UR都市機構による強制退去の法的措置とその不当性について続き



<URと住宅管理協会の謎な関係>
 URに対し、「訴訟となったら、URが相手方となるのか」尋ねたことがありました。答えは「そうです」というもの。そうであれば、住宅管理協会なる財団法人は、URと一体不可分の関係でなければおかしいことになります。そうでなければ、住宅管理協会・東京南管理センターの職員が、当家に対して「URの規約に反する」から是正せよ、とか、退去しろ、とか言う「当事者適格」が無いことになります。そのあたりを検証してみたいと思います。

●賃貸借契約は、「日本住宅公団〜都市再生機構」と当家は結んだのであって、「財団法人 住宅管理協会」と結んだのではない。
 そもそも当家にやって来た、「財団法人 住宅管理協会」の職員どもは、下に示すような名刺を出しました。こちらから要求しないと出しもしないのですが。

名刺の画像です

 氏名と肩書きはぼかしを入れてあげましょうか。それと細かい電話番号なども、本件と直接関係ないので消しています。
 さて、ここで注目点になるのは、いずれも「UR都市機構 管理業務受託者」とか「UR都市機構 業務受託者」という表現になっていることです。すなわち、「管理についてはURから丸投げ受けてますよ〜」ということを明示していると言っていいでしょう。ですが、管理の受託を受けている者が、本来的な「当事者適格」を持つのかどうかということとは別の問題です。URの賃貸借契約書を見ても、「管理を丸投げした者には、紛争解決のための当事者適格を与える」なんて、書いてありません(当たり前。賃貸借契約を結んだ時には、直接管理でしたから)。その後、URの直接管理でなくなった後も、広く広報されたことなどありません。
 なので、本件における管理センターの役割は、単に苦情を訴えたとする居住者(内容証明郵便の書面ではいたことになっているが、実在するのか現在も不明)と、当家間のメッセンジャーに過ぎず、直接的に管理センターがなんらかの損害を被ったわけでは当然ありませんし、結局のところ、当家は誰と戦っていたのか、2010年2月5日の張り紙以来ずっと、即決和解に応じた現在に至るも今だわかりません。だいたい管理センターは、本件結末から見ると、応対するべき相手だったんでしょうか?。苦情を申し立てたとする居住者も、本来的に当家に対し、自ら身分を明かして当事者であることを主張していないので、そういう人が存在したのかすらわからないし、その苦情なるものの具体的内容すら、今だに不明なのです。
 極端な言い方をすれば、URと下請け法人の関係や、苦情申立の内容すら明らかにせずに、長らく居住していた住民を、簡単に退去させられるとしたら、例えば特定の宗教や、特定の政治政党の支持者などを、「苦情申立人さえいれば」、または「苦情申立人を作る」ことで、排除することすら可能ということになり得ます。そんなことが、税金を投入して運営されている独立行政法人に、許されることなんでしょうか。

●UR東日本支社・すまいサポート業務部の言い分について。
 2011年3月31日に、上記名刺の二人が来訪している最中、UR東日本支社・すまいサポート業務部というところに電話をしました。それで、「当家はURと賃貸借契約を結んだのであって、財団法人 住宅管理協会と結んだのではない。しかし管理センターの職員は、当事者適格があると言い張るので、法的措置を取ると言われるからには、当方も応訴することになるから、業務受諾者である住宅管理協会とURは、一体不可分のものであり、管理センター職員の言動は、URの言動に相違ないとする文書を提出して欲しい」と要求したところ、「それは出来ない」という回答でありました。
 何で出来ないんでしょう?。ではいったいURと業務受託者である財団法人 住宅管理協会の関係は何なんでしょうか?。「住宅管理協会とURは、一体不可分であるという書類は出せない」のでしたら、「全く無関係」ということにもなり得ます。そうだとすると、当家に来訪した人物は、一体何者なのかというか、全く無関係な第三者が、勝手なことを言っていることになりますが…。言っていることが支離滅裂過ぎます。
 「業務受諾者である住宅管理協会とURの関係」が明確にならないと、URが紛争の内容を把握・認識し、賃貸借契約に基づく何らかのアクションを起こそうとしているのかどうかもわからず、紛争相手者が不明確なまま、「法的措置の手続」だけが一方的に進行するかもしれないという、居住者にとり著しく不公平な条件になるわけです。
 当家に、文書やちゃんとした話し合いでの抗弁の機会が認められなかったことも含め、これもまた、「国家の暴力」ではないかと思います。

<訴訟ではなく即決和解とした理由を推定する>
 この種の紛争は、当然にして「民法」に基づく解決を図らなくてはなりません。通常それは話し合いで解決が出来ない場合、「訴訟」ということになります。もちろん、今回のように「即決和解」など、訴訟によらない方法もありますが、対立点を少なくともどちらかが受け入れられない場合は、訴訟が基本です。
 暴力沙汰でも起これば別ですが、今回はもちろんそんなことになったわけではない(管理センター職員が、当方のホームページを個人利用の範囲を越えて複写したのは、著作権法違反と考えられ、それは刑事案件ですが、親告罪でもあり、警察署に告訴状の提出が必要でしたので、実際には告訴していません)ので、本件は刑事事件ではありません。よって民事訴訟ということになります。
 民事訴訟の大まかな流れは、訴状を管轄裁判所に提出→特別送達によって相手者に訴状を送付→訴状を検討→答申書提出→口頭弁論…という流れで、場合によっては証人尋問とか、証拠物件の提出などが必要になりますが、まずは訴状を書いて提出することから始まります。
 本件の場合は、訴訟をどちらが提起するか、ということが一つの問題になります。通常本件のような場合は、「URの認識として、賃借人の鳩への餌やりを通じて、××円の損害を被った。よってそれを賠償せよ」とか、そうでもなければ、「URの認識として、賃借人の鳩への餌やりにより、回復不能な汚損・毀損が、所有する賃貸物件に及ぼされた。よって賃借人は退去せよ」というような形で、UR側(賃貸人)から提起されるのが普通でしょう(当然、言葉の使い方などはもっと厳格かつ独特の言い回しになり、実際とは異なります)。
 もちろん、当家のほうから、「URの受諾者である住宅管理協会から、当家が“鳩に餌やりをなし、それによって建物が回復不能に汚損・毀損されており、住民から苦情が出ている”として退去を繰り返し迫られている。そのような事実は存在しないばかりか、証拠も明示されないのは不当であるから、居住権の存在を確認するとともに、慰謝料として××円支払え」などと、訴訟を提起することも可能です。
 ポイントになるのは、実際の民事訴訟となると、当家が提起する場合でも、URが提起する場合でも、当事者を全て洗い出し、その氏名や職業、住所などの個人情報を明らかにしないと、手続が進みませんから、苦情を言ったという人物が、証人申請などを通じて、どうしても特定される事態になります。当家としては、ぜひそこのところは明らかにして欲しい(本当にどんな苦情を誰がいつどこに持ち込んだのかが明らかでないため)のですが、URとしては、苦情申立者の氏名などを明らかにせざるを得ないとすれば、その人の「守秘義務」を守れないことになり、今度は苦情申立者から、「守秘義務違反」として訴訟を起こされる事態も想定されます。

 ところが!、即決和解の手続は、「その場で尋問・弁論することもなく和解することで、互いに紛争を終わりにする」ことなので、いわば「御用弁護士」(UR側の「身内」の弁護士という意味)と、「相手者」(この場合賃借人)だけとのやりとりになりますから、特段それ以外の人の名前を出す必要がなく、苦情申立者の氏名その他の情報は、守秘されることになります。おそらく、家賃滞納の賃借人に対してよく使われる「即決和解」手続を、当家に対して準用したのは、苦情申立人がいるのかいないのか、いるとしたら誰なのかを秘密にしておきたかったためでしょう。
 これに不満があれば、「和解に応じない」という方法もありますが、最低でも1年くらいかかりそうな気配の訴訟をしてまで、フレール西経堂団地にとどまりたいと思っていなかった当家としては、メリットもなかったので、即決和解に応じることにしたわけです(あとで詳しく述べます)。
 ただ、面倒なく退去できたことは良しとしますが、国の機関としては、どんな苦情を誰がいつどこに持ち込んだのかすら、全く明らかにせず、住民を強制的に退去させるとは、いささかやることが「卑怯」なんじゃないか。そのようには個人的に思います。
●苦情申立人は、URないしは住宅管理協会と、特別な関係で、それをなんとしても秘匿したかったのか。
●本来賃借人の居住権を、国家機関が剥奪するのだから、苦情なるものの内容や、相手者の身分・氏名などは明らかにするのが当然の筋ではないか。
…といった点において、疑念を拭い切れませんし、不信感はつのるばかりです。

<「秩序を乱す」ことの公平性について>
 URは、当家に対し、「故意または重大な過失による汚損」をなし、「生活の秩序を乱した」から賃貸借契約を一方的に解除し、強制退去させるとしていました(内容証明の書面と、賃貸借契約書参照。賃貸借契約書は文字が鮮明に読めるようにするため、画像が極めて重いのでご注意下さい)。ですが、当家が仮に「野鳥への餌やり」を巡り、「故意に建物を汚損し、生活の秩序を乱した」とするのであれば、その証明責任はUR側に存在します。またそもそも、「故意または重大な過失による汚損」や、「生活の秩序を乱す」とは、具体的にどういうことを言うのか、賃貸借契約書においても、またそれ以外のどこにおいても明らかにされておらず、恣意的な解釈がいくらでも可能という点において、独立行政法人としての公平性を維持出来ているとは思えず、この点は賃貸借契約上のUR側の瑕疵ではないかと思えます。
 上でも少し触れましたが、
●犬猫を飼っている人を把握しているにも関わらず、それで強制退去にはしない。
●住人の少年が、友人らをエントランス部に呼び、飲酒などして騒ぎ、汚損を繰り返しても、それで強制退去にはならない。
●認知症のお年寄りがいる家庭で、排泄物により住戸内壁や、共用廊下などが汚損されたが、それで強制退去にはならない。

●しかし、当家は「鳩に餌やり」をしたからとして強制退去になる。
 …これはどう考えても「不公平」なのではないでしょうか。
 確かに、実際には「何dBの騒音を出したら生活の秩序を乱したとみなす」とか、「夫婦喧嘩の時間は15分以内にしないと生活の秩序を乱したとみなす」などと、賃貸借契約書にずらりと明記は出来ないでしょうから、常識的な「程度問題」というのはあるかもしれません。しかし、せめて「おおよそどの程度ならどうなるか」を、あらかじめ契約書にうたわず、あとで適宜自分たちの都合のよいように解釈し、住民の居住権をいとも簡単に剥奪するというのは、国のやることとしては、いささか「詐欺的」ではないかと思われます。まあ、福島原発事故や、沖縄・普天間基地移設問題などを見るにつけ、「国のやることなどいつも詐欺的」と言われれば、もはや言うことも無くなってしまうのですが、それでいいことにもなりますまい。
 また、この公平性が担保されなかったことが、「苦情申立者が、管理センター職員の縁故者ではないか」という疑義を増強する根拠にもなっており、それを否定する証拠を、UR・住宅管理協会ともに提示出来ないでしょう。


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