうつもり?。このところずっと私たちをつけていたわね。何のまね?。

 カロンは振り向き、バトンを出すと、苦し紛れに振った。

カロン:メテオさまとコメットさまが、殿下をどう思っているのか、申し訳ありませんが、心を読ませていただきます。

メテオさん:なんですって!?。

カロン:メテオさま、ぼくの目を見て!。

メテオさん:……。

 メテオさんは、思わずカロンの目を見てしまった。しだいに色を失ってゆくメテオさんの目。

コメットさん☆:いけない!メテオさん!。

 コメットさん☆は、メテオさんをそばの塀に突き飛ばして、目線をそらさせた。軽くほほをピシャピシャと両手で叩いて言う。

コメットさん☆:メテオさん、目を覚まして!。

メテオさん:…わ、私…。

コメットさん☆:カロンくん!。何で…こんなことをするの?。

 コメットさん☆は、カロンの目を見ないように、下の地面を見ながら聞いた。

カロン:お二人のいずれかは、将来殿下のお妃になられる方かもしれません。今のうちにそのお気持ちを確かめたいと、ぼくが思ったからです。

メテオさん:ふざけないでったら、ふざけないで!。

 メテオさんは塀から起き上がると、厳しい目でカロンを見て言った。

メテオさん:私もコメットも、あんたらの星国のオモチャじゃないわ。私は私の、コメットにはコメットの、自分で決める未来があるのよ!。

カロン:…メテオさま。

メテオさん:…そんなばかげたことを、いまだに言うなら、少々痛い目にあってもらうわ!。

 バトンで星力弾を発射して、カロンに打ち当てるメテオさん。

メテオさん:あなたが鬱々とした日を送っていたときだって、私はなんとかしようとしたはずだわ。殿下に対する気持ちなんて、ヘンゲリーノだかの策略を、みんなでうち破ったはずの今、知ってどうするのよぅ…。私たちの気持ちは、私たちで決めるわよぅ…。

カロン:ああーーー!。

 しびれて倒れるカロン。一方、メテオさんは涙を流していた。

コメットさん☆:メテオさんやめて!。星力をそんなことに使っちゃだめ。まって!。今私、王子を呼ぶ。

メテオさん:…王子?。

 コメットさん☆は、リングとバトンの力で、王子に星力メールをすぐに送った。

コメットさん☆:(プラネット王子、すぐに来て。あなたに確かめたいことがあるの。必ずすぐに来て。−−コメット。)

 王子は、橋田写真館で、お客さんから持ち込まれたフィルムを、自動現像プリント機に入れ、仕上がりを待っていた。自動現像プリント機は、1枚また1枚と、プリントされた写真を吐き出してくる。それがフィルム1本分たまれば、伝票を確認して、袋に入れるだけだ。

 そんな作業を鼻歌混じりにこなしていた王子の手元に、紙飛行機のように飛んでくる1枚の紙片。

プラネット王子:うん?。…あ、コメットからだ。なんだろう?。

 王子はすぐそれを手にとって読んだ。

プラネット王子:…なんだ?。何かあったな。…すぐに来て、か…。おーい、ミラ、カロン。ちょっと頼む。

ミラ:何ですか、兄さま。

プラネット王子:どうもその「兄さま」ってのは、調子狂うんだよなー。…あれ、カロンは?。

ミラ:学校の友達のところに行くとか言って、だいぶ前に出かけていきましたけど?。

プラネット王子:えっ!?。

 王子の心に、いやな胸騒ぎがわき起こる。

プラネット王子:…とにかく、この残りのプリント、まとめて伝票と照らし合わせて、袋に入れておいてくれ。ちょっとオレも出てくる。

店のおやじさん:おっ、彼女からのお誘いかい?。まあ行って来いよ。

プラネット王子:…おやじさん…。

 王子は作り笑いを返すと、コメットさん☆の作った星のトンネルで、メールのもとに飛んだ。

プラネット王子:…どうした!?。コメットに…メテオ。…あっカロン!。

 王子は三人のところに、写真館のエプロンとサンダルのまま駆けつけてきた。

コメットさん☆:…王子!。

メテオさん:…王子って、あのプラネット王子!?。コメット、殿下の居場所知っていたの?。

コメットさん☆:ごめん、メテオさん。話はあと。プラネット王子、これってどういうことなんですか?。

プラネット王子:どういうって?。…何があったんだ!?。

メテオさん:とぼけないでよ!。あなたがカロンを操って、私たちの心を読もうとしたんでしょ!。

コメットさん☆:メテオさん…。ちょっとまって。

 コメットさん☆は、メテオさんを押しとどめた。

プラネット王子:…?。何のことだ?。心を読む?。なんだいそりゃ?。あ!、もしかして、カロンが、カロンが何かしたのか!?。

コメットさん☆:カロンくんが、メテオさんに…。私たちのどちらかが、殿下のお妃になるかもしれないから、今のうちに気持ちを確かめるとか言って…、メテオさんの心を読もうとしたの…。

カロン:…殿下。

プラネット王子:…何だって!?。カロン、本当なのか?。

カロン:…はい。

プラネット王子:なんでお前そんなことを。ヘンゲリーノ一派か、お前にそんなことを命じたのは?。

カロン:…いいえ、違います。ぼくが勝手にやりました。殿下のお妃さまになられる方は、殿下のことを想って下さらないとと考えたからです…。

プラネット王子:オレは…オレは…、そんなことして欲しいと、思ったことすらないぞ。よけいなことだ。それなのにどうして…、どうしてなんだ!。この二人の気持ちを、どうしてそんなにないがしろにできるんだ!。カロン、お前もなのか!。

 カロンに思わずつかみかかる王子。

コメットさん☆:やめて。やめてよ!。……カロンくん。私はプラネット王子のこと、前はちょっと怖いと思ってた。だけど、今はとても大事な友だちだと思ってる。メテオさんのことも、あなたや、ミラさんのことも。だってみんな星国の仲間だもの。…王子は私に、私の夢の姿や、星国の未来の理想を教えてくれた。そんな気持ちはとても温かいよ。王子はそんなやさしい心の持ち主だと思うよ。でも、そうやって友だちや、仲間だと思う心が信じられないと、あなたが思うなら、…私の、私の心を読んでもいいよ。さあ、読んで…。何も隠さなければならないことなんて、ないもの。…さあ。

 コメットさん☆は、両手を静かに降ろすと、目を閉じた。

 春の風が、みんなの背中をさぁっと駆け抜ける。カロンはバトンをコメットさん☆に向けた。…しかし、その先端はふるえている。そのふるえはだんだん大きくなり…。

カロン:うう…、うわーーーーーん。ごめんなさい。ぼくには、やっぱりできない。

 コメットさん☆は、そっと目を開けた。

プラネット王子:カロン、オレは二人の王女が、将来どうしたいかなんて、聞きたいと思っていないよ。ましてや、オレに対しての気持ちなんて…。こんな形で聞きたいと、オレが考えてるとでも思ったのか?。去年の1月のことを考えれば、オレには聞く資格すら、ないじゃないか。…これ以上、オレに恥をかかせるなよ。

カロン:殿下、ごめんなさい、うわあーーーん。

プラネット王子:泣くなよ。男だろ。男が女の子の前で、そんなに泣くもんじゃない。泣いて責任は取れないんだよ。それから謝るのは、二人の王女にだ。

カロン:メテオさま、コメットさま、ごめんなさい…。

コメットさん☆:もういいよ…。

メテオさん:……。私ももういいわ。

プラネット王子:カロン、帰るぞ。二人とも、驚かしてすまなかった。オレの星国のカロンが、引き起こしたことの責任は、オレにある。本当にすまなかった。でも、オレは君たちが大事な人だと思っている。去年のはじめに、オレを本気で立ち直らせようとしてくれたから…。これだけは信じていて欲しい。…じゃ、オレ帰るから。コメット、早く知らせてくれてありがとう。ごめんな。

コメットさん☆:まって、プラネット王子。…私信じてる。…あなたは、私が迷っていたときにも、自分のことのように考えて、いろいろ教えてくれた。私の心配も、晴らしてくれた。…そうだよね。

プラネット王子:そう思ってくれるのか…。ありがとう。でも、今日は君たちに見せる顔はないな。おい、カロン。おぶされ。

 王子はしゃがむと、泣きやまないカロンを、背中にしょって歩き出した。

コメットさん☆:プラネット王子、まって、送ってあげるわ。

 コメットさん☆は、バトンを振って、星のトンネルで二人を帰した。王子は無言で手を振った。その表情は、複雑なものになっていた。カロンは目をふせたままだ。メテオさんは、ずっと押し黙って、その様子を見ていた。

 行ってしまった王子とカロンを見送って、メテオさんは口を開いた。

メテオさん:コメット、王子はともかく、ミラとカロンには気をつけたほうがいいかもしれないわ。

コメットさん☆:え…、う…うん。

メテオさん:あの二人は、仮にもタンバリン星国の諜報部員なのよ。

コメットさん☆:…そう…だね。

メテオさん:王子だって、監視されているのかも…。

コメットさん☆:…そ、そんな…。ヘンゲリーノさんたちは、タンバリン星国を、もうあやつっていないって、王子は言っていた。

メテオさん:…ずいぶんいろいろなこと聞いたのね。王子の居所がわかったのなら、教えてくれたっていいじゃないのったら、いいじゃないのー!。

コメットさん☆:べ、別に隠すつもりはなかったんだけど…。偶然海岸で見かけたものだから…。

メテオさん:…そうね。私たち、もう王子探しをしているわけじゃないし。

コメットさん☆:王子もかがやきを取り戻しつつあるみたい。カメラマンになりたいんだって。それから、カスタネット星国の王女も、もし将来自分の星国を治めるなら、治め方は自由でいいんじゃないか、って言ってた。

メテオさん:…そう。王子は王子の歩き方を見つけたってわけね。

コメットさん☆:王子は湘南台ってところの、写真館にいるの。ミラさんとカロンくんもいっしょ。このあいだ、王子に会って、トライアングル星雲はの3つの星国は、ひとつにならないといけないと思うか聞いたの。そうしたら、誰かが誰かに無理をさせて、ひとつになるっていうんじゃなく、それぞれがそれぞれの良さを認めあって、支え合うっていうのが理想であり、夢なんじゃないか、って言ってた。それで、いつか私が、ハモニカ星国をまとめていくのかなぁって思った。それから、トライアングル星雲を、ひとつの星国にまとめる必要なんて、ないと思った。だってそれぞれの星国には、それぞれの良さがあると思うから。でも、私が自分のことを考えたら、ケースケの夢はだんだん遠くなるような気がして…、私、どうしたらいいか、だんだんわからなくなってる…。

 コメットさん☆は、そう言うと、ふいに涙をこぼした。

メテオさん:私だって…。

コメットさん☆:えっ?。

メテオさん:瞬さまとデートもしたし、デュエット曲も歌った。芸能記者がうちに来た。恋人だとうわさもされた。だけど、瞬さまのお母様は有名デザイナー。いつか私が星国に帰るとしたら、瞬さまになんて説明すればいいと思う?。

 メテオさんは寂しそうな目で続けた。

メテオさん:だから今、将来はどうなるかなんて、予想もつかないわ。予想もつかない未来を、今決めることなんて出来やしない…。幸治郎お父様も、時がたつと、人の考えなんて大きく変わるんだよって、言ってたわ。だとすれば、だれが私たちそれぞれの、「本当の王子」になるのかなんて、ここで考えたってしょうがないわよ、きっと。

コメットさん☆:メテオさん…。

 コメットさん☆は、メテオさんに抱きついた。

メテオさん:…ちょ、ちょっと、どうしたのよ急に。

コメットさん☆:…そうだね。私たち、もう子どもじゃないのかもしれないけど、まだおとなでもない。今、決めることなんて、ないよね…。

メテオさん:……。もちろん、そんなこと、あたりまえじゃない。

 コメットさん☆が、何を決めたくないと言っているのか理解したメテオさんは、やさしく答えると、抱きついているコメットさん☆の背中に、黙ってそっと手を回した…。

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★第103話:季節はずれの嵐−−(2003年5月下旬放送)

 大船から江ノ島を結ぶモノレール。そのモノレールの、鎌倉山駅前には、大きな桜の木があった。樹齢は50年位。シンボルツリーとして、駅前のロータリーに植えられていた。モノレールが開通する前から、どうやらあったらしい。

 コメットさん☆は、その木が大好きだった。それは桜の木だし、年寄りな木だけれど、手を当ててみると、木のささやきが聞こえるようで…。なんだか、かなり前から自分のことを知っていそうな、そんな気がしていたからだった。ただ枝がところどころ傷んでいるのが、日頃から気になってはいた。

 そんな5月のある日、季節はずれの台風が上陸して、神奈川県にも強い風を吹かせた。コメットさん☆も、窓を叩く風と雨の音に、あまりよく眠れないほどだった。

 翌日、台風一過晴れ渡った青空の中、なんとなく気になったコメットさん☆、鎌倉山駅に行ってみた。…そこには衝撃的な光景があった。シンボルツリーの桜の木の、大きく分かれた枝が2本折れて、垂れ下がっていたからだ。危険なためか、ロープが周囲に張られて、近づけなくなっている。モノレールの乗客たちも、困ったような顔で通り過ぎるばかりである。どうしよう…。コメットさん☆はそっとバトンを出して、星力を木にかけようとするが、枝は切断してしまっており、それをつなぐのは無理そうだ。しかし、このまま放っておけば、枯れてしまうかもしれない。せめて…と思い、根に星力をかけて、元気を回復させようとする。

 コメットさん☆は、家に帰るが、何となくしょげているのを、景太朗パパさんが見つける。

景太朗パパさん:コメットさん☆、元気がないね。どうしたんだい?。

コメットさん☆:…景太朗パパさん…。モノレールの、鎌倉山駅にある桜の木が…。

景太朗パパさん:ああ、あの駅前のか…。その木が?。

コメットさん☆:昨日の台風で…、折れてしまっていました…。

景太朗パパさん:えっ!?。本当かい?。…それは大変だ。見に行ってみよう。

 景太朗パパさんは、車で出ようとするが、沙也加ママさんが既にお店に行くために使っていたので、コメットさん☆といっしょに歩いていくことにした。

景太朗パパさん:コメットさん☆、見なよ、いろいろなところの木がやられている。相当な風が吹いたんだろう。

コメットさん☆:本当ですね…。木は動けないから大変。木って折れたら、もう死んじゃうんですか?。

景太朗パパさん:…いや、必ずしも枯れて死にはしないと思うけど…。程度にもよるだろうね。

 二人は道の左右の木が、かなり傷んでいるのを見ながら歩き、駅前に着いた。景太朗パパさんは、倒れそうになってさえいる、シンボルツリーの桜の木を見てつぶやいた。

景太朗パパさん:うーん、これは想像したよりひどいな…。これはさっそく会のほうで何とかしないと…。

コメットさん☆:会?。会ってなんですか?。

景太朗パパさん:実はこの木は、元々この近くに住んでいたお年寄りが寄付したものでね、その人を中心に、「桜の木を守る会」っていうのがあるんだよ。ぼくはその会員だったりするんだな。寄付したお年寄りは、とっくに亡くなってしまったけどね。会は今でもちゃんと続いているんだよ。

コメットさん☆:そうなんですか?。じゃ、パパさんこの木をなんとかしてあげられませんか?。

景太朗パパさん:もちろん、なんとかしないとならないね…。しかし、予想以上にひどいな…。

 景太朗パパさんが会員になっている町会でも、さっそくシンボルツリーの桜の木を、なんとか復旧できないか、検討がなされた。だが、樹齢が50年以上たっている上に、既に危険な状態とあって、復旧は容易ではなさそうだという結論になる。市とも連絡を取り合って、もう一度検討されたが、駅前ロータリーでの復旧は無理と判断され、切断の上、近日中に撤去されることになってしまった。

 最悪の結果にがっかりするコメットさん☆。ふたたび木の前に行き、何本か折れて転がっていた小さな枝を持ち帰り、花瓶にさして、自分の部屋のチェストの上に置いた。星国に送ればなんとか…。それも一応考えはした。

 その様子を見ていた景太朗パパさんは、沙也加ママさんに相談する。

景太朗パパさん:ねえママ。あの木をうちの裏庭に引き取るのはどうかな?。

沙也加ママさん:ええー?。なんですって?。だってもう折れてしまっているのよ。根付くかどうかもわからないし…。それにどうやって…。

景太朗パパさん:よくいっしょに仕事している、中山造園の中山さんに頼んでもだめかな?。彼は樹医の資格も持っているし。

沙也加ママさん:そりゃ中山さんなら、協力はしてくれるでしょうけど…。あんな大きな木、どうやって運ぶの?。

景太朗パパさん:それはまあ中山さんと、相談してみないと何とも言えないけどさ。中山さんも「桜の木を守る会」の会員だし。…それと、今コメットさん☆は?。

沙也加ママさん:コメットさん☆なら、お風呂に入っているわよ。それがどうしたの?。

景太朗パパさん:よし、ちょうどいい。ママちょっと見てやってくれないかな。

 景太朗パパさんは、沙也加ママさんを連れて、コメットさん☆の部屋の扉を少し開けた。

景太朗パパさん:見なよ、ママ。あれ。チェストの上。

沙也加ママさん:…あれってもしかして、あの桜の木の枝?。

景太朗パパさん:そうなんだよ…。コメットさん☆あの桜の木がなくなっちゃうの、すごくがっかりしていたからね。あの子は、もしかするとああやって星国に送るつもりだよ。あの枝を。

沙也加ママさん:それでなの。朝から元気が何となくないなぁと思っていたんだけど。…しょうがないわね。いいわ。中山さんに相談してみましょ。

 景太朗パパさんは、中山さんに電話をかけて、予定を聞いた。それから鎌倉山駅前町会の事務所に出かけていき、顔見知りの町会長さんに、木を引き取らせてもらえないかと相談した。

町会長さん:ちょうどあさってから撤去作業を考えていたんですけどね。実際の移植作業をそちらでやってくれるなら、市にも話通しておきますし、元々の木を寄贈した方も亡くなっているわけですから、問題ないでしょう。どうやって移植なさいます?。

景太朗パパさん:仕事の関係で、造園業者さんを知っていますので、そこに頼んでうちの裏庭に移植しようかと思います。

 

 いよいよ翌日から工事が始まった。中山造園の数人のスタッフが、手際よく根を堀あげ、折れた枝のところをチェーンソーで切りそろえ、切断面に薬を塗っていく。その痛々しい作業に、思わず目をつぶるコメットさん☆だが、この木を生かすには、しかたがない。

 木は横倒しにされ、大形のトラックに積み込まれた。枝の先のほうには赤い布が下げられ、これから藤吉家の裏山に輸送される。そして夜になって、藤吉家の前まで運ばれた桜の木は、トラックの荷台につけられたクレーンで、庭に降ろされた。さらに所定の位置まで移動される。

 翌日も作業は続けられた。根の負担を減らすため、あらかじめ土には活力剤が注入されている。葉っぱから菌が入らないように、消毒された。支えをつけ、倒れないようにしたり、幹の傷んだところには、コンクリートを詰めて、腐らないように、また風に耐えられるように処理された。その作業をじっと見守るコメットさん☆。バトンを出して、そっと桜の木に星力をかける。桜の木がいままでのように、元気を取り戻せるように…。

 そんなコメットさん☆のところに、景太朗パパさんが様子を見に来る。

景太朗パパさん:コメットさん☆、やっぱりここか。大丈夫。君の力もきっと届くさ。

コメットさん☆:景太朗パパさん…。

 コメットさん☆は、心配そうな目を、パパさんに向けた。それは木の心配ではなく、自分がとんでもないことを言ってしまったかもしれないから…。

景太朗パパさん:いいんだよ。ぼくも楽しみでやっているようなものさ。たぶん、中山さんもそうだと思うよ。あの人は樹医だからね。

コメットさん☆:じゅい…?。

景太朗パパさん:木のお医者さんだよ。傷ついたり、傷んだ木を治すんだ。

コメットさん☆:そうなんですか。人はお医者さん、動物は獣医さん、木は樹医さんが治すんですね。

景太朗パパさん:まあ、そういうことだね。生き物は、ときに誰かの助けがいるときがあるということかなぁ。

コメットさん☆:…やっぱり景太朗パパさんは…。私…。

景太朗パパさん:…まあ、桜の木があのまま撤去されて、捨てられてしまうのはかわいそうかなってのもあったし、桜の木を守る会の会員としては、責任があるなというのもあったし。それから…。

コメットさん☆:…それから…?。

景太朗パパさん:うちには、折れた枝すら拾ってきて、星国に送ろうなんて思う、桜が大好きなお姫さまが一人いるしなぁ…なんてね。

 景太朗パパさんは、いたずらっぽくウインクして、微笑みながら右手の親指を立てて見せた。

コメットさん☆:…パパさん…。知っていたんですか…。ごめんなさい。無理言って…。

 コメットさん☆はちょっと涙を浮かべた。

景太朗パパさん:いいのさ。コメットさん☆には星力があるように、僕らには「ひとぢから」があるってことかもしれないよ。桜は不思議だよね。いろんな人をこれだけ「その気」にさせてしまうんだからね。…ああ、コメットさん☆の拾ってきた枝、せっかくだから元を切りそろえて、その辺にさしておいてごらんよ。時期としてはどうかわからないけど、根付いて、小さな桜の木ができるかもしれないよ。そうすれば、この木の分身だ。

コメットさん☆:……。

 コメットさん☆は、黙ってにっこりと微笑んだ。

景太朗パパさん:おっ、やっといい笑顔が戻ったね。コメットさん☆は、そうでなきゃ。

 こうして藤吉家には、2本目の桜の木がやってきた。シンボルツリーと言われた桜の大木は、だいぶ小さくなってしまったが、樹医を始めとする人の力と、星力をあやつる赤毛の少女の力で、きっとふたたび芽吹き、来年には花を咲かせるだろう。それは、ずっとずっと先まで。そしてこの家の変化を見守るはずである…。いつか…。

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※大船と江ノ島を結ぶ湘南モノレールは、実在のモノレール線ですが、実際には「鎌倉山」という駅はありません。


※挿入歌:花開く君へ


★第104話:ごめんなさいの仕方−−(2003年6月初旬放送)

コメットさん☆:(王子はどう思っているんだろう?。私はタンバリン星国の、かざりものとして必要なの?。)

 コメットさん☆は、5月の「事件」以来、また不安になっていた。王子は王子の道を歩んでいる。王子を悪い人だとは思わない。大事な共通の立場での友だちだとは、今も思っている…。だけど、王子個人は悪い人でなくても、タンバリン星国は、私をどう思っているのだろう?。その疑問はどうしてもぬぐえない。まだ王子を操り人形にして、私や、メテオさんを無理矢理王子と結婚させようとしているとしたら…。そんなのはもう関係ないと思っていた。イヤだ。カロンくんが、策略の手先だったら…。ミラさんも…?。いままで信じていたのに…。いや、今だって信じていたい…。

 疑心暗鬼になるコメットさん☆。ふと「あの日のカロンくん」を思い出しては、ひとりちょっと暗い気持ちになる。そっと自分の部屋の鏡を見る。そこには少し青ざめて、暗い目をした自分が映っていた。コメットさん☆は、静かに目を閉じた。

 そこにプラネット王子からの、「星力メール」が届いた。

プラネット王子:このあいだは、すまなかった。驚かしてごめん。カロンが、謝りたいと言っている。許してくれとは言わないけれど、もしカロンの言い分を聞いてもいいと思ってくれるなら、メテオといっしょに、来てくれないか?。本当は君とメテオのところに行くべきだと思うけれど…。カロンは星力を封印すると言っているんだ。どうか、オレとカロンの願いが届きますように…。−−プラネットより。

 コメットさん☆は、しばらく窓の外を見つめていたが、その紙をポケットに入れると、メテオさんの家に向かった。

コメットさん☆:メテオさん、プラネット王子がこんな知らせを…。

 メテオさんはコメットさん☆が手渡した、星力メールをさらっと読んだ。

メテオさん:ふぅん。怪しいわなのような気もするけど…。向こうの出方を見るにはチャンスかもしれないわ。タンバリン星国が、私たちのどちらかを、今も王子にあてがおうと思っているのかどうか…。王子自身の心のうちも…。コメット、あなたはどう思うのよ。

コメットさん☆:…わ、私は…、やっぱり王子を疑いきれないよ…。私が自分の夢がなんだか、わからなくなっていたときに、いろいろ話をしてくれた王子の目は、何か隠し事をしているような目じゃなかった…。

メテオさん:じゃあ決まったわ。会ってみましょったら、会ってみましょ。…でも、向こうの家に出かけていくのは危険だわ。わなにはまりに行くようなものかも。どこか適当な場所に呼んだほうがいいんじゃないかしら。

コメットさん☆:…うん、そう…だね。

 コメットさん☆は王子に星力メールを返して、稲村ヶ崎に集まることにした。写真館に行ったら、何があるかわからないとすれば…。でも、もし本当にその気になれば、この前写真館に行ったとき、私を捕まえることだってできたはず…。心は千々に乱れるコメットさん☆。

 王子が返事で、コメットさん☆とメテオさんに待ちあわせの場所に指定したのは、なぜか稲村ヶ崎の駅だった。プラネット王子は意外なことに、江ノ電に乗ってやってきた。カロンとともに。稲村ヶ崎駅の改札で顔を合わせた4人。あの5月の時以来である。カロンはうつむいて、コメットさん☆やメテオさんと目を合わせようとしない。

プラネット王子:勝手を言ってすまなかったな、メテオにコメット。実はカロンが、どうしても星のトンネルは使わないと言ってさ。それで君たちの家には、すぐに行かれなかったわけなんだ。

メテオさん:いいわ。海岸に行きましょ。話の内容からして、ゆっくりお茶しながらってものでもないでしょ?。

 メテオさんには計算があった。タンバリン星国の乗り物は、気球や飛行船。もし万が一自分たちを連れ去ろうとしても、稲村ヶ崎を回り込む強い風と、駅に向かう道の狭さからして、着陸できないはずだ。だから逃げ切れる…と。

 一方コメットさん☆は、手のひらに汗をかくのを感じていた。少しドキドキする。4人は無言で、駅の北側を線路と平行に走る細い道路を抜け、踏切を渡って、海岸沿いの国道まで出た。梅雨曇りの空は、鉛色のように垂れていたが、遠くの雲の切れ間からは、わずかに日の光がのぞいていた。海からは強い風が吹く。その強い風は、メテオさんとコメットさん☆の髪を揺らす。プラネット王子が、カロンを促した。

プラネット王子:…さあ、カロン。

カロン:メテオさま、コメットさま、この間はごめんなさい。ぼくは当分星力を封印します。

メテオさん:ふーん。どうしてかしら?。

カロン:ぼくは…、自分勝手にメテオさまと、コメットさまのいずれかが、プラネット殿下のお妃になればいいと思っていました。…でも、それは、ぼくが勝手に考えていたことだったんです。

メテオさん:あなたとミラは、タンバリン星国諜報部員。そうよね?。だから星国の命で私たちを監視し続けた。違うかしら?。

コメットさん☆:…メテオさん…。

プラネット王子:それは…もう違う。

メテオさん:…どういうこと?。

プラネット王子:カロンもミラも、もう星国の諜報部員なんかじゃない。そもそも諜報部なんて、過去のものさ。…オレは、コメットの生活が記録されたメモリーストーンを見た。それで地球というこの星が、そしてこの街が、自分のかがやきを取り戻すのにふさわしいと感じた。それからここに住み始めたが、なかなかオレも目標や望みを見いだせなかった。だが地球の歴史を聞きかじったオレは、オレの星国でかなり前から言われていた、ほかの星国の王女をめとることで、国を併合させ、勢力を強めるのがよいとされるやり方は、はっきり間違いだったと思った。それはいずれ、残る一つの星国に何らかの圧力をかけることになる。タンバリン星国の力は強くなるかもしれないが、その犠牲になる王女の心や星人たちは、だれが償うのか?。そんなことは、大人の都合じゃないか。オレは、そんなやり方の片棒を担ぐのはごめんだ。それに…、君たちには、君たち自身が大事に思っている人は、他にいた…。

 王子は息を継ぐように、ひととき間をおくと、続けた。

プラネット王子:だからオレは、オレの責任で、オレの星国を変えなけりゃいけないと思った。そして一度星国に帰ったんだ。…さすがにオレを、ヘンゲリーノたちもいい加減にはできなかった。なぜなら、見かけ上は王子を立てておかなければ、自分たちの地位が失われるからだ。オレはそれを利用して、やつらを追放に追い込んだ。いろいろ大変だったけどな。地球の歴史の勉強は、役に立ったよ。そして新しい王族会を立てた。そのときさ、諜報部が廃止されたのも。だいたい、星国が王子の行動を監視したり、ほかの星国の王女の感情を監視するなんておかしいだろ?。…だから、ミラもカロンも、もうなんでもないよ。だが、カロンの考えていたことは、まだ間違っていた…。…あと続けろよ、カロン。

カロン:…はい。殿下といっしょに星国に帰り、そしてふたたび地球にやってきました。…でも、やっぱりメテオさまとコメットさま、いずれかが殿下のお妃になられるのが、ぼくはふさわしいのではと思っていました。それは、地球人がメテオさまや、コメットさまのお相手になるとすれば、星国の人間であることを、自ら明かされなければならないでしょう。ですから…。

コメットさん☆:…カロンくん。私の家族は知っているよ、もう私がハモニカ星国の王女だってこと。偶然知られちゃった。それでも、何もかわらないよ。パパさんもママさんも、ツヨシくんもネネちゃんも。みんな私のことを大事に思ってくれてる。…あ、ケースケは、まだ知らないけど。

カロン:えっ!?、コメットさま?。

プラネット王子:何だって!?。

メテオさん:ええーっ!?。私何も言ってないわよ!?。

コメットさん☆:あ、もちろんパパさん、ママさん、ツヨシくん、ネネちゃん以外の人には教えてないよ。パパさんがそうしようって言ってくれた。

プラネット王子:……。な、カロンよ、人間の考えなんて、お前が思うほどには単純じゃないってことだよ。

カロン:…は、はあ。…そ、それでぼくはお二人の心の底を一度確かめたいと思って…、それは殿下をどう思っていらっしゃるのか…。

プラネット王子:もうオレの顔丸つぶれだな…。そんなこと、いちいち人の心を読まなけりゃわからないとしたら、相当鈍感ってことになっちゃうじゃないか…。知っているよ…、オレは…。コメットが、オレのことをいろいろ連れ回してくれた時から…。

カロン:殿下のお気持ちを考えずに、ぼくは勝手なことをしてしまいました。ごめんなさい、メテオさま、コメットさま。ぼくは当分星力を封印して反省します。

コメットさん☆:そんなこと、しなくていいよ。

メテオさん:えっ?。

コメットさん☆:やっぱり殿下は、私が思った通りの人だった。本気で私とメテオさんのことを思って、ヘンゲリーノさんたちとケンカしてくれたんだと思うよ。そうじゃなかったら、去年の1月、私たちのどちらかが、タンバリン星国に行くことになっていたと思う…。…そうですよね?、殿下。

プラネット王子:…それをオレの口から言うのは何だけど、オレが君たちのどちらかを妃にすると言えば、その妃になる人を必ず不幸にすることになる。そんなことはオレ自身どうしてもイヤだった…。…たとえ、君たちにオレは好かれていなくても…。いや、君たちに好かれていないからこそ……。

 王子は、少し寂しそうな視線を落とした。

コメットさん☆:…殿下…。

メテオさん:殿下…。わかったわったら、わかったわ。私たち恋人同士になれないかもしれないけれど、お友達ではいるべきだわ。だってこの地球に、星国の人間は、ここにいるみんなと、ミラさんしかいないのよ。…コメットは、おうちの人に相談できるかもしれないけど、ほかのみんなは誰にも悩みをうち明けることすらできない…。それに3つの星国を、いつか私たちが治めるときが来るとしたら…、やっぱりその時も、こうやって相談して、星の子をどう導くか、星人の気持ちにどう応えるか決めるしかないんだわ。私たちの相手が、だれであっても…。…でもカロン。

カロン:…は、はいメテオさま。

メテオさん:あなたに教えておくわ。人の心なんて、星力でのぞき見するものじゃないのよ。感じるものだと思うわ。だから人は、「言葉」を使うんじゃなくて?。…でも私もあなたにあやまっておくわ。星力であなたを痛めつけたのはごめんね。星力の使い方、私も間違っていたわ。

カロン:メテオさまぁ…。ごめんなさい…。ううう…ぐすっ…。

 カロンはまた泣きべそをかいた。それを見たプラネット王子は、情けなそうな顔で言う。

プラネット王子:また…、泣くなっていっているだろ?。女の子の前で泣くなって。

メテオさん:殿下、私の家に行ってお茶しませんこと?。カロンもコメットも。もっと楽しい話もしましょうよ。

コメットさん☆:…メテオさん!。

 コメットさん☆は微笑んだ。

プラネット王子:…そうかぁ。じゃあお言葉に甘えて…カロン行こうぜ。王女さまのお招きだ。

 プラネット王子は、笑ってカロンの肩をポンと叩いた。

コメットさん☆:殿下…。ありがとう…。あなたが自分の素直な気持ちを語ってくれなかったら…。私たち…。

 王子は、それには答えず、うなずきだけをコメットさん☆に返した。稲村ヶ崎の海岸を離れ、メテオさんの家に向かう4人の足取りは、山を登るように歩いているのに、ちゃんと軽くなっていた…。

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★第105話:コメットさん☆星国へ帰る−−(2003年6月上旬放送)

 夏が始まろうかという5月の終わり、コメットさん☆のティンクルホンに、電話がかかってくる。相手は王妃様。

王妃様:コメット、星の子たちがさみしがっているから、たまには帰ってこない?。王様もさびしがっているの。そっちの一週間くらいの間、星国に帰ってはこれないかしら?。

コメットさん☆:お母様、ちょっとみんなに聞いてみるね。

 そしてコメットさん☆は、景太朗パパさん、沙也加ママさん、それにツヨシくん、ネネちゃんも交えて相談する。星国に少しの間「里帰り」したいと。

景太朗パパさん:そうだね…。いままで配慮してあげなくてごめんよ。たぶんコメットさん☆のお父様やお母様も、したい話や聞きたい話もあるだろうから、しばらく帰ってあげてよ。うちのことは心配しないでいいからさ。

沙也加ママさん:思っいきり甘えていらっしゃい、コメットさん☆。

 コメットさん☆は、真っ赤になって恥ずかしそうにしたが、でも答えは…。

コメットさん☆:…はい。そうします!。

 コメットさん☆も、まだまだ少女なのだ。

ツヨシくん:ええーっ、コメットさん☆帰っちゃうのぉ…。

ネネちゃん:星国にずっと帰っちゃうの?。

コメットさん☆:ちがうの。少しの間帰るだけ。ちゃんと戻ってくるよ。

ツヨシくん:えー…。

ネネちゃん:…さびしいな…。

景太朗パパさん:こらこら、あんまりコメットさん☆を困らせるんじゃない。

 

 星のトレインは、藤吉家の前に入線した。やはりツヨシくんとネネちゃんは、心配そうな様子だ。

ツヨシくん:コメットさん☆、きっと帰ってくるよね…。

ネネちゃん:ずっと帰っちゃやだからね。

 コメットさん☆は、去年の1月に、二人をとても悲しませたと思い、二人と同じ目線にしゃがんで、二人をそっと抱きしめて言った。

コメットさん☆:だいじょうぶ。心配しないで。星国の星の子たちに会ってくるだけ。すぐに必ず戻ってくるから。だから待っていて、少しの間。

 そして、ねこ車掌の開けたドアから、星のトレインに乗り込む。ラバボーとラバピョンを連れて。

ツヨシくん:きっとだよ…。

 コメットさん☆は、にっこり無言でうなずいた。

 フォーッという汽笛の音とともに、走り出す星のトレイン。すぐに空に舞い上がり、やがて吸い込まれるように消えた。少し涙ぐむツヨシくんとネネちゃんを、沙也加ママさんが抱いた。

沙也加ママさん:だいじょうぶよ。心配しなくても。

 でも、その沙也加ママさんの目も、少し潤んでいるようだった。

 

 数時間の旅を終えて、星国に着いたコメットさん☆。王様と王妃様にさっそく抱きついた。

コメットさん☆:お父様、お母様、ただいま。

王様:おお、姫や。無事でなによりじゃ。

王妃様:あらあら、あいかわらずね、コメットは。うふふふ。

(次回へ続く)

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★第106話:ハモニカ星国の海開き−−(2003年6月中旬放送)

 コメットさん☆の短い「夏休み」は始まった。本当に久しぶりに、宮殿で「星遊び」をした。そんなに広くない星国を、星の子を見つけながら歩いた。「地球ってどんなところ?」、そんな質問を投げかける星の子には、「ちきゅうじんっていう人が住んでいて、いろいろなかがやきのあるところだよ」と教えた。ひさしぶりにヒゲノシタの話も聞いた。星人たちも、出会うたびに懐かしんでくれた。だがこれまた質問責めだ。みんな姫様であるコメットさん☆が、普段生活している地球の、とりわけ藤吉家や、その人々について聞きたがった。「ツヨシくんとネネちゃんという双子の小さい子がいるんだよ」、「裏山があって、そこには秋になるといろいろな木の実がなるんだよ」、「海があってそこでみんなで泳ぐんだよ」、「海辺を電車っていう乗り物が走っていて、それに乗ってでかけたりするんだよ」…、そんな話をたくさんした。

 楽しい毎日を過ごすコメットさん☆だったが、ある星人が、「海って、星国の海とはちがうの?。みんなで泳ぐって、どんなことをするの?」と聞いたので、それなら、星国の海でも、みんなが泳いだり、水遊びができるようにならないかなと考えた。そう考えると、さっそくやってみたくなるコメットさん☆。だが星国の海は、暗くて遠く、星国の果てのようなところにある。それでもコメットさん☆は、星のトレインに少し乗って、星国の海に行った。

 星国の海は、暗く、そして黒っぽく波が打ち寄せていた。あんまり気味のいいところではない。そこで、コメットさん☆は海の妖精を呼び出して、協力してもらうことにした。

コメットさん☆:海の妖精さん、姿を現して。

 コメットさん☆がバトンを振ると、海の妖精が姿を現した。意外なことに小さな羽の生えた鳥のような妖精だ。

コメットさん☆:あなたが守るこの海を、みんなで遊べる海にしたいの。いっしょに協力してくれないかな?。妖精さん。

 海の妖精は、無言でうなずいた。そしてテレパシーのように、コメットさん☆の頭の中に、ささやいた。

海の妖精:姫様のお望みなら、この私の力をご自由にお使いください。さあ、どうしたいですか。

コメットさん☆:まず日照りビトを呼んで、ここを明るくして。そして、それから波を静かにして。あと、ずっと遠くまで浅くして。

 海の妖精は、日照りビトを呼んだ。日照りビトは、日を照らす星人。この星人がいてくれないと、夏のようにはならない。それからうち寄せる波を静かにしてくれた。遠浅にするのは、ちょっと星国の大地が、地震のように揺れたが、ちゃんと遠浅にしてくれた。

 コメットさん☆は、星人たちと王様、王妃様、それにラバボーとラバピョンを呼んだ。ラバボーとラバピョンには、星力で人間の姿になってもらった。みんなはやがてぞろぞろと集まってきた。

コメットさん☆:さあ、牛ビトさん、ライフセーバーをやって。

牛ビト:モー?。姫様、ライフセーバーって何だモー?。

コメットさん☆:海でおぼれたり、ケガをしないように、海に入って遊ぶ人を見ていて、守る人。小さな星人や、星の子が水でおぼれてしまわないように、海岸や海の中で気をつけてあげて。

牛ビト:わかったモー。

コメットさん☆:ラバボー、ラバピョン、砂浜を掃除して、キレイにしましょ。

ラバボー:わかったボ、姫様。

ラバピョン:姫様といっしょねピョン。

 三人はバトンを出して、砂浜に積もったままになっていた海草や、流木などをキレイに片づけた。これで砂浜に寝そべったり、砂を掘ったりもできる。

コメットさん☆:じゃあ、いよいよみんな着替えなきゃ。

 コメットさん☆はラバボーとラバピョンのバトンの星力も借りて、集まったみんなを水着に着替えさせた。

コメットさん☆:さあみんな、これで海に入れるよ。準備体操してからそっと入ってね。

 王様も王妃様も、星人たちも、最初はキツネにつままれたような顔をしていたが、なんとなく体を動かすと、そっと水に入り、やがて水のかけ合いなんかが、そこここで始まった。ラバボーとラバピョンも、初めての水着姿にはしゃいだ。

ラバピョン:うわぁ、これってかわいいのピョン。姫様ありがとうなのピョン。

ラバボー:ラバピョンかわいいボ〜。姫様、ボーはメロメロだボー。

ラバピョン:もう、しょうがないのピョン。ラバボー、しっかりするのピョン。

コメットさん☆:ラバボーは、コマッタさんだね。あははは。

王様:どれ、姫の作った海で、水浴びでもしようかね。王妃。

王妃様:そうですね。久しぶりだわ。水遊びなんて…。

王様:おお、王妃は初めてではないのかね。

王妃様:ええ、地球に行っているときに、何度か。

王様:それは知らなかったな。ほっほっほ。

 ヒゲノシタは、いつの間にかなんとウインドサーフィンなんてやっている。いったいどこで覚えたのか?。

コメットさん☆:ヒゲノシタ、どこで覚えたの?。

ヒゲノシタ:姫様、姫様のメモリーボールを見ていて、何となくですじゃ。それと、えーと何て言いましたかな?。ああ、江ノ島とかいうところで…ああっガボガボ…。

 ヒゲノシタはしゃべっているうちにひっくり返ってしまった。

コメットさん☆:あっ、ヒゲノシタ大丈夫?。

ヒゲノシタ:…んああ、ふーっ。ええ、まあ大丈夫ですわい。ああ、歳はとりたくないものですなぁ。

 苦笑いするヒゲノシタ。みんな楽しそうだ。

星人:水って気持ちいいね!。

別の星人:ほんとうだ!。それに塩辛いよ。体がふわふわ浮くね!。

コメットさん☆:海の水には、塩が入っているんだよ。だから塩辛いの。生き物の体は、水に必ず浮くんだよ。

 ラバピョンは、ハモニカ星国の人間としては珍しく泳げるので、顔をつけないで平泳ぎで泳ぐ。それを見てラバボーも追いかけようとするが、ラバボーは残念ながら泳げない。コメットさん☆はそんなラバボーや、泳げない星人たちに星力で浮き輪やビート板を出して渡してあげた。そしてコメットさん☆自身も海に入って泳ぐ。それを遠くから見ていた星の子たちも、つぎつぎに集まってきた。

ラバピョン:ラバボー、早く泳げるようになるのピョン。

ラバボー:あはははは…、なんとか努力しますボ。

コメットさん☆:ラバボー、ラバピョンのいいなりだね。

 ハモニカ星国は、そんなに大きくない星国だけど、みんなが楽しそうに生活している幸せの星。いつもコメットさん☆は、この星のこと、星人、星の子のことを忘れない。だから、みんなも姫様が大好き。

王妃様:コメット、こうやって地球の楽しさを、星国の楽しさにすることだって、あなたの夢をかなえることなのかもしれませんよ。

 王妃様はつぶやくように言った。コメットさん☆は、それを聞いたのかどうかはわからないが、王妃様のほうを向くと、黙ってうなずいた。そしてまたラバボーたちを追いかけるように、海に飛び込んで行った…。

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★第107話:星国と地球の遠い絆−−(2003年6月下旬放送)

 星の子のたち、星人たち、王様、王妃様と楽しく過ごした日々は過ぎ、再び地球に戻ることにしたコメットさん☆。ツヨシくんとネネちゃん、景太朗パパさんや沙也加ママさんが待っている。ちょっと感傷的な顔の王様。

王様:姫、また行ってしまうのか…。

コメットさん☆:お父様、時々は来ればいいじゃない。別に景太朗パパさんや、沙也加ママさんを知らないわけじゃないんだし。今度はお母様といっしょに。

王様:うむ。まあ、それもそうじゃな。あ、そうだ。これを持ってお行き。

コメットさん☆:…なぁに?。

 

 飛ぶ星のトレイン。ラバボーとラバピョンも、もちろんいっしょだ。コメットさん☆は持たされたものを、トレインの座席の前にあるテーブルに置いた。王様から持たされたのは、1つは星国直通の電話。王様によると、もしコメットさん☆が病気になったりしたときのために、いつでも電話をかけてこられるように、景太朗パパさんと沙也加ママさんに託すように…とのこと。

ラバボー:王様は少し心配性かもだボ。

ラバピョン:あ、王様のことそんなふうに言ったらいけないのピョン。失礼ピョン。

コメットさん☆:うーん。お父様は心配性だなとはたしかに思うけど、私は地球のお医者さんにかかるのは、難しいのらしいし…。お父様が私を大事に思ってくれているんだと思う…。だからうれしいよ。

 このホットラインで、星のトレインが迎えに来てくれるなら、それは心強い。

 それともう一つは、金のコインメダルがたくさん入っている箱。ハモニカ星国の王家の紋章が打刻されている。そのまま景太朗パパさんと沙也加ママさんに渡しなさいと言われた。コメットさん☆が一人で持ち上げるには、かなり重いほどだ。それに手紙が添えられている。

コメットさん☆:これってどういう意味だと思う?。

ラバボー:それはその手紙を見てみないとわからないボ。でも…。

ラバピョン:勝手に開けるわけにはいかないピョン。

コメットさん☆:そうなんだよね…。

 その時、「コツコツ」と、コメットさん☆の左後ろの、車掌室に通じる通路の扉が、向こうからノックされた。

コメットさん☆:はぁい!?。

 返事をするコメットさん☆。すると扉が開き、ねこ車掌が現れた。手には3人分の紅茶とケーキを持っている。ねこ車掌は礼をすると、いつものように無言でそれをテーブルに置いた。そしてメッセージカードをコメットさん☆に差し出すと、戻っていった。

コメットさん☆:車掌さん、何か話でもしてくれればいいのに…。

 コメットさん☆は前に車掌室に行ってみたことがあった。それでもねこ車掌は、にっこりするだけで、何かささやいてさえくれなかった。だから星のトレインに乗っている間は、星が見えなくなってしまうと、わりと退屈なのだ。

コメットさん☆:今日はラバボーとラバピョンがいてくれるからいいけど、前に乗ったときは少し退屈だった。あ、でもこのカード何かしら。

 コメットさん☆はラバボー、ラバピョンと3人で、ケーキを食べながら、車掌が置いていったカードを見た。

車掌のメッセージ:この車は今年、ハモニカ星国鉄道工場で作られた新車です。窓も少し大きく、桟をなくして外がよく見えるようにいたしました。

コメットさん☆:…そう言われても…。

 外は真っ暗な闇が広がっているだけだった。続けて読むと…。

車掌のメッセージ:…姫様の長い時間のご乗車に備えてシートも改良し、楽しいステラ・ライティングをつけてあります。

コメットさん☆:ステラ・ライティングって何かしら?。ラバボー知っている?。

ラバボー:…さあ、知らないボ?。それよりさっきから気になっているものがあるボ。あのドアの前の下がっているもの何だボ?。

 ラバボーが指さしたほうを見ると、ドアの前に2本の「つり革」が下がっている。コメットさん☆は、一瞬目を疑ったが、たしかに「つり革」にしか見えない。

コメットさん☆:何これ?。地球の電車みたい…。

 コメットさん☆は席を立って、それにつかまってみた。すると…。車内の照明が暗くなり、天井に色とりどりの星が現れた。そしてそれはゆっくりと明滅を繰り返す。

コメットさん☆:あっ…。きれい。わぁー。

ラバピョン:わあきれいなのピョン。天井に星が映るピョン。

ラバボー:わかったボ。ステラ・ライティングってそれのことだボ。

コメットさん☆:そうか…。じゃこっちを引くと…。

 もう1本の「つり革」を引くと、今度は一面の花畑が少しずつ季節ごとに変化する様子が天井に映った。

コメットさん☆:やったぁ。これで星のトレインがもっと楽しくなるね。

ラバボー:星国の鉄道工場の星人が、退屈しのぎを考えてくれたんだボ。

コメットさん☆:…そっか。ありがとうみんな…。とってもうれしいよ。

ラバピョン:でも、この新車に当たらないと、見られないんじゃないのピョン?。

コメットさん☆:……。やっぱりそういうことなの…?。そう言えば行きのはこんなのなかった…。

ラバボー:……。…すると、たぶんそういうことだボ。

 

 やがて星のトレインは、地球に近づき、2年前コメットさん☆がやってきたときのように、東京から三浦半島をかすめて、夜の藤吉家に旋回しながら着いた。

 物音に気付いて、景太朗パパさんと沙也加ママさんが、縁側から出てきた。

 星のトレインが上げる煙の中から、コメットさん☆は降り立った。

コメットさん☆:ただいま…です。

沙也加ママさん:おかえり。

景太朗パパさん:おかえり、コメットさん☆。

 …と、いつもの夕方のように、あいさつを交わす。星のトレインは、静かに去っていった。

コメットさん☆:ツヨシくんとネネちゃんは?。

沙也加ママさん:もう寝ちゃったわ。

コメットさん☆:遅くなってすみません。

沙也加ママさん:いいのよ。楽しかった?。

コメットさん☆:はい。

沙也加ママさん:お父様とお母様に甘えてきた?。

コメットさん☆:…はい。

 コメットさん☆は恥ずかしそうに、小さな声で答えた。

 リビングに入ったコメットさん☆は、王様から持たされた2つのものをテーブルに置いた。

コメットさん☆:景太朗パパさん、沙也加ママさん、これ父から預かってきました。1つは直通電話だそうです。私がもし病気になったりしたら、連絡して欲しいそうです。私は地球のお医者さんにかかれないかもしれないからって。

 景太朗パパさんは、変わった携帯電話のようなそれを手に取った。

景太朗パパさん:これってどうやって使うの?。

コメットさん☆:真ん中のボタンを押すだけで、すぐつながるそうです。

景太朗パパさん:ふーん。面白いなぁ。電話番号とかいらないんだね。…そうか、わかったけど、充電とかは?。

コメットさん☆:星の見えるようなところに置いておけばいいそうです。それと、これは父が「国王の立場で…」だそうです。

 コメットさん☆は重い箱を、景太朗パパさんと沙也加ママさんの前に差し出した。パパさんとママさんは、顔を見合わせながら、その箱を開けてみた。

景太朗パパさん:こ、これは…。

沙也加ママさん:まぶしいくらいね…。

 驚きの声を上げる二人。純金のコインメダルが詰められていたらからだ。そして王様の手紙が添えられている。

王様の手紙:いつも姫がお世話になっています。これは私がそちら持参すべきところ、失礼申し上げます。本来私が前回訪問させていただいた折、お渡しするべきものでありましたが、わが星国では当時まだ生産が間に合わず、かないませんでした。いままでの失礼をお詫び申し上げます。地球では、「お金」というものが必要と聞きおよんでおりますが、あいにくわが星国には、藤吉様の国のお金はありません。そのため姫自身に、必要なお金を持たせることが果たせずにおりました。これはとても足りないとは存じますが、お金というものに換えられるのではないかと思い、姫に持たせるものでございます。なにとぞお納め下さいますようにお願い申し上げます。これからも姫のことを、よろしくお願いいたします。  ハモニカ星国国王 印

 景太朗パパさんと沙也加ママさんは、しばらく黙っていたが、やがてパパさんが口を開いた。

景太朗パパさん:コメットさん☆、これは本当は受け取れないところだけど、それでは星国の王様であられる君のお父上様と、君の立場がなくなってしまうだろう。だから、一応いただいておくよ。

沙也加ママさん:パパ!。

 沙也加ママさんが驚いて言ったのを、手で制してパパさんは続けた。

景太朗パパさん:でも、コメットさん☆、今夜はもう遅いから、お風呂に入って汗を流してから寝なよ。明日になれば、ツヨシとネネが待っているよ。

コメットさん☆:…はい。でも、景太朗パパさん、私、どうしていいかわからなくて…。

景太朗パパさん:いいんだよ。こういうのはぼくらにまかせて。それよりまた明日、ツヨシとネネと遊んでやってよ。毎日コメットさん☆は?、コメットさん☆は?って、大変だったんだから。ハハハ…。

沙也加ママさん:そうね。明日ツヨシとネネ、とても喜ぶと思うわ。だから、ね?。

 沙也加ママさんも、にっこりして言った。

コメットさん☆:…はい。じゃそうお願いします。お風呂に入ってから寝ます。おやすみなさい。

 コメットさん☆は安心し、ほっとした表情で二階に上がり、着替えを持ってから浴室に行った。

 リビングに残った景太朗パパさんは、沙也加ママさんに言った。

景太朗パパさん:もちろん、これをお金に換えて使おうなんて、思っていないよママ。コメットさん☆ってさ、ツヨシとネネの少しだけ未来を見せてくれる、もう一人の娘のような気がしないか?。その子に使うお金が、惜しいなんて思ったことはない。ママ、違うかな?。

沙也加ママさん:…そうね。もちろんよパパ。

景太朗パパさん:だから、これは預かっておこう。それでコメットさん☆が、いつか成長して、本当に星国に帰る時、渡してあげようよ。

沙也加ママさん:そっか…。そうねパパ。コメットさん☆は星国のお姫様。いつかは帰るときがあるのよね…。

景太朗パパさん:たぶん…ね。

 

 翌日、藤吉家の庭には、大喜びで追いかけっこをして遊ぶ、ツヨシくん、ネネちゃん、コメットさん☆の歓声が、響きわたっていた…。

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※この話からは、コメットさん☆が大きな星力を使用するとき、ティンクルドレスに代わって、新しいミニドレスを着ます→画像と設定はこちら


★第108話:王子の特訓−−(2003年6月下旬放送)

 毎日のように雨が降っている。どうも今年は雨が多い。メテオさんは、憂鬱な気持ちになりながら、違うことも考えていた。

 今年は本格的な夏になったら、コメットさん☆たちと思いっきり泳ぎたい。もしイマシュンにも夏休みがあったら、いっしょに泳ぎたい。だって、そのために一生懸命練習したんだもの…。地球に来るまで、梅雨なんて知らなかった。それはあたりまえ…。なぜなら、星国には梅雨なんてありはしないから…。そもそも梅雨なんてあるのは、この日本だけらしい。6月からカッと暑ければいいのに…。そんなふうに考えるメテオさんだが、ふと思いつく。

メテオさん:(まって…、せっかくだからみんなで泳ぎに行ったりしたいけど、ミラもカロン、王子はそもそも泳げるのかしら?。)

 そこまで考えたメテオさん。とりあえずタンバリン星国の3人が、泳げるのかどうか確かめたくなってきた。でも王子の住んでいるところに行ったことはないし、星力メールを出すことはできると思うけれど、いきなりそうするのも気が引ける。やっぱりコメットさん☆といっしょに行って聞こうと考える。ついでにもし泳げない人がいたら…。メテオさんは「フフフフ…」と、ひとり笑いをすると、幸治郎さんのところに「たのみごと」をしに行った。

コメットさん☆:…それで何しに行くの?、メテオさんは。プラネット王子のところに。

メテオさん:いいじゃない。ちょっと考えがあってのことよ。何かまずい?。

コメットさん☆:そんなことはないけど…。まだ怒っているのかなぁって…。

メテオさん:怒って?。何言っているのったら、言ってるの?。もう怒ってなんかないわよ。ちょっと聞きたいことがあるだけよ。

コメットさん☆:ふぅん…。じゃ行こっか…。

 コメットさん☆とメテオさんは、夕方になってから星のトンネルで、橋田写真館に向かった。

プラネット王子:ええ?。泳げるかって?。オレは…、コメットは知っているよな。泳げないよ。それがどうかしたのか?。

 王子はどうしてそんなことを聞くのか、というような顔で、コメットさん☆をちらりと見ながら、さらりと答えた。

メテオさん:ミラとカロンは?。どうなのよったら、どうなのよ。

ミラ:私は…、学校で水泳の授業がありますから…。少しですが泳げますよ。ほんの少しですけど…。

カロン:ぼくも去年なんとか15メートルくらいなら泳げるようになりましたけど。メテオさまは水泳得意なんですか?。

メテオさん:わ、私はとっくの昔から泳げるに決まっているじゃないのったら、決まっているじゃないの。オホホホホ!。

コメットさん☆:メテオさんはね、去年…ムグッ…。

 メテオさんは、思わずコメットさん☆の口を押さえた。

メテオさん:な、なーに言ってくれちゃおうとしているのかしらコメットは。

コメットさん☆:…ふう…。苦しかった。メテオさんたら、もう!。

メテオさん:ということは、殿下、あなただけですわね、泳げないのは。

プラネット王子:…そういうことらしいな。ミラとカロンが泳げるとは知らなかったな。学校ってところは、そんなことも教えてくれるのか?。

コメットさん☆:私の星国の学校でも、教えてくれましたよ。水泳。

プラネット王子:へえ、そうなのか。タンバリン星国は…、ヘンゲリーノたちが「王子が水泳などもってのほかです!」とか言っていたなぁ。

メテオさん:やっぱりそうですの?。殿下。私もですわ。私の国は気候が涼しいこともあって水泳は盛んではありませんし、私も去年までは…。はっ!!。

ラバボー:あーあ、自分で言っているボ。

コメットさん☆:メテオさん…。ふふふっ。

カロン:メテオさま、とっくの昔から泳げるんじゃなかったんですか…。

メテオさん:…い、いいじゃないのったら、いいじゃないの。き、去年からよ、泳げるようになったのは!。

ラバボー:自白したボ。

メテオさん:ラバボー、だまらっしゃい!。…とにかくー、みんなで泳ぎに行きたいじゃないのー!、今年の夏はぁー!。

コメットさん☆:なーんだ、そういうことなんだ、メテオさん。それならそうと言ってくれればいいのに。

ミラ:メテオさまやコメットさまといっしょに泳ぎにですか。それはぜひご一緒したいです。運動するとおなかが減りますよね。海の家のやきそばなんかおいしそう…。

カロン:メテオさま、それならぼくに、もっと泳げるようになるコツを教えて下さい。

プラネット王子:なんだよ、そういう話か。でも、オレは泳げないからな。星力を使うしかないな。

メテオさん:ホホホホ…。殿下、そういうこともあろうかと、ここにスイミングスクールの申込書を用意してきましたわ。月謝もうちの幸治郎お父様が出してくれるそうですわ。

プラネット王子:ええーっ!?。スイミングスクールって…、オレそこにまさか通えってのか?。

メテオさん:そういうことですわ。ご自分で努力しなければ、かがやきは自らのものになりませんわよ。

 唖然とする全員を前にして、王子を相手にマイペースで話を進めるメテオさん。コメットさん☆は、かなり強引だなとは思いつつも、メテオさんなりに、「星国の仲間」としての結束を強めようという気持ちのあらわれなのかも、と思って、苦笑いしながら聞いていた。

 

プラネット王子:仕方ないな…。メテオもあの強引さが無ければ…。まあしょうがないか…。カロン、申込書書くから教えてくれよ。

カロン:はい殿下。メテオさま、ものすごい「引き」ですね。ぼくも練習したいな…。

プラネット王子:じゃあ、オレの代わりに行ってくれよ。

カロン:いくら殿下のお望みでも、それは聞けません。メテオさまもご自分で努力しなければ…と、言っておられたじゃないですか。

プラネット王子:なんだよ…、まったく誰の味方なんだよー。

 プラネット王子は、夜になって店を閉めてから、メテオさんが持ってきたスイミングスクールの申込書を、ぶつぶつ文句を言いながら書いていた。

プラネット王子:水着ってなんだ?。カロン。

カロン:水に入るときに着るものですよ。裸で泳ぐわけには行きませんから。

プラネット王子:なるほど。そりゃそうだ。でも、オレ持っていないぞ。そんなの。

カロン:こっちの入会説明書に「市販のものを使うか、スクールでも売っている」と書かれていますよ。

プラネット王子:そうか。じゃあまあそれはなんとかしよう。保護者ってのは?。

カロン:殿下は未成年ですから、誰か親に当たるような人とかを書けばいいんじゃないですか?。

プラネット王子:じゃ、橋田のおやじさんの名前を書いておくか…。

 

 こうして、王子は毎週3回ずつ、メテオさんが去年通ったスイミングスクールへ、通うことになった。メテオさんは、毎回必ずついていった。王子としてはちょっと恥ずかしい思いだ。何しろ少し年下の女の子が、自分の水泳の練習についてくるのだから…。メテオさんは、王子のバトンを毎回預かった。彼が自ら星力を使わないようにと預けていったから…。そして、プールの脇に設けられた大きな窓から、ジュニアクラスの母親たちに混じって王子を見続けた。

ムーク:姫さま、何のためにこんなことを?。

メテオさん:もちろん決まっているじゃない。王子が泳げるようになるためよ。

ムーク:それだけではないのでは?。

メテオさん:どうして?。

ムーク:もしや、王子に気がおありなのでは?。

メテオさん:何言っているの?。そんなんじゃないわ。わたくしが王子の妃になるかどうかなんて、もう昔のことよ。そんなことより、みんないっしょにこの地球で、楽しいことをたくさんしたいじゃないったら、したいじゃない。だから、私はみんなで今年の夏からは、思いっきり泳ごうと思った…。それだけよ。それから殿下に悪いじゃない。私がムリヤリここに通わせているのに、誰も見に来てあげないなんて…。

ムーク:…変わられましたな…。わが姫さまも…。

メテオさん:……。

 果たして、王子は本格的な夏を目前にして、泳げるようになれるのか…。

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※第98話の桜の開花について。桜は秋に葉を落とすと、翌年春に咲く花の準備をします。冬の間芽は動きませんが、春になって気温が高くなると、その気温を積算し、積算温度が一定値を越えると開花する仕組みになっています。そのため暖冬、春先の気温が高いなどの場合には、温度の積算が早くなるので、その分早く開花することになります。また冬の寒さにある程度当たらないと、花芽が発育しにくいので、それも開花時期に影響します。

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